無添加ラブ

もこ

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本屋の外回り

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朝起きて、シャワーを浴びてキッチンに回り込む。今日の朝食は昨夜の残りの煮物と納豆。冷凍庫からご飯を取り出して電子レンジに入れ、明るい光に照らされるラップを見ていた。あれからまた半年が過ぎ、僕は25歳の春を迎えようとしていた。「J」にはあれから行ってない。最後に飲んだ料金を踏み倒した形になったけど、行くつもりはなかった。もう、どうでも良かった。

『陽介、ごはんラップかけといたから、チンして食べて。行ってくるわ。』
ラップを見ていると、昔の記憶が蘇る。厚い化粧、強い香水。いつも出かける時にはタイトなミニスカートの派手なスーツを着ていた。

『僕、いつまであの人が事務職だと思ってたんだろ。』
母親は、いわゆるホステスとして働いていた。収入は結構あったはずなのに、僕が高校まで過ごしていたのは六畳二間のボロいアパートだった。

『ま、他にマンション持ってたなんて言っても驚かないけどな。』
朝方か、僕が学校に行っている間に帰ってきて、夕方になるとチャーハンを作って置いていく母親。朝はいつもパン。たぶん、あの人にとっては僕がいない方が良かったんだ。

『僕は出て行く。もう母親とは思わない。僕がどこで何をしてようとも構わないで。』
『……そう。』
最後までタバコをふかしてこちらを見てくれなかった。……見てほしかった? ……うん、今になってみれば見てほしかったのかもしれない。そして引き止められたかったのかも。

チン

『7年も経ったっていうのに、今さらだよな。』
あれから僕は、使い勝手の良い、よくつくラップが苦手になった。僕が愛用するのは無添加ラップ。つきが悪くて何が無添加なのかは分からないけど、こちらの方が環境にも優しいっていうし、何しろコスパがいい。僕は程よく温まったご飯を取り出して、茶碗に移し替えた。




「小寺、今日回る時に、モールにこれ持って行って。昨日の電話で問い合わせがあったやつ。」
「はい、分かりました。」
経理を担当している山根さんから声をかけられた。池谷さんが修行の旅に出てから、僕と清水さんが外回りの担当になった。清水さんは学校関係で、僕はその他全般。今日は隣町の結構大きな会社に20冊の本を届ける。新人研修で配る本なのだとか。この時期はこの手の注文が結構多くて、本屋にとってはありがたいお客様だ。

納品請求の伝票を受け取って、ダンボールの上に乗せる。
「よっこら……。」
しょ、と言いかけて辞めた。生田くんは今日はいないはず……。大丈夫、大丈夫だ、そう思い直してダンボールを持ち上げる。

「よっ!」
「小寺、力ついたな。」
山根さんが持ち上げたばかりのダンボールの上に、ビニールに包まれた本を一冊ポン、と置いた。




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