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しおりを挟む「良かったねぇ、待ちに待った人が来てくれて。信じた甲斐があったって感じぃ?」
九重のその言葉を聞いた瞬間、八代君は勢いよく俺に振り向いた。
「……」
「?」
何か言いたげなその瞳が、何故か一瞬悲痛そうに歪められたように見えた。
「ていうかさあ、なーんか親しげだけど…もしかして君達って知り合いなの? 名前なんか名乗っちゃってるし」
「少し、話をしただけじゃ」
「ふーん…珍しい事もあるもんだね」
面白くなさそうな九重の視線が向けられたが、直ぐに八代君はそれを遮るように俺の前に立った。
「まあ、いいや。そういえば君、ぼくの玩具はどうしたの?もう少し時間掛かると思ってたんだけど」
「あんなものワシの敵ではない。ちいと撫でてやったわ」
「わーお、それは残念だなぁ。君に楽しんで貰えるように作った自信作だったのに。悦い声で鳴いてくれたでしょ?」
「………」
「どうしたの? さっきからそわそわしちゃって。もしかして…その人間の事?」
「………」
「…そういえばさあ、なんかやけに来るの早かったよね? 君の実力は誰よりもぼくが知ってるけど、いくら何でも…ねえ?」
「…っ、何が言いたい」
「…あは!」
息を詰めた八代君の反応に、九重は面白いものを見つけた子供のように目を輝かせ始めた。
「ねえ、そこのお兄さん」
「…?」
「彼はね、ぼくがお兄さんの事をまた狙うだろうって分かってたみたいだよ?」
「…え」
「分かってたのに、何ぁんも言わなかったみたいだよ? つまりさあ、お兄さんはぼくをおびき寄せるための囮にされたって訳」
彼を見る。彼は何も言わず、ただじっと立っているだけだった。
「あははは!なのにお兄さんてば助けに来てくれるって馬鹿みたいに信じちゃってたんだよ?有り得ないよねー」
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