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第二章 開かれる女の子への道(クリスティーナ編)
【第28話】 クリスティーナお嬢様の入学準備(9/15)
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「どういうこと? だって、ジェニーは散々あいつにいじめられて、嫌な思いをしてきて……」
ジェニーがアレックスに襲われたのはこれが初めてではない。
卑猥ないたずらをされたと、泣きついてきたのも数知れない。
鉄砲玉? どうみても主犯格じゃないか。
そこまで考えて、ふと疑問に思う。
単なる孤児院の一人にすぎないアレックスが、なぜ沢山の子分を引き連れることができたかを。
腕っぷしだけで、そこまで権力を持つことは可能なのだろうか。
全てを話せるわけじゃないと断りを入れつつ、ジェニーは教えてくれた。
「不思議に思わなかった? うちの孤児院の院長が、アレックスの言いなりなことを」
「確かに。でも今の話とどういう関係が?」
「アレックスのやることには、全て黒いお金と思惑が絡んでたってことよ。うちの孤児院の最大のスポンサーもあいつ。あたし、アレックスが院長に札束を渡していたところを、この目で見たの。子分を引き連れていたのも、お金があったからよ」
そう言えば、どこからあのお金が湧いてくるのかいつも不思議だった。アレックスが平気で高い車を乗り回すのをこの目で見てきたし、羽振りが良かったのは疑いようがない。いずれにせよきれいなお金でないことは間違いないだろう。
「何かの組織が後ろ楯になっていたってこと?」
ジェニーは頷く。
「だとしたら、組織は何の目的で、孤児院にお金を?」
「お姉ちゃんよ。彼らの狙いは、お姉ちゃんだったの」
「!?」
一瞬訳が分からなくなりながら、クリスティーナはかろうじて言葉をつなぐ。
「えっ。確かに今回の件は、自分が狙いだったかもしれないけど、どうして」
「アレックスはヨーロッパ中の孤児院でスカウトをしてたみたいなの。お姉ちゃんのような美少年を探してね」
クリスティーナは開いた口が塞がらない。ジェニーはさらに続ける。
「有望な美少年は、小さいころからマークされて、『出荷』の時期になると孤児院にスカウトからお金が支払われる。あたしに意地悪をしたのも、自分は危ない男だって思わせたのも、全てはアレックスの計算づくの行動。お姉ちゃんを陥れるため。お姉ちゃんに関しては、アレックスも本気で惚れていたのかもしれないけど。あの目は、恋した男の目だったわ。仕事半分、趣味半分ってところかしら」
あの男がこれまで「美少年スカウト業」でお金を稼いでいたことはよく分かった。
アレックスに恋されていると聞いて、クリスティーナに複雑な感情が去来する。
まんまと罠にかかって、ペニスを失ってしまった現状を考えると笑えない。
しかも、女として何度もイカされたことで、心が女性化してきていることも、否定できないのが問題だ。
このまま女性として、男性に恋する乙女に変えられてしまうのだろうか。
「ありえない!」
クリスティーナは急に独り言で叫んでしまったことに気が付き、顔を赤らめる。
話題を変えずには、居たたまれない。
もう一つ、クリスティーナには釈然としないことがあった。
「い、いずれにしても、そこまでやつらの企みを知っているのに、何でジェニーは協力するの?」
「……」
「ジェニーだって、好きでこんなことに手を貸しているわけじゃないんでしょ」
「……」
「お願い、答えて!」
「……」
「お願い!」
クリスティーナの問いかけに、ジェニーは苦しそうに言葉を絞り出した。
「お姉ちゃんは……お姉ちゃんは、女の子にならなきゃダメなの。審査を通らないと『処分』されちゃうの。裏組織の刑務所みたいなところで、一生厳しい労働をさせられることになるの。あたし、この目で見たの。本当の地獄を、この目で」
しどろもどろにジェニーは叫ぶ。少女の瞳から、きれいな雫が零れ落ちた。
「あたしはさせない。お姉ちゃんを『処分』なんて、絶対にさせない。数百人に一人の厳しい審査かもしれないけど、お姉ちゃんは女の子として認められて、BS学園にさえ入ればは助かるの。幸せになれるの。だから、あたしはそれにかけるの。だからお姉ちゃん、お願いだからあたしを信じて」
