森の薬師

沙也

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とりあえず、ここにずっと居てはいつ魔物が来るかわからないということでジーラの住んでいる王都まで行くことになった。
もともとセシュアンが向かっていたところだったのだ。


ただ、王都まで行くのには乗り合い馬車で後1日はかかる。
近くの村までは徒歩で30分程らしいので、1泊して、朝一の馬車に乗ることにした。

「そういえば、ジーラさんは何日か今から行く宿に泊まっていたの?」


「あぁ、昨日遅くに宿に着いたから1泊はしたが、それがどうした?」


「いえ、宿に泊まっていたなら食事が出てくるんじゃないかと思っただけ。
さっき、栄養ドリンクと肉しか食べてないと言っていたから。」

「頼めば準備するが、前の日に言わないといけないし、日が明ける前に出てきたからな。一応食糧は持ってきていたし、考えてもいなかった。」

(考えてないって。・・・というか、栄養ドリンクって飲み物じゃない。固形物が肉だけって納得いかない。いや、数年その生活で倒れていないんだからちゃんとしたものなんだろうけど。)


そう思うのも無理はない。そもそもアシュアンは森の中で暮らしていたのだ。エルフは村で暮らす際、他種族とはあまり関わらないようにして生きている。なんでもその昔、森の資源を無計画に使い倒したことがあるらしい。それ以外にも、小さな小競り合いが何度もあったらしい。森と自分達の生活を守るため、村で暮らす際は、村に余所者を極力入れないようにしているのだ。だから、王都などの大きな街の情報であっても遅れて入ってきたり、そもそも入ってこないことが多いのだ。

ただ、やはりそれでは新しい薬草や器具、その他諸々古い知識では効率が悪かったり、固定観念が強すぎて何も出来なかったりするので、18歳になれば修行のため、村を出るのだ。


納得いかない顔で悶々と考えていたセシュアンをよそに、ジーラは淡々と進んでいった。気付いたら、目の前に宿が建っていた。恐るべし集中力。


「入らないのか?」

ジーラは扉を開けながら、中々入らないセシュアンを待っていたようだ。
(いけない、ぼーっとしてた!)

「入る!入ります!」
 

そうしてやっと落ち着ける場所に来てほっとしたセシュアンだった。なお、受付で部屋を借りる際、しっかりと2人分の朝食の予約をしたのだった。

それを聞いた女将さんはほっとしていた。なんでも朝早く出たジーラは、少しふらつきながら出て行ったらしい。寝ぼけているのか、それとも疲れているのか分からなかったから不安だったらしい。

(・・・・どんだけ自分の体調管理をしていないの。早死にしたいのかしら。でも、村の人たちはちゃんと料理を食べているみたいで安心したわ。皆ジーラさんのような生活しているのかと一瞬思ったもの。

というか、食事よりも仕事優先ってどれだけワーカホリックなのよ、この人。)

よりジーラの謎が深まった。
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