16 / 211
第一章 開かれる女の子への道(葵編)
【第14話】 監禁からの脱出
しおりを挟む
監禁されて、ベッドに固定され、ヘッドギアーを付けられ、「女の子になった自分」という見たくもない仮想現実を経験させられた。
これだけの仕打ちを受けたら、普通の男であれば殴りかかって反撃するだろう。
だが、良家で育った葵は、人を殴った経験がほとんどない。
こぶしをあげたのは、全て友人や彼女を守るためだっだ。
自分を守るためだけに、相手を傷つけたことはない。
根本的に優しすぎる性格と言える。
そんな温厚な性格であるがゆえに、真の敵意に向けられた時、葵は防御する術を持っていない。
これまでは誰にも分け隔てなく優しい葵に、敵意を持って接してくる相手など滅多にいなかった。
だから悪意のある相手には免疫がないのだ。
長い間自己犠牲を尊ぶ両親に育てられた影響で、優しすぎる性格になっている。
そのため、真に戦うべき相手に対してはどう接すればいいのか分からない。
優しすぎる心。それは葵の女性化計画を企む早紀に、格好の付け入る隙を与えていた。
ーーーーー
「裸のままじゃ寒いでしょ。着替えを持ってきてあげたわ」
早紀は葵の手の上に新鮮な衣服を乗せた。
それは、真っ白なショーツに、真っ白なスポーツブラ、フリルの付いた白い無地のスカートに、白のブラウスだ。
控えめではあるが、紛れもない女の子の服だ。
これから一生女物を着て暮らせと、暗に宣言されたようなものだった。
「いやだ、こんなひらひらした服、着られないよ!」
葵は抵抗する。
これじゃあ本当に女の子みたいじゃないかと、言いたげだ。
「あら、いいじゃない」
「大体僕の前の服はどうしたの? お願いだから返してよ」
葵は本人も気づかないうちに、自分のことを「僕」と言うようになっていた。
きっと先ほどの洗脳で、男らしさが削げ落ちてきた影響だろう。
言葉遣い以外にも変化がある。
一挙手一投足がどことなくお淑やかに変わってきているのだ。
がさつさがなくなり、目つきもどこか甘えたような上目遣いが増えている。
無意識レベルでの女性化は、非常にゆっくりだが確実に進んでいるのだ。
「だって、葵ちゃん。さっきまで『僕、女の子』って言ってたじゃない。そんな葵ちゃんのためを思って、女の子の服を用意してあげたっていうのに」
「じゃあ僕の服は?」
「捨てたわよ。女の子のあなたに、男の服は必要ないわ」
早紀はそう言って、ごみ箱を指さした。
その中には、細かく切り刻まれた葵の服が確かにあった。当然もう着られる代物ではない。
「ひどいです。あまりにも……」
「代わりの、しかももっと肌触りが良くて高級な服を用意してあげたんだから、感謝しなさい」
早紀は葵の抗議を軽くいなす。
二人のディベートは、まるで大人と子供。はっきりとレベルが違う。
百戦錬磨の早紀は何を言うべきか全てわかっている。
敢えて声の抑揚を抑えることで、「あなたに選択肢はない」、「自分に従うしかない」ということを、葵に明確に伝えているのだ。
それに対して暗中模索の葵には、言うべき言葉が浮かんでこない。
策士の早紀から見て、葵の心境は手に取るように分かる。
そして無理やり着せるよりも、さらに効果的なカードを選ぶ。
「じゃあ勝手にしなさい」
早紀は葵を一人置き去りにして、スタスタと部屋から出ていく。
部屋の温度を十度下げた状態にして。
-----
「さ、さむい……」
葵は部屋の隅で、体を抱えるようにして震えていた。
部屋の温度は十度以下まで下げられている。裸では耐え切れない温度だ。
何か着るものはないかと周りを見渡す葵の目に入ってきたのは、早紀が置いていった女の子の服だ。
薄手の生地だが、裸よりはましだろう。
誰も見ていないよね。
葵は部屋をぐるりと見渡して確認する。
誰もいない。その事実が、葵を少し大胆にさせる。
うん、誰も見ていない。
改めてそう自分に言い聞かせて、ショーツに手を触れる。
