16 / 16
13
しおりを挟む子供たちを寝かせた後、客間へと通された。貴族の家らしく家具がとても高そうだ。高い天井にあるシャンデリアが落ちてこないかと眺めていると、話しかけられた。
「それで。どうしてお前は人間の村に行きたいんだ? 」
洗礼された手付きで紅茶を飲む少年の名は、ベリウェル・アースリウム。由緒正しい吸血鬼の始祖の血を引いている。
「俺は人間として生きたいのです」
「……ほう?面白い。その牙に理由があるのか?」
愉快だと言わんばかりに悪い笑みを浮かべ問いかけられる。
「そうですね。俺は……血が飲みたくないので……出来れば人間のように食事をして暮らしたいです」
「ふーん。まぁ分からなくもないがな。不味い血は不快だ。俺は自分が上手いと思える血に出会いたい」
「なるほど……俺には理解できないですね」
「だろうな。だが、俺たちは吸血鬼だ。血を飲まないというのならその命は短いぞ」
「それでも、俺は人間として生活したいと思います」
「意思は固いか。だが、不思議だな。吸血鬼の本能に抗う者など、今まで見たことがない」
「……」
元人間として生きたい記憶がある俺らからすれば当たり前の価値観だ。
「ベリウェル!」
「来たか」
ドタバタと足音を立てて入ってきたのは、頭につのを生やした子供たち。真っ赤な髪に美しい金の瞳をしており、ベリウェルに負けず劣らずの美少年だ。まだ小さいので幼さも加わりとても可愛らしい。
「遊ぼー!」
「この人、誰?」
「ベリウェルのお友達?」
ベリウェルの膝に抱きつき、首を傾げる。
「紹介しておこう。近所に住んでいる鬼人の双子だ」
「初めまして。お世話になっております。シーノ・マイテイルと申します」
床に膝まづき礼をとり、自己紹介をする。
「綺麗な髪だね」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑めば、嬉しそうに笑い返してくれる。
「今日はこいつがお前たちと遊んでくれるそうだ」
「え?!」
急な話につい声をあげ、戸惑いがちに視線をウロウロさせれば、不愉快そうな声で問いかけられた。
「何だ。不満か?」
「い、いえ!ぜひ遊ばさせていただきます!」
「……ベリウェルは遊んでくれないの?」
「そうだよ。ベリウェルも遊ぼう!」
「分かったから。引っ張るな」
カードゲームやボール遊び、手遊びなど色々な遊びを満喫した。
一緒に連れてきた子どたちは、まだ薬で眠らされていて起きてこなかったが、怪我もなく明日には目覚めるだろうと言われ安心する。
遊び疲れて、ぐったりとカーペットの上に横たわっていると、ベリウェルが傍らに立ち覗き込んできた。
咄嗟に起き上がり正座をする。
腕を組み立ったままのベリウェルと視線が絡む。
何か用があるのかと首を傾げる。
「あの、何か?」
「お前は……楽しそうだな」
自身満々な姿しか見たことが無かったベリウェルがどこか羨ましそうに呟く。羨む事など何もないと思うけれど。
「アースリウム様も一緒に遊びましたよね?」
「ふん。ベリウェルと呼べ。許す。それで? お前はあの子供たちと一緒に暮らすのか?」
腕を組んだまま、淡々と問いかけられる。
「いえ、あの子達を元の場所に戻したら、一人で過ごそうかと」
ベリウェルは何も言わず、じっとこちらを見ている。
「あの子たちと約束したんです。無事に村まで届けるって」
「……保護者気取りか」
「違います。ただ……」
言葉を探しながら、視線を落とす。
「俺自身が、ひとりになるのが嫌なんだと思います」
「……弱いな」
そう言いながらも、声音はどこか柔らかかった。
「弱くて結構です。人間は、そういう生き物なので」
ぽつりと返す。
「群れなければ生きられず、誰かと笑わなければ心が壊れる。だから、俺は人間として生きたいんです」
ベリウェルは紅茶の残りを一息で飲み干した。
カップを置く音が、やけに大きく響く。
「……くだらん」
短く吐き捨てる。
だが、その後に続く言葉はなかった。
代わりに、ゆっくりと窓の方へ視線を向ける。
「お前は、不思議な吸血鬼だ」
「そう、ですか?」
「ああ。血を拒み、寿命を捨て、それでも笑っている」
深紅の瞳がこちらを射抜く。
「まぁ、頑張るんだな……明日、街道まで送ってやる」
「え?」
「検問は俺が潰す。人間側の厄介事も処理する」
何でもないことのように言う。
「いえ、それはちょっと……大事にされると困ります。中まで簡単に入る方法があればいいんですけど」
「あるぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ、明日楽しみにしていろ」
悪巧みをするように口角を上げ笑う。
頼もしい味方ができて嬉しいけれど、吸血鬼の追っ手がこないか不安が残る。タルドやヴァイスが来るかもしれない……なんて、自信過剰かな。
欠陥品として扱われ、無関心で放置されていたのだ、わざわざ捕まえになんて来ないだろう。
「早く寝ろ。血も吸わずにフラフラされると面倒だ」
小さく鼻で笑う姿に何だか和んだ。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
スマホゲームの中にトリップした?!
ナポ
BL
階段を踏み外すとそこはベットの上だった。
あれ?でもここって…?
いつの間にかゲームの世界へと転移していた俺は、自分が作り出したアバター達と一緒にのんびりと冒険ライフを送るはず?
ドタバタと白い服の警備隊に追いかけられたり、クロウサ亭でご飯を食べたり……!!
最初※Rシーンはいります。
頭を空っぽにしてご覧ください!
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
神の寵愛を受ける僕に勝てるとでも?
雨霧れいん
BL
生まれるのがもっともっと今より昔なら、”信仰”することが”異端”でない時代なら世界ならよかったと、ずっと思って生きていた。あの日までは
溺愛神様×王様系聖職者
【 登場人物 】
ファノーネ・ジヴェア →キラを溺愛し続ける最高神
キラ・マリアドール(水無瀬キラ)→転生してから寵愛を自覚した自分の道を行く王様系聖職者
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる