ある時、ある場所で

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1回目〜4年前〜(悠)

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「おい、お前、真面目に聞いてるのか!?」
「生田、声がでかい。」
狭い会議室に生田先輩の怒号が飛ぶ。それを押さえるのは小野寺先輩だ。やれやれ…何で同い年の男2人を先輩呼ばわりしなくちゃならんのかね…。

「はいっ、聞いています。リスクが大きいから、過去の人たちとは極力話をしない、過去の自分にも会いに行かない…ですよね?」
俺の言葉に小野寺先輩が口を開いた。
「そう、過去の自分に出会っても、この宇宙がバランスを崩す訳じゃない。それは実証済みだ。でも、あの時は過去の自分が認識していなかった。もしも、未来の自分だと認識してしまったら…。まだまだ危険は冒せない。」

生田先輩と小野寺先輩は同じぐらいの背の高さで俺よりも低く、初めて会った時には髪型も肌の色も似ていて双子かと思った。でも、半年が経った今は全然違う。生田先輩は日に焼けて色が黒くなり、小野寺先輩は襟足が長くなった。小野寺先輩は笑顔がいい…俺好み。この2人が半年前から俺の教育係として、色々教えてくれていた。

「オーケーです。了解しました。」
昨年度の実体験ってやつだ。ま、過去の自分を探しに行くつもりもないし、問題ないな。
「お、お前なあ…。」
生田先輩が額に手をやる。…何で?ちゃんと返事しただろ?
「伊那村、その口調なんとかしろよ。返事は『分かりました。』だけでいい。」
小野寺先輩が笑顔で諭してくる。俺も笑顔で返してやった。
「分かりました!」

「じゃ、俺たちの最後の講義は終わり。1回目の仕事は10日後のはずだ。心の準備しとけよ。」
生田先輩からキッと睨みつけられた。
「はいっ!」
スクリーンを収納していた手を止めて、敬礼をしてみた。



「なあ伊那村、お前、部屋に誰も連れ込んでないよな?」
もう少しで会議室の片付けが終わる、という時になって、生田先輩が口を開いた。
「えっ?誰を?」
惚けて見せる。小野寺先輩は2つ隣に住んでるって知ってるけど、生田先輩は引っ越したはず…。あの空間で小野寺先輩と遭遇したのも1度だけだ。あの時は俺は1人だった。何故知ってるんだ?

「女とか…男とか…。連れ込んでるのか?」
「いいえ。今までに1度もありませんよ。連れ込みたい人はいますけど…。ねっ?小野寺先輩?」
会議用の長机を畳んでいた手を止めて小野寺先輩をみる。途端に頭を叩かれた。
「ば、バカ言うなっ!」
ちょっぴり脈あり…?顔が赤いぞ。

「お前、殺されるぞっ!」
生田先輩にも叩かれた。さすがに2度続けてはないだろ。…普通に痛い。
「ってえ…。つか誰に?」
頭をさすりながら聞いてみる。
「『誰にですか?』だ。」
小野寺先輩が再び叩くフリをしながら生田先輩を不思議そうに見る。小野寺先輩も知らないらしい…。

「たぶん、上のやつに…。」

人差し指を上に向けて呟いた生田先輩を見て、小野寺先輩の顔が真っ赤になった。




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