ある時、ある場所で

もこ

文字の大きさ
9 / 118
1回目〜4年前〜(悠)

1

しおりを挟む
「おい、お前、真面目に聞いてるのか!?」
「生田、声がでかい。」
狭い会議室に生田先輩の怒号が飛ぶ。それを押さえるのは小野寺先輩だ。やれやれ…何で同い年の男2人を先輩呼ばわりしなくちゃならんのかね…。

「はいっ、聞いています。リスクが大きいから、過去の人たちとは極力話をしない、過去の自分にも会いに行かない…ですよね?」
俺の言葉に小野寺先輩が口を開いた。
「そう、過去の自分に出会っても、この宇宙がバランスを崩す訳じゃない。それは実証済みだ。でも、あの時は過去の自分が認識していなかった。もしも、未来の自分だと認識してしまったら…。まだまだ危険は冒せない。」

生田先輩と小野寺先輩は同じぐらいの背の高さで俺よりも低く、初めて会った時には髪型も肌の色も似ていて双子かと思った。でも、半年が経った今は全然違う。生田先輩は日に焼けて色が黒くなり、小野寺先輩は襟足が長くなった。小野寺先輩は笑顔がいい…俺好み。この2人が半年前から俺の教育係として、色々教えてくれていた。

「オーケーです。了解しました。」
昨年度の実体験ってやつだ。ま、過去の自分を探しに行くつもりもないし、問題ないな。
「お、お前なあ…。」
生田先輩が額に手をやる。…何で?ちゃんと返事しただろ?
「伊那村、その口調なんとかしろよ。返事は『分かりました。』だけでいい。」
小野寺先輩が笑顔で諭してくる。俺も笑顔で返してやった。
「分かりました!」

「じゃ、俺たちの最後の講義は終わり。1回目の仕事は10日後のはずだ。心の準備しとけよ。」
生田先輩からキッと睨みつけられた。
「はいっ!」
スクリーンを収納していた手を止めて、敬礼をしてみた。



「なあ伊那村、お前、部屋に誰も連れ込んでないよな?」
もう少しで会議室の片付けが終わる、という時になって、生田先輩が口を開いた。
「えっ?誰を?」
惚けて見せる。小野寺先輩は2つ隣に住んでるって知ってるけど、生田先輩は引っ越したはず…。あの空間で小野寺先輩と遭遇したのも1度だけだ。あの時は俺は1人だった。何故知ってるんだ?

「女とか…男とか…。連れ込んでるのか?」
「いいえ。今までに1度もありませんよ。連れ込みたい人はいますけど…。ねっ?小野寺先輩?」
会議用の長机を畳んでいた手を止めて小野寺先輩をみる。途端に頭を叩かれた。
「ば、バカ言うなっ!」
ちょっぴり脈あり…?顔が赤いぞ。

「お前、殺されるぞっ!」
生田先輩にも叩かれた。さすがに2度続けてはないだろ。…普通に痛い。
「ってえ…。つか誰に?」
頭をさすりながら聞いてみる。
「『誰にですか?』だ。」
小野寺先輩が再び叩くフリをしながら生田先輩を不思議そうに見る。小野寺先輩も知らないらしい…。

「たぶん、上のやつに…。」

人差し指を上に向けて呟いた生田先輩を見て、小野寺先輩の顔が真っ赤になった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...