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君はどこ?
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ベッドから降りて部屋の隅にある水道に向かう。少しフラつくが、さっきよりマシ、大丈夫だ。美久ちゃんから、化粧落としはたくさん使って丁寧に洗えとアドバイスをもらい、顔を洗い始めた。首まで丁寧に。なんせ、顎の下まで塗られたから。
『駿也…どうしたんだ?』
キスされる前、「俺のこと覚えていて欲しい」と言っていた。どうして?覚えてるぞ?美久ちゃんが駿也のことを知らないフリするのと関係があるのか?
「よく流してね。」
後ろから声がかかる。水道の栓を捻って水でメイクを洗い流した。水が冷たい。どうしてお湯が出ないんだろう。こんなもんで本当にあの厚塗りメイクが落ちるのか?
「はい、タオル。」
美久ちゃんからタオルを受け取って顔を拭き取る。ウイッグは付けてない。誰か外してくれた?薔薇のような、花の香りに包まれたタオル。女の子って感じ。イヤ、美久ちゃんは女の子だけど…。駿也はいつも爽やかな香りだった。最後はレモンの香り…。
『レモン?』
そういえば、まだ微かに口の中にレモンの香りが残っている。これこそ駿也がいた証拠だろ?キスのフリだったのに、マジのキスをしてきた駿也…。
「失礼しますっ!お、望っ、目覚めたか!着替え持ってきたぞ!」
伸一の声に、タオルから顔を上げた。伸一が俺の制服一式を持って保健室に入ってくるところだった。
「王子にキスされて目覚めなかった白雪姫は前代未聞だよなー。なに、緊張しすぎ?」
俺の肩に腕を回して話しかけてくる。ヤメロ、伸一。…駿也にまた腕を捻られるぞ。
「ダメー。」
けど、伸一の腕を引き剥がしたのは美久ちゃんだった。
「望くんの肩に腕を回すの禁止ー!。」
「なに?美久ちゃん、やきもち?」
伸一がニヤニヤしながら聞いてくる。美久ちゃんが俺の腕を抱きしめるようにして伸一を睨んだ。俺の腕が美久ちゃんの体の柔らかい部分に触れる…。いいのか?美久ちゃん。俺、何だかドキドキしてんだけど。
「違うっ!約束したから…。」
「何の?」
思わず俺が口を出していた。約束って…駿也とだよな?
「えっ?えーと…。」
「誰と?」
俺の腕を抱きしめたままで、美久ちゃんが戸惑ってるのが分かる。でも、約束って…そうだよな?駿也とだよな?
「駿也と?」
もう一度確認する。美久ちゃんの顔がパッとこちらを向いた。
「えっ?駿也くん…?」
「駿也って誰?」
前から伸一の声も聞こえる。何だ?お前ら…本当にどうしたんだ?
「佐崎駿也っ!ったくクラスメイトだろっ!!本当にどうしたんだ!?」
俺の言葉に、2人とも呆然とした顔を見合わせた。暫し無言になる…。何だ?この間は…。
「ま、望。まずは着替えよ。もうすぐお昼だ。何か一緒に食べようぜ。」
伸一が労りの眼差しを向けて制服を差し出してきた。俺?オカシイのは俺なのか?
「あ、私、12時から頼まれてるんだった!!伸一くん、後お願いしてもいい?」
伸一が頷いたのを確認すると、美久ちゃんは俺の腕を離して脱兎のごとく保健室を飛び出して行った。
伸一と並んで保健室を後にする。三村先生はいなかったけど別にいい。後から何か言えばいいだろう。荷物が置いてある第二体育館に向かいがてら、すれ違ったクラスメイトに「大丈夫か?」と聞かれた。その度に、「駿也は?」と聞いてみたけど、誰も知っている者はいなかった。返ってくる返事はみな同じ。「誰、それ?」その度に隣の伸一は複雑そうな顔をしていた。
『!!』
体育館に戻って、体操着の短パンをしまおうと鞄を開ける。そこには、「食べて」とペンで殴り書きされた欅葉祭のパンフレットと、駿也の物だとハッキリと分かる弁当箱が入っていた。
『駿也…どうしたんだ?』
キスされる前、「俺のこと覚えていて欲しい」と言っていた。どうして?覚えてるぞ?美久ちゃんが駿也のことを知らないフリするのと関係があるのか?
「よく流してね。」
後ろから声がかかる。水道の栓を捻って水でメイクを洗い流した。水が冷たい。どうしてお湯が出ないんだろう。こんなもんで本当にあの厚塗りメイクが落ちるのか?
「はい、タオル。」
美久ちゃんからタオルを受け取って顔を拭き取る。ウイッグは付けてない。誰か外してくれた?薔薇のような、花の香りに包まれたタオル。女の子って感じ。イヤ、美久ちゃんは女の子だけど…。駿也はいつも爽やかな香りだった。最後はレモンの香り…。
『レモン?』
そういえば、まだ微かに口の中にレモンの香りが残っている。これこそ駿也がいた証拠だろ?キスのフリだったのに、マジのキスをしてきた駿也…。
「失礼しますっ!お、望っ、目覚めたか!着替え持ってきたぞ!」
伸一の声に、タオルから顔を上げた。伸一が俺の制服一式を持って保健室に入ってくるところだった。
「王子にキスされて目覚めなかった白雪姫は前代未聞だよなー。なに、緊張しすぎ?」
俺の肩に腕を回して話しかけてくる。ヤメロ、伸一。…駿也にまた腕を捻られるぞ。
「ダメー。」
けど、伸一の腕を引き剥がしたのは美久ちゃんだった。
「望くんの肩に腕を回すの禁止ー!。」
「なに?美久ちゃん、やきもち?」
伸一がニヤニヤしながら聞いてくる。美久ちゃんが俺の腕を抱きしめるようにして伸一を睨んだ。俺の腕が美久ちゃんの体の柔らかい部分に触れる…。いいのか?美久ちゃん。俺、何だかドキドキしてんだけど。
「違うっ!約束したから…。」
「何の?」
思わず俺が口を出していた。約束って…駿也とだよな?
「えっ?えーと…。」
「誰と?」
俺の腕を抱きしめたままで、美久ちゃんが戸惑ってるのが分かる。でも、約束って…そうだよな?駿也とだよな?
「駿也と?」
もう一度確認する。美久ちゃんの顔がパッとこちらを向いた。
「えっ?駿也くん…?」
「駿也って誰?」
前から伸一の声も聞こえる。何だ?お前ら…本当にどうしたんだ?
「佐崎駿也っ!ったくクラスメイトだろっ!!本当にどうしたんだ!?」
俺の言葉に、2人とも呆然とした顔を見合わせた。暫し無言になる…。何だ?この間は…。
「ま、望。まずは着替えよ。もうすぐお昼だ。何か一緒に食べようぜ。」
伸一が労りの眼差しを向けて制服を差し出してきた。俺?オカシイのは俺なのか?
「あ、私、12時から頼まれてるんだった!!伸一くん、後お願いしてもいい?」
伸一が頷いたのを確認すると、美久ちゃんは俺の腕を離して脱兎のごとく保健室を飛び出して行った。
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『!!』
体育館に戻って、体操着の短パンをしまおうと鞄を開ける。そこには、「食べて」とペンで殴り書きされた欅葉祭のパンフレットと、駿也の物だとハッキリと分かる弁当箱が入っていた。
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