数合わせから始まる俺様の独占欲

日矩 凛太郎

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初めての合コン

根も葉もない

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城崎は囲まれたまま、不機嫌な表情を崩さずに座っていた。
女性陣の笑い声が、妙に甲高く耳に響く。その中心で、石井が不意に口を開く。

「城崎さ、浅見さんに気があるみたいだけど——やめた方がいいよ?」

低く、しかし聞き取れるような声量。
浅見の耳にも、その言葉ははっきりと届いた。
思わず持っていたグラスを置き、息を詰める。

「……は?」

城崎の眉間に、ゆっくりと深い皺が刻まれる。声は低く、空気が一瞬、重く沈んだ。

だが、女性陣はその反応を面白がるようにニヤつき、畳みかける。

高橋がわざとらしく肩をすくめ、からかうような笑みを浮かべた。

「質素の割にやることやってるみたいで~、むしろ取っかえ引っ変え??」

川端が甘ったるい声を重ねる。

「色んな男との関係、持ってるらしいよぉ?」

テーブルの上で、カランと氷が溶けて揺れる音がやけに大きく響いた。
浅見は瞬きすら忘れ、硬直していた。

——全部、嘘。今日が初対面の城崎が、自分のことをほとんど知らないのをいいことに、わざと貶めようとしているのは明らかだった。


城崎はわずかに眉をぴくりと動かし、口を閉ざす。
女性陣の言葉を、最後まで聞き切る。その間、視線は鋭く、どこか冷ややかだ。

そして、長い息を吐き出した。

「……お前ら、マジでダルいわ」

その声には、先ほどまでの不機嫌に加えて、確かな苛立ちが混じっていた。
彼は分かっている——浅見が切実で、真面目で、この場に場慣れしていないことを。
隣で過ごした時間が、それを証明していた。

(どう見ても無理あるだろ)

(あんな……俺の動き一つ一つに焦って、慌てて、恥ずかしがって……可愛い顔してくれる、隙だらけな女)

静かにそう思う城崎の眼差しには、微かな笑みすら浮かんでいた。

その空気を察したのか、女性陣は一斉に口をつぐむ。
城崎の不機嫌が、怒りへと変わったのを敏感に感じ取ったのだ。

石井がぎこちなく笑って取り繕う。

「じょ、冗談だよ~」

高橋もすぐに声を重ねた。

「あくまで噂だから! ね!?」

川端は作り笑いを貼り付け、甘い声で添える。

「私たち、心配してるんだよ?」

だが城崎は、その必死な弁明など一切聞く耳を持たない。

「お前らのくだらねぇ噂話なんか、オレにゃ関係ねぇ」

彼ははっきりと言い放った。

「俺からして見りゃ、てめぇらの方が『嫌な女』だぜ」

ぐうの音も出ない——とは、このことだった。
女性陣は互いに顔を見合わせ、静まり返る。
そして、そそくさと席を立ち、城崎の傍から離れていった。

しかし城崎は、そんな彼女たちに目もくれない。
冷えたグラスを片手に、ただ一人、壁際の席にいる浅見だけを、まっすぐに目で追い続けていた。

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