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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第126話】試着(2)
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「お姉さんに任せて。もっとあおいを可愛らしく、セクシーにプロデュースしてあげるわ」
(お姉さんって……同い年なのに)
ぎこちなさと、初々しさに保護欲を掻き立てられるのだろうか。
あおいは、同じクラスの女子たちから妹扱いを受けている。
特にクリスティーナがいなくなってからは顕著だ。
「だ、大丈夫。自分で着けられるから」
股間を触られて、もしも秘密を知られたら一大事だ。
黙っていたら、何をされるか分かったものではない。
あおいは意を決して、自ら試着する。
右足を軽く上げて、受け取ったビキニショーツをするすると上げていく。
ピチピチの黒い生地が伸びて、豊かな美尻を包む。
腰骨のあたりに引っかかるように、軽く締め付けながらピッタリとフィットする。
次はビキニブラに手をかける。
胸元にアクセントのリボンが付いていて、後ろで縛るタイプだ。
「水着はね、ちょっと小さめがいいのよ。あおいくらい胸が大きかったら重さもあるから、ワイヤーでしっかり支えられるタイプがいいわ」
「そうなの?」
「そうよ。あおいにはこれくらいがよさそう」
優花は大きなカップをあおいの胸に当てて、ちょうどいいと頷く。
あおいはビキニブラを受け取ると、背中の後ろを結んだあと、首の後ろで固定した。
真っ白なあおいの素肌は、黒い生地とのコントラストで、より白く輝いて見える。
くびれや細長のきれいなおへそまで、外気にさらされる。
細くて長い手足や背中も露わになって、女の特徴の胸と股間だけが隠れている。
この格好で、男からの舐めるような視線を浴びなければならない。
そう考えると、全身がそわそわして落ち着かなくなる。
「な、なんだろう。下着を見られているような気分……」
「大丈夫。ほかの娘だってみんなビキニを着てるんだから。とってもセクシーよ。せっかくのプロポーションなんだから、むしろこの機会に見せびらかさないと。試しに他のも着てみる?」
優花はそう言って、ほかの水着も試着させていく。
いくつか試した後「これがとっておきなの」と言って、パステルカラーの赤が映えるビキニを差し出した。
「腰に紐が付いているのも可愛いでしょ? 胸の小さな娘には、フリルビキニがおすすめだけど、あおいはやっぱり定番の三角ビキニがよさそうね」
黒もいいが、赤の方がセクシーさと可愛らしさを併せ持つあおいには合っていた。
これで試着は終わり。
そう思っていたのだが……。
「そうそう。最後にちゃっかり男の子用の水着も持ってきたの。さっきすごく物欲しそうに見てたでしょ? 男装にも興味があるのかと思って」
「えっ、その、あ、あたしは……」
男装という言い方が、むずかゆい。
去年までは女装と言われることはあっても、男装と言われることはあり得なかった。
今男物を着たら、異性装になってしまうのだろうか。
「ねぇ、試しに水着の上から男装してみましょうよ」
言葉に引っかかるが、優花に促されて仕方なく男物の水着にも足を通す。
去年だって着ていたんだし、楽勝だよね。
そう思ってあおいは腰までゴムひもを引き上げた。
「あれ? お尻のあたりは余裕がないのに、お腹がぶかぶか……」
去年はぴったりだったはずなのに。
首をかしげているあおいに、何がおかしいのと言いたげに優花は笑う。
「当り前よ。だって男の子とあたしたちじゃ体のつくりが違うんだもの。スタイルのいい娘であればあるほど、ウエストとヒップの差が出てくるんだから」
あおいの骨盤は女性ホルモンの影響で広がり始めている。
妊娠したときに赤ん坊を支えられるように、骨格から変化してきているのだ。
あおいは鏡の中の自分を見る。
映っているのは、胸を抜きにしても女性の体だ。
明らかに男性用の水着は合っていない。
これでは男装と言われても仕方がない。
「あたしもね。一度男の子になってみたいって思ったことあるよ。生理もないし、お手洗いも時間がかからないし、羨ましいってね。でも……」
「でも?」
「オシャレをして、甘いものを食べながらガールズトークをしたり、素敵な彼氏を探したりって女だからできるんだなって気が付いて、やっぱり女に生まれてよかったなって。男に生まれたら、絶対に無理なことよ。あおいもそうでしょ?」
「……あ、あたしは、それでも男の子っぽい服の方がいいかな」
「そっか。ボーイッシュに着飾るのも楽しいよね。でも、あたしはあおいにはガーリーな服の方が似合うと思うよ。そのボブヘアーも似合うけど、もう少し長い髪の方が合ってると思うよ」
何も知らない優花はにっこりとほほ笑んだ。
ーーーー
結局、あおいは赤いビキニを買って店を出た。
(うぅ……。水着って結構高いんだ。僕のお小遣いが全てビキニに)
水着店の裏のウッドデッキでトロピカルフルーツを飲みながら、あおいと優花は海を眺めていた。
穏やかな波が砂を撫でながら、リズミカルに自然の音色を奏でている。
ストローから酸味のある甘みが口内に広がっていく。
「舌が甘さで麻痺しそう」
あおいの言葉に優花はにっこりと頷く。
「そうね。でも美味しいでしょ」
「うん……」
あおいも思わず素直に返事をした。
女体化が進んでいるせいだろうか。
昔はそんなに欲しいと思わなかった甘いものが、美味しいと感じる。
飲めば飲むほど、もっと甘いものが欲しくなっていく。
あおいは知らない。
