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しおりを挟むもう1分は経ったのだろうか。
いや、あの男が律儀に待つようには思えない。
少しでも遠く。足を必死に動かす。
空を見上げれば、そこにはやはりあの時と同じ『赤い月』がぽっかりと大きく夜空をくり抜いていた。
…ああ、やっぱり
これで確信した。
後ろを確認し、走りながら考えをまとめる。
ここは恐らくあの男の結界の中だ。
あの日、八代君に助けられた晩、彼は『馬鹿みたいに結界を動かして』と言っていた。
確証はないが、もし咄嗟に逃げ出した俺を逃がさないようにそうしたのだとしたら?
そして、八代君はその動きを察知してあの場に現れた。
つまり俺が逃げれば逃げるほど、あの男は結界を動かさざるを得ないのではないか?
確証はない。
けれどあの残酷な男の事だ。俺の事を見逃すつもりなど、毛頭ないだろう。
…なら、俺に出来る事はただ一つ。
彼ならきっと気付いてくれるはずだ。そう望みを掛ける。
俺の生き死にがどうなろうと、彼の仕事はあの男を捕まえる事なのだから。
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