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レストナード家の長女
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レストナード侯爵家の長女は最低のワガママ娘である。
先王の三番目の子供である、今は亡きリティア夫人によく似た美しい顔立ちに銀色の髪と青い瞳を持ちながら、それを活かすどころか整えもしない。
第一王子の婚約者という立場もあればこそ容姿を美しく保つのも義務だというのに、肌はボロボロに荒れ、髪は一切のツヤを失い、死んだように暗い表情の中で瞳だけが青くギラつく。
まるで幽霊のようだと、彼女を見た人々はささやきあった。
滅多に部屋から出ず、ごくたまに社交界に顔を出しても古びた灰色のドレスで壁際に立っているだけ。
彼女はせっかく両親が用意したドレスをたちまちズタズタに切り裂いて、「こんなセンスの無いドレスは着られない」と叫び、周囲の制止も聞かずにあの老婆のような服に身を包むそうだ。
シルヴィアの愚行はそれだけではない。
社交界では言葉一つ発さず大人しい振りをしているくせに、日頃から使用人に暴力を振るい、家族に暴言を吐き、気に入らないことがあればすぐに暴れて部屋をめちゃくちゃにしてしまうという。
また、ことあるごとに仮病としか思えない体調不良を訴え、専門家である医師が「健康体である」と診断しても納得せずいつまでも異論を唱え続けるという話だ。
見かけだけでなく心まで醜い化け物。
社交界の人々はシルヴィアをそう蔑んだ。
さて、レストナード侯爵家にはシルヴィアの他にもう一人娘がいる。
シルヴィアを産んですぐに亡くなったリリティア夫人の後釜として侯爵家に嫁いだ後妻の連れ子であり、姉のシルヴィアとは血が繋がっていない。
妹とされてはいるが誕生日は半年ほどしか違わない、シルヴィアと同い年の少女である。
母譲りの艶やかな金髪、鮮やかなエメラルドグリーンの瞳は、皮肉なことにシルヴィアとは正反対の明るさを全面に押し出していた。
名前をミリア・レストナードという。
ミリアはその容姿同様、姉とは正反対の性格をしていた。
素直で優しく、自分磨きに関しては決して手を抜かない。
社交にも積極的で家の爵位を問わず大勢の友人がいる。
醜い姉に虐げられる立場にありながら、誰かがシルヴィアの悪口を言うのを聞いて「お姉様は本当は優しい方なんです」と必死に庇う姿は健気そのものだ。
時折耐え切れなくなったようにシルヴィアの理不尽な仕打ちを零すが、最後にはいつも「お姉様は今、きっと何か辛い思いをなさっているんだわ。大切な家族なのだから、いつか元の優しいお姉様に戻ってくださるのを信じて待っていなくてはいけませんね」と切なげに微笑むミリアに誰もが心を打たれ、シルヴィアへの嫌悪を募らせるのだった。
───これが、シルヴィアが16歳になる冬の社交界の常識であった。
シルヴィア、そしてミリアは迫る春に学園へと入学する。レストナード家の真実はもうしばらく闇の中である。
先王の三番目の子供である、今は亡きリティア夫人によく似た美しい顔立ちに銀色の髪と青い瞳を持ちながら、それを活かすどころか整えもしない。
第一王子の婚約者という立場もあればこそ容姿を美しく保つのも義務だというのに、肌はボロボロに荒れ、髪は一切のツヤを失い、死んだように暗い表情の中で瞳だけが青くギラつく。
まるで幽霊のようだと、彼女を見た人々はささやきあった。
滅多に部屋から出ず、ごくたまに社交界に顔を出しても古びた灰色のドレスで壁際に立っているだけ。
彼女はせっかく両親が用意したドレスをたちまちズタズタに切り裂いて、「こんなセンスの無いドレスは着られない」と叫び、周囲の制止も聞かずにあの老婆のような服に身を包むそうだ。
シルヴィアの愚行はそれだけではない。
社交界では言葉一つ発さず大人しい振りをしているくせに、日頃から使用人に暴力を振るい、家族に暴言を吐き、気に入らないことがあればすぐに暴れて部屋をめちゃくちゃにしてしまうという。
また、ことあるごとに仮病としか思えない体調不良を訴え、専門家である医師が「健康体である」と診断しても納得せずいつまでも異論を唱え続けるという話だ。
見かけだけでなく心まで醜い化け物。
社交界の人々はシルヴィアをそう蔑んだ。
さて、レストナード侯爵家にはシルヴィアの他にもう一人娘がいる。
シルヴィアを産んですぐに亡くなったリリティア夫人の後釜として侯爵家に嫁いだ後妻の連れ子であり、姉のシルヴィアとは血が繋がっていない。
妹とされてはいるが誕生日は半年ほどしか違わない、シルヴィアと同い年の少女である。
母譲りの艶やかな金髪、鮮やかなエメラルドグリーンの瞳は、皮肉なことにシルヴィアとは正反対の明るさを全面に押し出していた。
名前をミリア・レストナードという。
ミリアはその容姿同様、姉とは正反対の性格をしていた。
素直で優しく、自分磨きに関しては決して手を抜かない。
社交にも積極的で家の爵位を問わず大勢の友人がいる。
醜い姉に虐げられる立場にありながら、誰かがシルヴィアの悪口を言うのを聞いて「お姉様は本当は優しい方なんです」と必死に庇う姿は健気そのものだ。
時折耐え切れなくなったようにシルヴィアの理不尽な仕打ちを零すが、最後にはいつも「お姉様は今、きっと何か辛い思いをなさっているんだわ。大切な家族なのだから、いつか元の優しいお姉様に戻ってくださるのを信じて待っていなくてはいけませんね」と切なげに微笑むミリアに誰もが心を打たれ、シルヴィアへの嫌悪を募らせるのだった。
───これが、シルヴィアが16歳になる冬の社交界の常識であった。
シルヴィア、そしてミリアは迫る春に学園へと入学する。レストナード家の真実はもうしばらく闇の中である。
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