炎のように

294.戒めの記憶─13

「分かってくれ…」
「そんなに…」
「…………。」
「そんなに能力を持っている事が重要ですか…？
兄上は…あの人はずっと努力してきたのに…！
それを、俺が…兄上の今までを無かった事に…なんて…」


消え入りそうで苦しげな声。

恐らく彼も分かってはいるのだ。

分かってはいるが、納得は──出来ない。


父親もそんな彼の心中を見透かしているのか、つとめて冷静な声音で続けた。
子供を諭すように…。


「全ては王家のため、国のためなのだ。
そのために我らは仕え、存在している。」
「でもっ…」
「イグニート、お前のそれはあやつのためには成らなぬ。
お前は、お前の成すべき事を果たせ。」
「……っ…」



それ以上、彼が何かを言う事はなかった。