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「あ、俺? 19歳と4か月。でも酒なら飲んだことありますよ。」
「……。」
マスターが戸惑ってるのが分かる。基本この店には二十歳になっていない子は入れない。マスターがどんな風に帰ってもらうか考えてる、そんな気がした。
「裕一郎さんと呼んでも? すみません。うちは未成年者はお断りしていて。」
「大丈夫。飲んだなんて言いません。ちょっと先輩に聞いて、来てみただけですから。」
『帰れよっ! マスターに迷惑かけるなっ。』
心の中で毒づきながら、マスターがなんて言うのか次を待つ。マスターの穏やかな声が聞こえた。
「お酒は出しません。私のポリシーに反しますから。それに法律にも触れますしね。後8か月したらお越しくださいね。お待ちしています。」
「ええ? 帰れって言うこと? 水でいいので出してもらえませんか?」
図々しい奴。二十歳になったら来ればいいのに……。いや、ダメだ。僕の隠れ家が脅かされる。
「10万円になりますが、いいですか?」
「えっ? 10万円? そんな。ここの店に来れば、僕の好みの子に会えるって言われたんスよ。出会いを求めてるんです。酒は飲まなくてもいいんで。」
僕は、生田くんの理不尽な強引さに、どんどん腹が立ってきていた。
「だから、二十歳になったら来いって言ってんだろっ!」
思わず顔を上げて言ってしまった。
『!!』
2人がびっくりした顔をして僕を見つめていた。
「アキラさん、起きちゃいましたか。」
「アキラ……?」
「ああ。」
マズイ。髪型を変えていても、生田くんとは顔見知りだ。声を出来るだけ低く出した。生田くんから顔を背けてグラスに口をつける。グラスは空になっていた。
「マスター、帰る。」
お代はまた次でいいだろう。マスターも僕を信用してくれてる。席を立って、生田くんの方を見ないようにしてドアの方へ向かった。
「待って!」
後ろから声が聞こえたけれど、待つやつなんかいない。外に出ると僕は一気に走り出した。
『帰ろう。帰るんだ。とにかく帰ろう。』
早く安全な僕の部屋へ帰りたい。それしか頭になかった。
「はぁ、はあ、はぁ……。」
駅前まで来た。後ろを振り返っても、追いかけてくる人の姿はなかった。新調したばかりの夏用スーツが汗で台無しだ。シミになったら叶わない。明日クリーニングに出さないと。
「はぁっ、なんか飲も。」
噴水の涼しげな音を聞きながら、水分補給をしようと、僕は近くにある自動販売機に歩いて行って小銭を入れた。スポーツドリンクがいい。ボタンを押すと突然、後ろから手が重ねられた。
「捕まえた。」
『!!』
僕が買ったスポーツドリンクがガタンと下に落ちた。
後ろを振り向かなくとも分かる。星形のアザを右手に持つ生田くんが後ろに立っている。
「……。」
マスターが戸惑ってるのが分かる。基本この店には二十歳になっていない子は入れない。マスターがどんな風に帰ってもらうか考えてる、そんな気がした。
「裕一郎さんと呼んでも? すみません。うちは未成年者はお断りしていて。」
「大丈夫。飲んだなんて言いません。ちょっと先輩に聞いて、来てみただけですから。」
『帰れよっ! マスターに迷惑かけるなっ。』
心の中で毒づきながら、マスターがなんて言うのか次を待つ。マスターの穏やかな声が聞こえた。
「お酒は出しません。私のポリシーに反しますから。それに法律にも触れますしね。後8か月したらお越しくださいね。お待ちしています。」
「ええ? 帰れって言うこと? 水でいいので出してもらえませんか?」
図々しい奴。二十歳になったら来ればいいのに……。いや、ダメだ。僕の隠れ家が脅かされる。
「10万円になりますが、いいですか?」
「えっ? 10万円? そんな。ここの店に来れば、僕の好みの子に会えるって言われたんスよ。出会いを求めてるんです。酒は飲まなくてもいいんで。」
僕は、生田くんの理不尽な強引さに、どんどん腹が立ってきていた。
「だから、二十歳になったら来いって言ってんだろっ!」
思わず顔を上げて言ってしまった。
『!!』
2人がびっくりした顔をして僕を見つめていた。
「アキラさん、起きちゃいましたか。」
「アキラ……?」
「ああ。」
マズイ。髪型を変えていても、生田くんとは顔見知りだ。声を出来るだけ低く出した。生田くんから顔を背けてグラスに口をつける。グラスは空になっていた。
「マスター、帰る。」
お代はまた次でいいだろう。マスターも僕を信用してくれてる。席を立って、生田くんの方を見ないようにしてドアの方へ向かった。
「待って!」
後ろから声が聞こえたけれど、待つやつなんかいない。外に出ると僕は一気に走り出した。
『帰ろう。帰るんだ。とにかく帰ろう。』
早く安全な僕の部屋へ帰りたい。それしか頭になかった。
「はぁ、はあ、はぁ……。」
駅前まで来た。後ろを振り返っても、追いかけてくる人の姿はなかった。新調したばかりの夏用スーツが汗で台無しだ。シミになったら叶わない。明日クリーニングに出さないと。
「はぁっ、なんか飲も。」
噴水の涼しげな音を聞きながら、水分補給をしようと、僕は近くにある自動販売機に歩いて行って小銭を入れた。スポーツドリンクがいい。ボタンを押すと突然、後ろから手が重ねられた。
「捕まえた。」
『!!』
僕が買ったスポーツドリンクがガタンと下に落ちた。
後ろを振り向かなくとも分かる。星形のアザを右手に持つ生田くんが後ろに立っている。
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