炎のように

76.感慨

蚊の鳴くような声だったけれどヴァンは聞き取れたみたいで、暫しばらく目を見開いて驚いていたが、フッと笑って頭を撫でてきた。

「どういたしまして？」

そうされるのは何故か嫌じゃなかった。でも、そう思っているのを知られたくなくて

「止めて下さい…」
「悪い悪い」

ぶっきらぼうに頭に置かれていた手を払い落としたのに、まだヴァンは嬉しそうにしている。

 「あ、少しここで待っていてくれ」
「え。あ、はい…」

そう言うと、小走りでどこかへ向かっていった。

彼の姿が人混みで見えなくなるまで見送ってから、近くにあったベンチに腰を下ろした。

さっき撫でられた個所に手を伸ばす。
大きくて、温かい手だった。いつかの温度と似ているような気がした。


ボーッと俯うつむいていると急に視界が陰った。


戻って来たのかと顔を上げると、そこには見知らぬ男性が三人、俺を見下ろしていた。