サラサラとしたシルクの手触りに、葵は思わずうっとりしてしまう。
「こ、これを僕が履かなきゃいけないの?」
恨めしそうな言葉の中に、別の感情が紛れ込む。
それは背徳感か、期待感か、本人にも分からない。
心臓の音が自分でも聞こえるくらい大きくなり、葵はゴクリとつばを飲み込んだ。
「こ、これじゃああの女の思い通りじゃないか」
葵は抵抗しようとするが、膨れ上がる好奇心の前では無意味だ。
「い、いや、とにかく何かを着て、この寒さをどうにかしないと」
もっともらしいその言葉は、実は言い訳に過ぎない。
葵の心のどこかで、この肌触りのいい衣服を着てみたいという願望が生まれていたのだ。
「今回だけだ。今回だけ」
そう言いながら葵はショーツに足を通す。
色白な葵の肌に合う純白のシルクのショーツは、すっぽりと彼女の男である証拠を隠してしまう。
胸はまだ膨らんでいないが、なだらかな肩と、柔らかそうな体はまるで中学生になったばかりの少女のようだ。
顔の可愛らしさは言うまでもなく、全体的な雰囲気から男らしさは一切感じられない。
それでもまだ、葵には男としてのプライドがある。
ブラをするのはさすがにできなかった。
通常の五倍の効果のある最高級の女性ホルモンを打たれて、ピンクの乳首はわずかながら敏感になってきている。
催淫効果もあるため、翌朝には女性としての性欲が目覚め始めるはずだ。
乳腺の細胞も活性化して、女性らしいおっぱいを作るべく始動を始めている。
だが、まだそれは表には出てきていないし、本人もまだ気づいていない。
続いて袖口に花の刺繍をあしらったブラウスと、シルクのスカートに足を通す。
白い生地からすらりと伸びた白い手足が、葵の可憐さをさらに引き立てている。
無垢で真っ白な天使がそこにいた。
「今回だけだ。今回だけ。絶対に女の子になんてなってたまるか」
そう葵は自分に言い聞かせる。
だが、強気なその表情も勝気な美少女にしか見えないことに、本人は全く気付いていなかった。
これだけの仕打ちを受けたら、普通の男であれば殴りかかって反撃するだろう。
だが、良家で育った葵は、人を殴った経験がほとんどない。
こぶしをあげたのは、全て友人や彼女を守るためだっだ。
自分を守るためだけに、相手を傷つけたことはない。
根本的に優しすぎる性格と言える。
そんな温厚な性格であるがゆえに、真の敵意に向けられた時、葵は防御する術を持っていない。
これまでは誰にも分け隔てなく優しい葵に、敵意を持って接してくる相手など滅多にいなかった。
だから悪意のある相手には免疫がないのだ。
長い間自己犠牲を尊ぶ両親に育てられた影響で、優しすぎる性格になっている。
そのため、真に戦うべき相手に対してはどう接すればいいのか分からない。
優しすぎる心。それは葵の女性化計画を企む早紀に、格好の付け入る隙を与えていた。
ーーーーー
「裸のままじゃ寒いでしょ。着替えを持ってきてあげたわ」
早紀は葵の手の上に新鮮な衣服を乗せた。
それは、真っ白なショーツに、真っ白なスポーツブラ、フリルの付いた白い無地のスカートに、白のブラウスだ。
控えめではあるが、紛れもない女の子の服だ。
これから一生女物を着て暮らせと、暗に宣言されたようなものだった。
「いやだ、こんなひらひらした服、着られないよ!」
葵は抵抗する。
これじゃあ本当に女の子みたいじゃないかと、言いたげだ。
「あら、いいじゃない」
「大体僕の前の服はどうしたの? お願いだから返してよ」
葵は本人も気づかないうちに、自分のことを「僕」と言うようになっていた。
きっと先ほどの洗脳で、男らしさが削げ落ちてきた影響だろう。
言葉遣い以外にも変化がある。
一挙手一投足がどことなくお淑やかに変わってきているのだ。
がさつさがなくなり、目つきもどこか甘えたような上目遣いが増えている。
無意識レベルでの女性化は、非常にゆっくりだが確実に進んでいるのだ。
