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「でも、外には吸血鬼がいるよ」
「それに、道が分からないわ……」
「そうだな」
「僕も知らない」
「えーと、誰も知らない感じなの?」
「「「「「うん」」」」」
「ど、どうやって攫われてきたの?」
「何で吸血鬼なのに村の場所しらないの?」
「ごもっともで……でもほら、俺は牙無しだからさ?」
「牙無しってなんだよ?」
「昨日もなんか言ってたよな」
「ぐっ、忘れてくれると嬉しいんだけど……」
思わず昨日の出来事を思い出し、首をさすった。ぶすりと差し込まれる牙の感覚を思い出し、ブルりと震えが走る。
「忘れてね?」と念を押し笑うシーノに、子供たちはブンブンと首を縦に振った。
「牙無しって言うのは、牙が一つしか無い吸血鬼のことを言うんだ」
「へー」
「一つ牙があるなら、牙無しと呼ぶのは変よ」
「確かに」
「いや、俺も詳しくは知らないけれど、他の吸血鬼からそう呼ばれるからな……まぁ、そんな事はどうでもよくて!人間の村の場所について調べないと、君たちを助けられない!それじゃ、早速だけどこの辺調査してくるね」
「だ、大丈夫なのか?」
「そうだよ、また昨日みたいな奴がいたら……」
心底吸血鬼が怖いと訴える子供たちを見て、優しいなーと思う。けれど、そこまで心配されるようなことはない。
たかが血を吸われたところで死にやしないのだ。
「大丈夫だよ、血を吸われたってご飯を食べれば元に戻るし……大丈夫だよ」
腕を組んでにっこりと微笑む。
「それなら良いけど」
「気をつけて」
「頑張って!」
「絶対に戻ってきてね!」
「ご飯、ありがとう」
「ありがとう」
■
調査をすると言ったものの、聞き込みは当てにならない。朝と言うことは、吸血鬼にとって寝る時間だ。とりあえず、資料室へと足を運んだ。
俺は文字が読めない。独学で文字を学ぶなんて芸当が一般人に出来るはずもなく、ただパラパラと無駄にページをめくり、記号やイラストを見つけては目を通していく。
「はぁ……地図らしきものはあるけど、ここがどこかも分からないし、結局どこへ進めばいいのか分からないな……」
陽の光を苦手とする吸血鬼が、こんな朝早くから活動することは珍しい。俺は昔から陽の光を浴びても平気だった。欠陥品だから、と言われればそうかなとも思うけれど。本当に俺は吸血鬼だろうか?とも考える。まぁ、一つだけとは言え牙があるし、吸血鬼ではあるのだろうけれど。腑に落ちない。
机に頬ずえをつき目を休める。時間が無い……他に手はないだろうか。
「何をしている?」
すぐ隣から気配を感じ視線を向ければ、黒髪が視界に入った。そのまま深紅の瞳へと吸い寄せられる。
──ヴァイス・レイドレス
いつからいたのか、幽霊のように現れた存在に声をあげそうになった。
「っ、本を読んでいます……」
「本を?」
何故?お前が?という視線が右頬に突き刺さる。
だが、その視線からは軽蔑の感情は感じられない。純粋な疑問なのだろう。昔からこの人は、普通に接してくれる。友人と呼べるような関係では無いけれど、一緒にいて安心できる人。
「お前は……文字が読めたか?」
「いえ、読めません……けれど、調べたいことができたので、適当に見ていました」
「ほう?何が知りたい」
面白そうに片頬を釣り上げ笑う。
悪役のような笑い方なのに、それが似合いすぎてヤバい。
もっとよく見ていたいけれど、まともに思考出来なくなりそうで、咄嗟に前を向いた。
「その……人間、について……」
ヴァイスも吸血鬼だ、もしかしたら、人間の村がどこにあるか知っているかもしれない。伺うように首をすくめる。
「人間か──」
なんだそんな事か、とヴァイスの表情が変わるのを視界に捉え、つい問いかけてしまった。
「はい!人間の村に行きたくて!もし、知っていれば教えて……」
ピシリと、空気が冷たく変わる。
ひんやりとした手が頬に添えられ、逆らうことは許されないと本能が告げる。
誘われるままに傾く視界。
見てはいけないと警鐘が鳴る。心臓が嫌なほど脈打ち、冷や汗が流れ、ぎゅっと目を瞑った。
瞼に温度の低い口付けが落ちる。
「──俺は、人間が嫌いだ」
そんな訳、と言いかけて目を開けてしまう。
だってあんなに優しく微笑んでいたのに、嫌いなわけ無いだろうと。
「嘘っ、ん……」
ボロボロと涙が溢れる。
ヴァイスは他とは違うと思っていた。だから、こんな事は有り得ない。悪い夢だ。そう思おうと視界を閉ざしても、突き刺さった牙は、ジンジンと痛みを訴えてくる。
ガンガンと頭がうるさい。
「喰らってしまおうか……」
深紅の瞳がより深く煌めいた。
あぁ、綺麗なのに……どうしてそんな目で俺を見るのか。
冗談だ。そう軽く笑ってくれれば、大丈夫。きっとすぐに忘れるから。
