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少女へ縋り付くようにしがみつく男の姿は、感動の再会だと言うのに、酷く虚しく写った。
少女は男を一瞥するとすぐさま引き剥がす。
「触らないで!! 私を売ったくせに! 今更なに!!」
「ち、違うんだ! 俺は騙されて……!」
「……っ、そんなの、嘘だ!」
ぎゅっと拳を握りしめ震える少女。
「私……お父さんのところに戻るつもり、無いから」
「っ!」
「何事だ!!」
ザワザワとした人混みの中から剣を身につけた男たちが現れ、シーノが握りしめたナイフを取り上げる。
抵抗することもなく大人しく明け渡すと、腕を掴まれた。
「すごい怪我じゃないか……」
「取り敢えず、事情を聞かせてくれ」
力尽きた少女の父親は、引きずられるように歩かされている。
抱き抱えられそうになるのを拒否しながら歩き、村の詰所へとたどり着いた。
「それで……君は、何かな?」
机の上に乗せた腕に顎を乗せ、問いただす男。
入口で持ち物検査を受け、黒いフードが取り払われたシーノは銀髪を晒していた。
悲しそうに目を伏せれば、周りが息を飲むほど美しい。
「……俺は、刺されただけで……何も危害を加えていません」
「この人は悪くない! お父さんが悪いんだ!」
「それは承知している。人を刺したんだ。極刑は免れない。良くて追放だ」
「……うん」
「それで、君は……吸血鬼で良いんだよね?」
どうやって……どうしたら……吸血鬼だとバレたら、村に居られない。だけど、どうすればいいか分からない。
けれど、今更誤魔化せない。
緊張で喉が閉まり、つっかえそうになりながら言葉を絞り出す。
「……はい」
「そうか……まぁ、そのおかげで死人が出なかった、とも言えるな。吸血鬼なら抵抗だって出来ただろう。その判断は間違っていない。だが、抵抗するようなら、こちらも君を害するしかなくなる」
これが人間だったら、そう考え警備隊長ロンは、頭を抱えそうになった。死人が出なかったのも、事がすぐ収まったことも、良いことだと言うのに、目の前の可憐な吸血鬼をどう扱えばいいか頭を悩ませた。
「被害者である君を解放して良いものか……普通なら解放してやるんだが……」
「俺は、この村の人たちに危害を加えるつもりはありません。それに、働きます」
「……働く?」
「はい。食事処の募集で……明日から働いていいと言われました。なので、何日も拘束されるのは、少し困ります。店主にも迷惑をかけてしまいますし」
働く場所まで確保している事を告げられ、警備隊長ロンは驚いた。
「そうか……それなら、ん?君はいつからこの村にいるんだ?」
「そ、れは……」
村の警備をくぐり抜け、入り込んでいる存在。それも、吸血鬼。
これは、かなり不味いのではないか。自分たちがしっかりと警備出来ていなかった証明である。
「……お兄ちゃん、シーノは、私のお兄ちゃん!」
「「えっ?!」」
それは無理がある、誰もがそう思ったその時。
ロンは諦めるように息を着いた。
「はぁ……、分かった。見張りはつけさせてもらう。それで良いね?」
「はい! ありがとうございます!」
自分の兄だと言い張る少女を微笑ましく見つめながら、ロンはもうひとつの問題えと頭を切り替えた。
──人身売買
部下の事情聴取から浮かび上がったそれに、ロンは苦い顔で席を立つ。
「そうだ、その耳、ちゃんと隠すように」
「分かりました」
そう言い残し踵を返したロンの後ろ姿を感謝を込めて見送った。
少女は男を一瞥するとすぐさま引き剥がす。
「触らないで!! 私を売ったくせに! 今更なに!!」
「ち、違うんだ! 俺は騙されて……!」
「……っ、そんなの、嘘だ!」
ぎゅっと拳を握りしめ震える少女。
「私……お父さんのところに戻るつもり、無いから」
「っ!」
「何事だ!!」
ザワザワとした人混みの中から剣を身につけた男たちが現れ、シーノが握りしめたナイフを取り上げる。
抵抗することもなく大人しく明け渡すと、腕を掴まれた。
「すごい怪我じゃないか……」
「取り敢えず、事情を聞かせてくれ」
力尽きた少女の父親は、引きずられるように歩かされている。
抱き抱えられそうになるのを拒否しながら歩き、村の詰所へとたどり着いた。
「それで……君は、何かな?」
机の上に乗せた腕に顎を乗せ、問いただす男。
入口で持ち物検査を受け、黒いフードが取り払われたシーノは銀髪を晒していた。
悲しそうに目を伏せれば、周りが息を飲むほど美しい。
「……俺は、刺されただけで……何も危害を加えていません」
「この人は悪くない! お父さんが悪いんだ!」
「それは承知している。人を刺したんだ。極刑は免れない。良くて追放だ」
「……うん」
「それで、君は……吸血鬼で良いんだよね?」
どうやって……どうしたら……吸血鬼だとバレたら、村に居られない。だけど、どうすればいいか分からない。
けれど、今更誤魔化せない。
緊張で喉が閉まり、つっかえそうになりながら言葉を絞り出す。
「……はい」
「そうか……まぁ、そのおかげで死人が出なかった、とも言えるな。吸血鬼なら抵抗だって出来ただろう。その判断は間違っていない。だが、抵抗するようなら、こちらも君を害するしかなくなる」
これが人間だったら、そう考え警備隊長ロンは、頭を抱えそうになった。死人が出なかったのも、事がすぐ収まったことも、良いことだと言うのに、目の前の可憐な吸血鬼をどう扱えばいいか頭を悩ませた。
「被害者である君を解放して良いものか……普通なら解放してやるんだが……」
「俺は、この村の人たちに危害を加えるつもりはありません。それに、働きます」
「……働く?」
「はい。食事処の募集で……明日から働いていいと言われました。なので、何日も拘束されるのは、少し困ります。店主にも迷惑をかけてしまいますし」
働く場所まで確保している事を告げられ、警備隊長ロンは驚いた。
「そうか……それなら、ん?君はいつからこの村にいるんだ?」
「そ、れは……」
村の警備をくぐり抜け、入り込んでいる存在。それも、吸血鬼。
これは、かなり不味いのではないか。自分たちがしっかりと警備出来ていなかった証明である。
「……お兄ちゃん、シーノは、私のお兄ちゃん!」
「「えっ?!」」
それは無理がある、誰もがそう思ったその時。
ロンは諦めるように息を着いた。
「はぁ……、分かった。見張りはつけさせてもらう。それで良いね?」
「はい! ありがとうございます!」
自分の兄だと言い張る少女を微笑ましく見つめながら、ロンはもうひとつの問題えと頭を切り替えた。
──人身売買
部下の事情聴取から浮かび上がったそれに、ロンは苦い顔で席を立つ。
「そうだ、その耳、ちゃんと隠すように」
「分かりました」
そう言い残し踵を返したロンの後ろ姿を感謝を込めて見送った。
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