「だって、葵ちゃん。さっきまで『僕、女の子』って言ってたじゃない。そんな葵ちゃんのためを思って、女の子の服を用意してあげたっていうのに」
「じゃあ僕の服は?」
「捨てたわよ。女の子のあなたに、男の服は必要ないわ」
早紀はそう言って、ごみ箱を指さした。
その中には、細かく切り刻まれた葵の服が確かにあった。当然もう着られる代物ではない。
「ひどいです。あまりにも……」
「代わりの、しかももっと肌触りが良くて高級な服を用意してあげたんだから、感謝しなさい」
早紀は葵の抗議を軽くいなす。
二人のディベートは、まるで大人と子供。はっきりとレベルが違う。
百戦錬磨の早紀は何を言うべきか全てわかっている。
敢えて声の抑揚を抑えることで、「あなたに選択肢はない」、「自分に従うしかない」ということを、葵に明確に伝えているのだ。
それに対して暗中模索の葵には、言うべき言葉が浮かんでこない。
策士の早紀から見て、葵の心境は手に取るように分かる。
そして無理やり着せるよりも、さらに効果的なカードを選ぶ。
「じゃあ勝手にしなさい」
早紀は葵を一人置き去りにして、スタスタと部屋から出ていく。
部屋の温度を十度下げた状態にして。
-----
「さ、さむい……」
葵は部屋の隅で、体を抱えるようにして震えていた。
部屋の温度は十度以下まで下げられている。裸では耐え切れない温度だ。
何か着るものはないかと周りを見渡す葵の目に入ってきたのは、早紀が置いていった女の子の服だ。
薄手の生地だが、裸よりはましだろう。
誰も見ていないよね。
葵は部屋をぐるりと見渡して確認する。
誰もいない。その事実が、葵を少し大胆にさせる。
うん、誰も見ていない。
改めてそう自分に言い聞かせて、ショーツに手を触れる。
サラサラとしたシルクの手触りに、葵は思わずうっとりしてしまう。
「こ、これを僕が履かなきゃいけないの?」
恨めしそうな言葉の中に、別の感情が紛れ込む。
それは背徳感か、期待感か、本人にも分からない。
心臓の音が自分でも聞こえるくらい大きくなり、葵はゴクリとつばを飲み込んだ。
「こ、これじゃああの女の思い通りじゃないか」
葵は抵抗しようとするが、膨れ上がる好奇心の前では無意味だ。
「い、いや、とにかく何かを着て、この寒さをどうにかしないと」
もっともらしいその言葉は、実は言い訳に過ぎない。
葵の心のどこかで、この肌触りのいい衣服を着てみたいという願望が生まれていたのだ。
「今回だけだ。今回だけ」
そう言いながら葵はショーツに足を通す。
色白な葵の肌に合う純白のシルクのショーツは、すっぽりと彼女の男である証拠を隠してしまう。
胸はまだ膨らんでいないが、なだらかな肩と、柔らかそうな体はまるで中学生になったばかりの少女のようだ。
顔の可愛らしさは言うまでもなく、全体的な雰囲気から男らしさは一切感じられない。
それでもまだ、葵には男としてのプライドがある。
ブラをするのはさすがにできなかった。
通常の五倍の効果のある最高級の女性ホルモンを打たれて、ピンクの乳首はわずかながら敏感になってきている。
催淫効果もあるため、翌朝には女性としての性欲が目覚め始めるはずだ。
乳腺の細胞も活性化して、女性らしいおっぱいを作るべく始動を始めている。
だが、まだそれは表には出てきていないし、本人もまだ気づいていない。
続いて袖口に花の刺繍をあしらったブラウスと、シルクのスカートに足を通す。
白い生地からすらりと伸びた白い手足が、葵の可憐さをさらに引き立てている。
無垢で真っ白な天使がそこにいた。
「今回だけだ。今回だけ。絶対に女の子になんてなってたまるか」
そう葵は自分に言い聞かせる。
だが、強気なその表情も勝気な美少女にしか見えないことに、本人は全く気付いていなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,394
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる