炎のように

碧月 晶

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112.お父さん? sideヴィント

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アルに街を案内してから三日、俺は殺人的な量の仕事に追われていた。

似たような内容の書類に可か不可の印を押し、会談や会議の書類にも目を通して、国内・他国との貿易状況の確認をしてからの改善点の提示、友好国からのご機嫌取りの書状の返事、…etc.

兎に角忙しい。思わず動かしっぱなしの手を止めて、溜め息がでた。

「はぁぁぁ…」
「ほらほら、サボってる暇はないぞヴァン。あの子の所に行きたいだろ?」

そう言って、更に追加で仕事の山を増やし続けている奴に

「そう思うなら、この量は何なんだ…。これじゃあ全く行ける気がしない」

協力すると言ったのは嘘だったのかと零せば

「嘘じゃないさ。現にこうして割と頻繫に城を抜け出しても問題ないよう、出来るだけ前倒しで仕事させてやってるだろ?」
「それにしたってこの量は多すぎだろう…これは」
「だがこれさえ終わらせれば頻繁に会いに行けるぞ?お得意の街散策も行き放題だ」
「…お前がそれを言っても良いのか分からんが…そうだな」 

そう思えばもう少し頑張れそうだ。

「あ、そうそう。街で噂になってるぞ」
「? 何がだ?」
「色々出回ってはいるが、要約すれば『ヴィント様が謎の美人を連れてデートしていた』だそうだ」
「デート?アルは男だぞ?」
「俺達は知ってるが…あの顔だぞ?そう見えたのも無理はないだろ」

確かにアルは身長はあれど男にしては細すぎる。大丈夫だろうとは思うが…


「心配だ…」
「そうだな…」


その日は大の男が二人揃って、一日中そわそわしながら過ごした。

 
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