現実は、残酷だった。
「それに、道が分からないわ……」
「そうだな」
「僕も知らない」
「えーと、誰も知らない感じなの?」
「「「「「うん」」」」」
「ど、どうやって攫われてきたの?」
「何で吸血鬼なのに村の場所しらないの?」
「ごもっともで……でもほら、俺は牙無しだからさ?」
「牙無しってなんだよ?」
「昨日もなんか言ってたよな」
「ぐっ、忘れてくれると嬉しいんだけど……」
思わず昨日の出来事を思い出し、首をさすった。ぶすりと差し込まれる牙の感覚を思い出し、ブルりと震えが走る。
「忘れてね?」と念を押し笑うシーノに、子供たちはブンブンと首を縦に振った。
「牙無しって言うのは、牙が一つしか無い吸血鬼のことを言うんだ」
「へー」
「一つ牙があるなら、牙無しと呼ぶのは変よ」
「確かに」
「いや、俺も詳しくは知らないけれど、他の吸血鬼からそう呼ばれるからな……まぁ、そんな事はどうでもよくて!人間の村の場所について調べないと、君たちを助けられない!それじゃ、早速だけどこの辺調査してくるね」
「だ、大丈夫なのか?」
「そうだよ、また昨日みたいな奴がいたら……」
心底吸血鬼が怖いと訴える子供たちを見て、優しいなーと思う。けれど、そこまで心配されるようなことはない。
たかが血を吸われたところで死にやしないのだ。
「大丈夫だよ、血を吸われたってご飯を食べれば元に戻るし……大丈夫だよ」
腕を組んでにっこりと微笑む。
「それなら良いけど」
「気をつけて」
「頑張って!」
「絶対に戻ってきてね!」
「ご飯、ありがとう」
「ありがとう」
■
調査をすると言ったものの、聞き込みは当てにならない。朝と言うことは、吸血鬼にとって寝る時間だ。とりあえず、資料室へと足を運んだ。
俺は文字が読めない。独学で文字を学ぶなんて芸当が一般人に出来るはずもなく、ただパラパラと無駄にページをめくり、記号やイラストを見つけては目を通していく。
「はぁ……地図らしきものはあるけど、ここがどこかも分からないし、結局どこへ進めばいいのか分からないな……」
陽の光を苦手とする吸血鬼が、こんな朝早くから活動することは珍しい。俺は昔から陽の光を浴びても平気だった。欠陥品だから、と言われればそうかなとも思うけれど。本当に俺は吸血鬼だろうか?とも考える。まぁ、一つだけとは言え牙があるし、吸血鬼ではあるのだろうけれど。腑に落ちない。
机に頬ずえをつき目を休める。時間が無い……他に手はないだろうか。
「何をしている?」
すぐ隣から気配を感じ視線を向ければ、黒髪が視界に入った。そのまま深紅の瞳へと吸い寄せられる。
──ヴァイス・レイドレス
いつからいたのか、幽霊のように現れた存在に声をあげそうになった。
「っ、本を読んでいます……」
「本を?」
何故?お前が?という視線が右頬に突き刺さる。
だが、その視線からは軽蔑の感情は感じられない。純粋な疑問なのだろう。昔からこの人は、普通に接してくれる。友人と呼べるような関係では無いけれど、一緒にいて安心できる人。
「お前は……文字が読めたか?」
「いえ、読めません……けれど、調べたいことができたので、適当に見ていました」
「ほう?何が知りたい」
面白そうに片頬を釣り上げ笑う。
悪役のような笑い方なのに、それが似合いすぎてヤバい。
もっとよく見ていたいけれど、まともに思考出来なくなりそうで、咄嗟に前を向いた。
「その……人間、について……」
ヴァイスも吸血鬼だ、もしかしたら、人間の村がどこにあるか知っているかもしれない。伺うように首をすくめる。
「人間か──」
なんだそんな事か、とヴァイスの表情が変わるのを視界に捉え、つい問いかけてしまった。
「はい!人間の村に行きたくて!もし、知っていれば教えて……」
ピシリと、空気が冷たく変わる。
ひんやりとした手が頬に添えられ、逆らうことは許されないと本能が告げる。
誘われるままに傾く視界。
見てはいけないと警鐘が鳴る。心臓が嫌なほど脈打ち、冷や汗が流れ、ぎゅっと目を瞑った。
瞼に温度の低い口付けが落ちる。
「──俺は、人間が嫌いだ」
そんな訳、と言いかけて目を開けてしまう。
だってあんなに優しく微笑んでいたのに、嫌いなわけ無いだろうと。
「嘘っ、ん……」
ボロボロと涙が溢れる。
ヴァイスは他とは違うと思っていた。だから、こんな事は有り得ない。悪い夢だ。そう思おうと視界を閉ざしても、突き刺さった牙は、ジンジンと痛みを訴えてくる。
ガンガンと頭がうるさい。
「喰らってしまおうか……」
深紅の瞳がより深く煌めいた。
あぁ、綺麗なのに……どうしてそんな目で俺を見るのか。
冗談だ。そう軽く笑ってくれれば、大丈夫。きっとすぐに忘れるから。
現実は、残酷だった。
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