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しおりを挟む(私、どうしたらいいの?)
セシュアンは大変困っていた。
なぜか。目の前には大柄な男がうずくまっていたからだ。
(なぜ、こんなところに?)
そもそもここは街でも村でもない。
周りには見渡す限り何もないのだ。強いて言えば、草がたくさん生えているだけだ。
ただ、セシュアンは知らないがこのあたりは魔物がよく出没していると言われるところだった。そのため、魔物出現し、討伐依頼があれば任務で赴くことも少なくなかった。
たが、そんなことは今どうでもよいのである。
問題はこの目の前の男をどうするかである。
(とりあえず、息はしているし、特に傷を負っているわけでもなさそう。うつ伏せになっているから分からないけど)
「.....っん、げほっ........」
そんなことを考えていた時、男が意識を取り戻したらしい。
「えっと、大丈夫ですか?」
目の前に自分以外の誰かがいると思っていなかったらしく、目を見開いてこちらを警戒しだした。
(まぁ、分かるけどその反応傷付くわー)
「.....お前は誰だ?」
「私はセシュアン。ここよりももっと向こう側の森から来たのよ。
ところで、倒れていたようだけれど怪我をしたの?」
だが、男はなかなか話さない。
まぁつい先程目が覚めたばかりだし、なにより顔色が悪すぎる。
「...いや........怪我はしていない......ただ魔力が枯渇しただけだ。寝てれば治る」
(なるほど、魔力切れか)
それを聞いて少しほっとする。
魔力切れならば栄養あるものを食べ、寝ていれば自然と回復するからである。
「いつから倒れているのか知らないけれど、何か食べれるものを作るわ。少し待ってて。」
「は?」
セシュアンは無視して、火の準備をし始める。
鍋に水筒に入っていた水を入れ、干し肉、きのこ、ねぎ、生姜を入れ味を整えてスープを作る。
ねぎや生姜は体を温める作用があり、きのこには栄養がたっぷり含まれており、疲労回復にも役立つ。
今の彼にはぴったりだろう。
「ほら、熱いから気をつけてね」
無言で受けった彼は、恐る恐る口に含む。
「.......うまい」
そう言ったかと思えばびっくりするぐらいのスピードで食べ始めた。
(なんだか、狼みたいね。しっぽぶんぶん振ってる幻覚が見えるわ)
きれいに残さず食べて満足したのか、急に真面目な顔をこちらに向ける。
「先程は、見苦しいところを見せてしまった。すまない。おかげで命拾いした。俺はジーラ、魔術師だ。だが、食べてすぐ魔力が回復するとは思わなかった。」
「魔術師がなんでここに?栄養あるものを食べれば早く回復するのは当たり前でしょう?」
「ここ最近、このあたりで魔物がよく出ると言われている。ここら辺では珍しいことではないが魔物が増えているそうで、調査に来たのだ。
いや、こんなに早く回復したのは初めてだ。そういえば、そもそもここ何年も栄養ドリンクと肉しか食べていないな。」
「こんな何もないところで魔物が出るの?というか、栄養ドリンクと肉だけって.....」
もういろいろ驚きだ。
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