何をジェニーが見たのかは分からない。だが、その涙には揺るがぬ決意がにじんでいた。
ジェニーがアレックスに襲われたのはこれが初めてではない。
卑猥ないたずらをされたと、泣きついてきたのも数知れない。
鉄砲玉? どうみても主犯格じゃないか。
そこまで考えて、ふと疑問に思う。
単なる孤児院の一人にすぎないアレックスが、なぜ沢山の子分を引き連れることができたかを。
腕っぷしだけで、そこまで権力を持つことは可能なのだろうか。
全てを話せるわけじゃないと断りを入れつつ、ジェニーは教えてくれた。
「不思議に思わなかった? うちの孤児院の院長が、アレックスの言いなりなことを」
「確かに。でも今の話とどういう関係が?」
「アレックスのやることには、全て黒いお金と思惑が絡んでたってことよ。うちの孤児院の最大のスポンサーもあいつ。あたし、アレックスが院長に札束を渡していたところを、この目で見たの。子分を引き連れていたのも、お金があったからよ」
そう言えば、どこからあのお金が湧いてくるのかいつも不思議だった。アレックスが平気で高い車を乗り回すのをこの目で見てきたし、羽振りが良かったのは疑いようがない。いずれにせよきれいなお金でないことは間違いないだろう。
「何かの組織が後ろ楯になっていたってこと?」
ジェニーは頷く。
「だとしたら、組織は何の目的で、孤児院にお金を?」
「お姉ちゃんよ。彼らの狙いは、お姉ちゃんだったの」
「!?」
一瞬訳が分からなくなりながら、クリスティーナはかろうじて言葉をつなぐ。
「えっ。確かに今回の件は、自分が狙いだったかもしれないけど、どうして」
「アレックスはヨーロッパ中の孤児院でスカウトをしてたみたいなの。お姉ちゃんのような美少年を探してね」
クリスティーナは開いた口が塞がらない。ジェニーはさらに続ける。
「有望な美少年は、小さいころからマークされて、『出荷』の時期になると孤児院にスカウトからお金が支払われる。あたしに意地悪をしたのも、自分は危ない男だって思わせたのも、全てはアレックスの計算づくの行動。お姉ちゃんを陥れるため。お姉ちゃんに関しては、アレックスも本気で惚れていたのかもしれないけど。あの目は、恋した男の目だったわ。仕事半分、趣味半分ってところかしら」
あの男がこれまで「美少年スカウト業」でお金を稼いでいたことはよく分かった。
アレックスに恋されていると聞いて、クリスティーナに複雑な感情が去来する。
まんまと罠にかかって、ペニスを失ってしまった現状を考えると笑えない。
しかも、女として何度もイカされたことで、心が女性化してきていることも、否定できないのが問題だ。
このまま女性として、男性に恋する乙女に変えられてしまうのだろうか。
「ありえない!」
クリスティーナは急に独り言で叫んでしまったことに気が付き、顔を赤らめる。
話題を変えずには、居たたまれない。
もう一つ、クリスティーナには釈然としないことがあった。
「い、いずれにしても、そこまでやつらの企みを知っているのに、何でジェニーは協力するの?」
「……」
「ジェニーだって、好きでこんなことに手を貸しているわけじゃないんでしょ」
「……」
「お願い、答えて!」
「……」
「お願い!」
クリスティーナの問いかけに、ジェニーは苦しそうに言葉を絞り出した。
「お姉ちゃんは……お姉ちゃんは、女の子にならなきゃダメなの。審査を通らないと『処分』されちゃうの。裏組織の刑務所みたいなところで、一生厳しい労働をさせられることになるの。あたし、この目で見たの。本当の地獄を、この目で」
しどろもどろにジェニーは叫ぶ。少女の瞳から、きれいな雫が零れ落ちた。
「あたしはさせない。お姉ちゃんを『処分』なんて、絶対にさせない。数百人に一人の厳しい審査かもしれないけど、お姉ちゃんは女の子として認められて、BS学園にさえ入ればは助かるの。幸せになれるの。だから、あたしはそれにかけるの。だからお姉ちゃん、お願いだからあたしを信じて」
何をジェニーが見たのかは分からない。だが、その涙には揺るがぬ決意がにじんでいた。
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