ある時、ある場所で

もこ

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3回目〜5年前〜(悠)

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「あれ?7年前では…?」
「いや、5年前だ。7年前の件はケリがついた。」
俺は「過去の部屋」の洸一さんの隣で、パソコンの前に座っていた。1週間前に、杉崎課長から今度の任務は7年前と聞いていたが、どうやら変更になったらしい。

「今度はどこですか?」
「都内まで行ってもらう。」
画面に映る顔写真や住所を確認する。今回は女だ…杉田良子。現在生きていれば40歳か…5年前は35。住所を見てふと気づく。
「あれ?ここ…俺知ってますよ。多分。俺の住んでたとこの近くだ。」

「5年前か?」
1、2、3…時間を逆算する。大学1年…間違いない。
「ええ。大学が都内でここの近くにアパート借りてました。」

「じゃあ、自分に出会わないように充分注意しろ。何かあってからでは遅い。」
「分かりました。」
洸一さんが席を立つのを見て、俺も立ち上がる。後ろのテーブルに今回も荷物が置いてあった。

「今日は黒髪か。お前、全然別人に見えるな。似合ってる。」
「ありがとうございます。前回の髪の色の方が、地毛に近いんですけど。今回は真面目なサラリーマン風で。」
泊まるのを前提にして、今回はカバンに下着と靴下も入れてきた。スーツは持っていたもの。ワイシャツとネクタイだけ新調した。この髪の色に合うように…。

『今度は石川裕次郎か…。石川裕次郎、裕次郎、裕次郎…石川。どっかで聞いた名だな?昔の俳優でいなかったか?』
身分証と運転免許証を見て、名前を確認する。目の前でスマホをチェックしていた洸一さんが、こちらに差し出したと同時に俺の後ろの壁を見た。

「?」
俺も後ろを振り返る。管理人室の入り口の壁が閉じるところで、紺色のバスローブを着た人の後ろ姿が、慌てた様子で奥に引っこむところだった。
『あれは……まさか…小野寺さん!?』
間違いない。今日は金曜日、小野寺さんが休みの日だ。あれ?でも…洸一さんは結婚しているんじゃ…。

……そうか。

洸一さんに指輪を送ったのは小野寺さんだ。そしてあの時指に嵌めてた小野寺さんの指輪は…。2人は友人ではなく、恋人どうし。『たぶん、上のやつに…。』いつだったか、生田さんが言っていた人は、洸一さんだったんだ…。


「洸一さん、今幸せっスか?」
洸一さんの方に向き直って聞いてみた。思わずニヤける。
「ああ…かなりな。」
小野寺さんがいるであろう壁の方を向いたままで、洸一さんが呟いた。
「いいですね。羨ましいです。」
俺の言葉で、洸一さんがギロッと睨んできた。
「生憎、奏は俺のものだ。他を当たれ。」
オゥ…迫力ある…。
「はははっ。わかってますって。他で探します。」



『奏、か…。いいなあ…俺もあのくらい誰かを好きになれたら…。』
過去への扉をくぐる。脳裏にサッとあの瞳がよぎる…その瞳の主は茶色い頭をしていた…。

駐車場の片隅にある物置小屋の扉を開けた。5年と2ヶ月前の10月の空気は、まだ暖かい。



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