炎のように

碧月 晶

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156.やっぱり

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俺は今、ガタゴトと揺れる積み荷を乗せた大きな荷台の後ろに座っている。

因みに今乗っているコレは、たまたま通りかかった商隊の御一行の物だ。
少しばかり金を渡して、用心棒をしてやるから途中まで乗せていってくれと頼んだ。

別にこの辺りは治安が良いからそんなもの無くてもいいのだけれど、初めてここに来た彼らは知らない事だ。

 
 

ゆっくりと進んでいく景色をただ目に映していく。


…結局来なかったな


ぼんやりと、何気なく浮かんだその心中の呟きは直ぐに打ち消した。


いや、それで良いんだ。これが正しい、望んだ事だ。

 
『行くな…』


あの時のヴァンの悲しそうな顔を思い出す。なんで、あんな顔するんだ…


───ズキッ


「いっ…」

思い出すと同時に、ほぼ日常的になった頭痛がした。
いつもより少し強めなそれに、少しだけ横になる。

ズキズキと痛む頭の中を、ヴァンに言い放った自分の言葉が木霊(こだま)する。


『ヴァンには関係ない!!』


あの時の表情は見えなかったけれど、傷つけてしまっただろうか。

大切だからこそ傷付いてほしくないのに、結局自分がそれをしてしまっている。
そうしたくなくて離れようと決めたのに、これでは何も変わらない。同じ事の繰り返し。

でも、だからといってこれ以上一緒にいる訳にもいかない。

 
…やっぱり俺が関わったからなんだろうか


ぐるぐるぐるぐる、後悔と自責が渦巻く中、俺の意識は段々と遠のいて夢の中に消えていった。

 
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