甘いもののエネルギーのほとんどが、男性細胞を殺すためと、女性細胞が増えるために使われていることを。
こうして他愛のない会話の最中も、あおいの性転換は、ゆったりとした時の流れの中で、じりじりと進んでいた。
(お姉さんって……同い年なのに)
ぎこちなさと、初々しさに保護欲を掻き立てられるのだろうか。
あおいは、同じクラスの女子たちから妹扱いを受けている。
特にクリスティーナがいなくなってからは顕著だ。
「だ、大丈夫。自分で着けられるから」
股間を触られて、もしも秘密を知られたら一大事だ。
黙っていたら、何をされるか分かったものではない。
あおいは意を決して、自ら試着する。
右足を軽く上げて、受け取ったビキニショーツをするすると上げていく。
ピチピチの黒い生地が伸びて、豊かな美尻を包む。
腰骨のあたりに引っかかるように、軽く締め付けながらピッタリとフィットする。
次はビキニブラに手をかける。
胸元にアクセントのリボンが付いていて、後ろで縛るタイプだ。
「水着はね、ちょっと小さめがいいのよ。あおいくらい胸が大きかったら重さもあるから、ワイヤーでしっかり支えられるタイプがいいわ」
「そうなの?」
「そうよ。あおいにはこれくらいがよさそう」
優花は大きなカップをあおいの胸に当てて、ちょうどいいと頷く。
あおいはビキニブラを受け取ると、背中の後ろを結んだあと、首の後ろで固定した。
真っ白なあおいの素肌は、黒い生地とのコントラストで、より白く輝いて見える。
くびれや細長のきれいなおへそまで、外気にさらされる。
細くて長い手足や背中も露わになって、女の特徴の胸と股間だけが隠れている。
この格好で、男からの舐めるような視線を浴びなければならない。
そう考えると、全身がそわそわして落ち着かなくなる。
「な、なんだろう。下着を見られているような気分……」
「大丈夫。ほかの娘だってみんなビキニを着てるんだから。とってもセクシーよ。せっかくのプロポーションなんだから、むしろこの機会に見せびらかさないと。試しに他のも着てみる?」
優花はそう言って、ほかの水着も試着させていく。
いくつか試した後「これがとっておきなの」と言って、パステルカラーの赤が映えるビキニを差し出した。
「腰に紐が付いているのも可愛いでしょ? 胸の小さな娘には、フリルビキニがおすすめだけど、あおいはやっぱり定番の三角ビキニがよさそうね」
黒もいいが、赤の方がセクシーさと可愛らしさを併せ持つあおいには合っていた。
これで試着は終わり。
そう思っていたのだが……。
「そうそう。最後にちゃっかり男の子用の水着も持ってきたの。さっきすごく物欲しそうに見てたでしょ? 男装にも興味があるのかと思って」
「えっ、その、あ、あたしは……」
男装という言い方が、むずかゆい。
去年までは女装と言われることはあっても、男装と言われることはあり得なかった。
今男物を着たら、異性装になってしまうのだろうか。
「ねぇ、試しに水着の上から男装してみましょうよ」
言葉に引っかかるが、優花に促されて仕方なく男物の水着にも足を通す。
去年だって着ていたんだし、楽勝だよね。
そう思ってあおいは腰までゴムひもを引き上げた。
「あれ? お尻のあたりは余裕がないのに、お腹がぶかぶか……」
去年はぴったりだったはずなのに。
首をかしげているあおいに、何がおかしいのと言いたげに優花は笑う。
「当り前よ。だって男の子とあたしたちじゃ体のつくりが違うんだもの。スタイルのいい娘であればあるほど、ウエストとヒップの差が出てくるんだから」
あおいの骨盤は女性ホルモンの影響で広がり始めている。
妊娠したときに赤ん坊を支えられるように、骨格から変化してきているのだ。
あおいは鏡の中の自分を見る。
映っているのは、胸を抜きにしても女性の体だ。
明らかに男性用の水着は合っていない。
これでは男装と言われても仕方がない。
「あたしもね。一度男の子になってみたいって思ったことあるよ。生理もないし、お手洗いも時間がかからないし、羨ましいってね。でも……」
「でも?」
「オシャレをして、甘いものを食べながらガールズトークをしたり、素敵な彼氏を探したりって女だからできるんだなって気が付いて、やっぱり女に生まれてよかったなって。男に生まれたら、絶対に無理なことよ。あおいもそうでしょ?」
「……あ、あたしは、それでも男の子っぽい服の方がいいかな」
「そっか。ボーイッシュに着飾るのも楽しいよね。でも、あたしはあおいにはガーリーな服の方が似合うと思うよ。そのボブヘアーも似合うけど、もう少し長い髪の方が合ってると思うよ」
何も知らない優花はにっこりとほほ笑んだ。
ーーーー
結局、あおいは赤いビキニを買って店を出た。
(うぅ……。水着って結構高いんだ。僕のお小遣いが全てビキニに)
水着店の裏のウッドデッキでトロピカルフルーツを飲みながら、あおいと優花は海を眺めていた。
穏やかな波が砂を撫でながら、リズミカルに自然の音色を奏でている。
ストローから酸味のある甘みが口内に広がっていく。
「舌が甘さで麻痺しそう」
あおいの言葉に優花はにっこりと頷く。
「そうね。でも美味しいでしょ」
「うん……」
あおいも思わず素直に返事をした。
女体化が進んでいるせいだろうか。
昔はそんなに欲しいと思わなかった甘いものが、美味しいと感じる。
飲めば飲むほど、もっと甘いものが欲しくなっていく。
あおいは知らない。
甘いもののエネルギーのほとんどが、男性細胞を殺すためと、女性細胞が増えるために使われていることを。
こうして他愛のない会話の最中も、あおいの性転換は、ゆったりとした時の流れの中で、じりじりと進んでいた。
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