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未来も過去も
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「そうそう、それそれ。」
巌城さんはそう言うと、自分の机に戻り封筒を掴んで持ってきた。
「7年前に飛んで、これを郵便ポストに入れてきて欲しいんだ。」
「「ポスト?」」
テーブルに置かれたのは、1通の手紙だった。宛名は…「巌城洸」…巌城さん、本人だ。
「何なんだ…これは?」
洸一が手に取って眺めながら巌城さんに聞いた。俺も知りたい…。
「しょうがないだろ。届いたんだから。」
そう言ってまたテーブルに乗せられたもう一つの封筒は、初めのものと同じものだったが、すでに封が開けられていて少し古くシワが寄っていた。
「これが届いた時にはビックリだったよ。自分からの手紙だしね。でもよくよく考えたら、今まで受け取ってた書類も自分からか…。洸一からも一度あったし、な?」
洸一はそれを聞いて、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。…何だ?洸一から…巌城さんへの手紙…?
「それはいい。」
洸一が慌ててる…アヤシイ…。
「洸一…さんからの手紙って?」
「いいから。」
「10年前。書類の中に入ってた。僕は入れてないのにね。小野寺君を泊めずに帰してくれって。それだけ。…取ってあるよ。」
洸一の制止も聞かずに言ってのけた巌城さんが席を立とうとしたが、洸一が身を乗り出して巌城さんのスーツを引っ張った。
「いいって言ってんだろっ。」
顔が真っ赤だ。10年前って…。洸一が17歳……高2…?
「!」
……なぜあの時、帰ったはずの洸一が笹元公園にいたのかが分かった。あの時俺はメガネを掛けてなかったのに…。それは知っていたから。何が起こるか…俺が巌城さん家を飛び出すことも。だから『ここにいたのか』だったんだ…。俺を心配して…。帰ってなかったんだ。俺を探してくれていたんだ。…慰めるために…。
洸一に対する愛おしさが溢れ出してきた。
どうしよう…。キスしたい。…この気持ち、どうしたら伝えられる?
「それじゃあ、この日付けを見てごらん。」
巌城さんの言葉でハッとして封筒の消印を覗き込むと、隣町からで前回の2日後になっていた。
「だから、やっぱり届けて貰わないと。前回飛んでもらった次の日にね。隣町まで行ってポストに入れてくる。それが今回の任務。」
「中身は何なんだ?」
訝しげに目を細める洸一に怯むことなく、
「見たい?」
とウインクした巌城さんは、封筒から手紙を取り出した。
『洸一は、無事に想いを遂げたようだ。』
たった1行。けれどもその意味するところは明白で…。顔を真っ赤にした俺たちを見て、満足そうに微笑んだ巌城さんが言葉を続けた。
「最後に小野寺君が訪ねて来た後、公園で君たちを見て、何となくそうじゃないかなとは思ったんだけど、この手紙が届いて心底安心したんだ。…だから、頼むね。」
巌城さんはそう言うと、自分の机に戻り封筒を掴んで持ってきた。
「7年前に飛んで、これを郵便ポストに入れてきて欲しいんだ。」
「「ポスト?」」
テーブルに置かれたのは、1通の手紙だった。宛名は…「巌城洸」…巌城さん、本人だ。
「何なんだ…これは?」
洸一が手に取って眺めながら巌城さんに聞いた。俺も知りたい…。
「しょうがないだろ。届いたんだから。」
そう言ってまたテーブルに乗せられたもう一つの封筒は、初めのものと同じものだったが、すでに封が開けられていて少し古くシワが寄っていた。
「これが届いた時にはビックリだったよ。自分からの手紙だしね。でもよくよく考えたら、今まで受け取ってた書類も自分からか…。洸一からも一度あったし、な?」
洸一はそれを聞いて、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。…何だ?洸一から…巌城さんへの手紙…?
「それはいい。」
洸一が慌ててる…アヤシイ…。
「洸一…さんからの手紙って?」
「いいから。」
「10年前。書類の中に入ってた。僕は入れてないのにね。小野寺君を泊めずに帰してくれって。それだけ。…取ってあるよ。」
洸一の制止も聞かずに言ってのけた巌城さんが席を立とうとしたが、洸一が身を乗り出して巌城さんのスーツを引っ張った。
「いいって言ってんだろっ。」
顔が真っ赤だ。10年前って…。洸一が17歳……高2…?
「!」
……なぜあの時、帰ったはずの洸一が笹元公園にいたのかが分かった。あの時俺はメガネを掛けてなかったのに…。それは知っていたから。何が起こるか…俺が巌城さん家を飛び出すことも。だから『ここにいたのか』だったんだ…。俺を心配して…。帰ってなかったんだ。俺を探してくれていたんだ。…慰めるために…。
洸一に対する愛おしさが溢れ出してきた。
どうしよう…。キスしたい。…この気持ち、どうしたら伝えられる?
「それじゃあ、この日付けを見てごらん。」
巌城さんの言葉でハッとして封筒の消印を覗き込むと、隣町からで前回の2日後になっていた。
「だから、やっぱり届けて貰わないと。前回飛んでもらった次の日にね。隣町まで行ってポストに入れてくる。それが今回の任務。」
「中身は何なんだ?」
訝しげに目を細める洸一に怯むことなく、
「見たい?」
とウインクした巌城さんは、封筒から手紙を取り出した。
『洸一は、無事に想いを遂げたようだ。』
たった1行。けれどもその意味するところは明白で…。顔を真っ赤にした俺たちを見て、満足そうに微笑んだ巌城さんが言葉を続けた。
「最後に小野寺君が訪ねて来た後、公園で君たちを見て、何となくそうじゃないかなとは思ったんだけど、この手紙が届いて心底安心したんだ。…だから、頼むね。」
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