未来も過去も

もこ

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巌城という男

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ふと目が覚めた。…部屋は暗く、足元の壁に備え付けられている間接照明だけが家具の輪郭を映し出していた。

『コウイチは…?』
首を右に傾けると、床に座ったまま、俺の肩近くに頭を乗せて眠っているコウイチがいた。

『…迷惑かけたな。』
だいぶ体は楽になった。もう、ガタガタ震えない。大丈夫そうだ。俺は何気なくコウイチのシーツに落ちる前髪をかき上げていた。
目を閉じていてもイケメンだということがよくわかる。整えられた眉、筋の通った高い鼻、切れ長の目、左右に持ち上がったコウイチの唇…。

「!」
さっき、OSを口移しで飲ませてもらったことを思い出した。……顔が熱い。
『少し、眠れ…。』
あの低音ボイスは反則だろっ…。1人でどうしようもなく身悶えした。しばらくして、ふと我に返る…。

俺、コウイチに口付けされて嫌じゃなかった…むしろ…。


…俺、コウイチが…好きだ…


そう、自覚した途端、また耳まで熱くなった…。あ、あれ?俺って対象は女だよな?でも、これって…。

「どうした?目が覚めたか?…気持ち悪い?」
耳元で少し掠れたコウイチの声が聞こえた。顔を手で覆ってた俺は、コウイチが目を覚ましたことに気づかなかった。
「だ、だ、だ、大丈夫。」
俺の声は変に上ずった。コウイチの手が額に落ちてくる。そして首回りを触った。…鳥肌が立つ。しかし、昼間襲われた時のそれとは全然別物だった。

「だいぶ下がったな…。よし、着替えるぞ。汗をかいてる。」
コウイチはそう言って立ち上がると、枕元にある本棚の裏へ消えていった。

ガサゴソ音がする。着替えを探してるのか?目線を上に上げて本棚を見つめると、立体的なハートの形をした折り紙を見つけた。手を伸ばせば届く…。少し震える腕で大きく伸びをして取ってみると、ピンクの和紙でできたハートだった。三方が5センチ程度の小さなものだ。
『図体はデカイくせに器用な奴。』
クスッと笑いがこみ上げるのを抑えながら、元通りにハートを置いた。

「俺のお下がりだ。文句は言うな。」
そう言いながら、黒のスウェットの上下を持ってコウイチが現れた。
「言わないよ。ありがと。」
俺はそう言いながら起き上がろうとした。まだ力が入らない。コウイチが黙って背中に手を入れ助けてくれた。

「…着替えは…自分でしろ。」
コウイチはそう言うと、部屋を出て行った。微かに震える腕を駆使してゆっくりと服を脱ぐ。まだまだ水分が足りないのかも知れない。下も脱いでから、コウイチが用意してくれたスウェットに着替えた。

『大きいな。』
さすがと言うべきか、コウイチのお下がりのスウェットは大きかった。腕まくりをする。足は…別にいいか。歩き回る訳じゃないし。
脱いだ服を畳んでいると、コウイチが戻ってきた。

「水を飲むぞ。」
「うん、ありがとう。」
コウイチは本当に気が利く…。元気になったら、何かお礼をしなっきゃ。

コウイチに差し出されたペットボトルのOSは、今度は吐き気が訪れることなくたっぷりと飲めた。




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