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142.答え合わせ sideルカ
しおりを挟む「お疲れ様、アメ」
それから、私の願いを聞いてくれて有難う。すやすやと眠ったアメの髪をそっと梳く。
「えーっと、つまり、何だ?ニール、もしかしてアンディの兄貴が死んだと思ってたの?」
「ち、違うのかよ」
「えええ。何をどう聞いたらそんな勘違いするんだよ…」
「だ、だって、皆がそう言ってたんだよ!」
「皆って?」
「ギルドの皆だよ。それに親父だって何も…」
「あー…もしかして」
「な、何だよ」
テオが「まじかー」と言いながら額を押さえる。そういえば、さっきアメに小石をぶつけられていた額は大丈夫だろうか。
「もしかして、なんだけどさ。ニール、皆に『深くは聞くな』とか言われただろ?」
「な、何でお前が知ってるんだよ…」
「あー…それさ、多分お前に気を遣ったんだと思うぜ?」
「気を遣った?」
益々訳が分からないというようにニールの眉間に皺が寄る。
「お前、昔からアンディの兄貴に懐いてたもんな。それに…」
テオが言いにくそうに一旦言葉を区切る。
「アンディの兄貴は恋愛なんかに現を抜かさないって思ってただろ?」
「!」
「そこなんだよ。だから皆お前には尚更言えなかったんだよ」
「い、言えなかったって…何をだよ」
「………アンディの兄貴が火事で助けた女の子に一目惚れした、なんて。それをきっかけにギルドを辞める決心をしたとか、一心に憧れてたお前に言える訳なかったんだよ。それに、アンディの兄貴もこの事はお前には黙っててくれって口止めされてたし。あくまで、怪我のせいで引退した事にしてくれって…」
「…な、何だよ、それ。じゃあ、何か?俺は…ずっと勘違いをして…」
「あ、あとアンディの兄貴の怪我は大したことなかったよ。それでも辞めたって事は…」
それほど、その女性に心底惚れてしまったという事だろう。
「……アンディの奴、ここで何してんだ」
「パン屋をやってるよ。嫁さんがその時助けた女の子で、彼女の実家がここでパン屋をやってるから、その後を継いで元気に切り盛りしてるよ」
「…は、そうかよ」
それっきりニールが何かを言う事はなかった。
しーんと重たい沈黙が下りる中で、アメの寝息だけがただ穏やかに響いていた。
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