吸血鬼に転生した俺は、人間の村を目指す

ナポ

文字の大きさ
3 / 16

3

しおりを挟む
「でも、外には吸血鬼がいるよ」
「それに、道が分からないわ……」
「そうだな」
「僕も知らない」
「えーと、誰も知らない感じなの?」
「「「「「うん」」」」」
「ど、どうやって攫われてきたの?」
「何で吸血鬼なのに村の場所しらないの?」
「ごもっともで……でもほら、俺は牙無しだからさ?」
「牙無しってなんだよ?」
「昨日もなんか言ってたよな」
「ぐっ、忘れてくれると嬉しいんだけど……」
 思わず昨日の出来事を思い出し、首をさすった。ぶすりと差し込まれる牙の感覚を思い出し、ブルりと震えが走る。
「忘れてね?」と念を押し笑うシーノに、子供たちはブンブンと首を縦に振った。

「牙無しって言うのは、牙が一つしか無い吸血鬼のことを言うんだ」
「へー」
「一つ牙があるなら、牙無しと呼ぶのは変よ」
「確かに」
「いや、俺も詳しくは知らないけれど、他の吸血鬼からそう呼ばれるからな……まぁ、そんな事はどうでもよくて!人間の村の場所について調べないと、君たちを助けられない!それじゃ、早速だけどこの辺調査してくるね」
「だ、大丈夫なのか?」
「そうだよ、また昨日みたいな奴がいたら……」
 心底吸血鬼が怖いと訴える子供たちを見て、優しいなーと思う。けれど、そこまで心配されるようなことはない。
 たかが血を吸われたところで死にやしないのだ。
「大丈夫だよ、血を吸われたってご飯を食べれば元に戻るし……大丈夫だよ」
 腕を組んでにっこりと微笑む。
「それなら良いけど」
「気をつけて」
「頑張って!」
「絶対に戻ってきてね!」
「ご飯、ありがとう」
「ありがとう」

 ■

 調査をすると言ったものの、聞き込みは当てにならない。朝と言うことは、吸血鬼にとって寝る時間だ。とりあえず、資料室へと足を運んだ。
俺は文字が読めない。独学で文字を学ぶなんて芸当が一般人に出来るはずもなく、ただパラパラと無駄にページをめくり、記号やイラストを見つけては目を通していく。

「はぁ……地図らしきものはあるけど、ここがどこかも分からないし、結局どこへ進めばいいのか分からないな……」

 陽の光を苦手とする吸血鬼が、こんな朝早くから活動することは珍しい。俺は昔から陽の光を浴びても平気だった。欠陥品だから、と言われればそうかなとも思うけれど。本当に俺は吸血鬼だろうか?とも考える。まぁ、一つだけとは言え牙があるし、吸血鬼ではあるのだろうけれど。腑に落ちない。

 机に頬ずえをつき目を休める。時間が無い……他に手はないだろうか。

「何をしている?」

 すぐ隣から気配を感じ視線を向ければ、黒髪が視界に入った。そのまま深紅の瞳へと吸い寄せられる。
 ──ヴァイス・レイドレス
 いつからいたのか、幽霊のように現れた存在に声をあげそうになった。

「っ、本を読んでいます……」
「本を?」
 何故?お前が?という視線が右頬に突き刺さる。
 だが、その視線からは軽蔑の感情は感じられない。純粋な疑問なのだろう。昔からこの人は、普通に接してくれる。友人と呼べるような関係では無いけれど、一緒にいて安心できる人。

「お前は……文字が読めたか?」
「いえ、読めません……けれど、調べたいことができたので、適当に見ていました」
「ほう?何が知りたい」

  面白そうに片頬を釣り上げ笑う。
 悪役のような笑い方なのに、それが似合いすぎてヤバい。
 もっとよく見ていたいけれど、まともに思考出来なくなりそうで、咄嗟に前を向いた。

「その……人間、について……」
 ヴァイスも吸血鬼だ、もしかしたら、人間の村がどこにあるか知っているかもしれない。伺うように首をすくめる。
「人間か──」
 なんだそんな事か、とヴァイスの表情が変わるのを視界に捉え、つい問いかけてしまった。
「はい!人間の村に行きたくて!もし、知っていれば教えて……」

 ピシリと、空気が冷たく変わる。
 ひんやりとした手が頬に添えられ、逆らうことは許されないと本能が告げる。
 いざなわれるままに傾く視界。
 見てはいけないと警鐘が鳴る。心臓が嫌なほど脈打ち、冷や汗が流れ、ぎゅっと目を瞑った。
 瞼に温度の低い口付けが落ちる。

「──俺は、人間が嫌いだ」
 そんな訳、と言いかけて目を開けてしまう。
 だってあんなに優しく微笑んでいたのに、嫌いなわけ無いだろうと。
「嘘っ、ん……」

 ボロボロと涙が溢れる。
 ヴァイスは他とは違うと思っていた。だから、こんな事は有り得ない。悪い夢だ。そう思おうと視界を閉ざしても、突き刺さった牙は、ジンジンと痛みを訴えてくる。
 ガンガンと頭がうるさい。

「喰らってしまおうか……」

 深紅の瞳がより深く煌めいた。
 あぁ、綺麗なのに……どうしてそんな目で俺を見るのか。

 冗談だ。そう軽く笑ってくれれば、大丈夫。きっとすぐに忘れるから。


 現実は、残酷だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スマホゲームの中にトリップした?!

ナポ
BL
階段を踏み外すとそこはベットの上だった。 あれ?でもここって…? いつの間にかゲームの世界へと転移していた俺は、自分が作り出したアバター達と一緒にのんびりと冒険ライフを送るはず? ドタバタと白い服の警備隊に追いかけられたり、クロウサ亭でご飯を食べたり……!! 最初※Rシーンはいります。 頭を空っぽにしてご覧ください!

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

神の寵愛を受ける僕に勝てるとでも?

雨霧れいん
BL
生まれるのがもっともっと今より昔なら、”信仰”することが”異端”でない時代なら世界ならよかったと、ずっと思って生きていた。あの日までは 溺愛神様×王様系聖職者 【 登場人物 】 ファノーネ・ジヴェア →キラを溺愛し続ける最高神 キラ・マリアドール(水無瀬キラ)→転生してから寵愛を自覚した自分の道を行く王様系聖職者

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...