終の九生

碧月 晶

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「しかし…力が漏れ出ていたと言っても、それは周囲に影響を及ぼす程ではなかったようじゃな」
「え…? ど、どういう事?」
「浄化できると言っても、それはあくまで『宿主だけ』にじゃ。群がった霊どもまで浄化できる訳ではないようじゃな」
「え、でも九重の式神が吹き飛んだって…」
「あれは式神を浄化するというよりは、お主の身体を侵食していた穢れを払拭する事が目的だったのじゃろう。式神が消し飛んだのは次いでのようなものじゃ」

 

次いでで消し飛ぶものなのだろうか。

 

「じゃが、封印が一部解けただけであれだけの力を発揮するとはの…」

 

考え込む八代君の表情に、嫌な予感が走る。

 

「今までは微弱に漏れ出ていただけじゃったが、今の状態では確実にこれまでとは比べものにならん数の霊たちが寄ってくるじゃろうな。ちょうど、今日のようにの」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
「何じゃ」
「その、比べ物にならないって…俺、今まで結構不運な事もあったんだけど…え? じゃあ、それ以上寄ってきたら…」
「最悪、死ぬじゃろうな」
「死…!?」
「封印の一部が解けただけであったのなら良かったが…ここ幾日か様子を見ておったが徐々に、本当に微々たるものじゃが確実にほころびから生じた亀裂は広がり続けておる。このままでは封印が完全に解けてしまう日がくるのも時間の問題じゃな」
「そ、そんなに深刻なの…?」
「今はまだ大きな障害こそ無いが…身に覚えがない訳ではないじゃろう?今日とて、いつもより『不運』だったのではないのか?」
「そ、そうだけど…で、でも最近はミスも減って、結構調子良かったんだけど…」

 

あ、思い出したら何か…泣けてきた…

 

ミスが減ってきて、仕事を褒めて貰えた記憶が脳裏に過ぎる。

 

やばい、また泣きそう。
 ジワリと、視界が歪み始めたその時

 

突然目の前が柔らかい闇に覆われた。
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