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本屋の外回り
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「こんにちは。太田書店です。」
「ああ小寺さん、ありがとう。」
ビニール袋に包まれた本を一冊、「OHTA」の店長の須賀さんに手渡す。この人は、しおりんの遠い親戚って聞いたことがある。40代のオジサン。最近、40代の人が結構な年寄りに見えてる。この人も……この目尻の皺がなければもっとイケてるだろうに。
「午後一番に取りにくると言ってたから、本当に助かったよ。」
「いえ、ちょうどこちらにあって良かったです。」
今は午前10時半。このショッピングモールも当然開店しているけど、平日の午前中は本屋にまで用事があるお客さんは少ないらしく、閑散としていた。
生田君と極力合わないように気を遣う。外回りになってすぐに、この須賀さんにそれとなく聞き出し、バイトの子は土日以外は夕方からしか入れてない事を聞き出していた。今日も生田くんは当然いない。
「それでは、またよろしくお願いします。」
納品書も手渡して、帰ろうとした時、須賀さんに声をかけられた。
「そちらではバイトの子は間に合ってますか?」
バイトの子という言葉にギクッと反応する。
「ええ、人手が足りないとは聞いたことがありませんが。」
嘘……こちらは店の規模が大きいこともあって、バイトを多く雇っている。入れ替わりも多いから大変だと山根さんが言ってた。僕の時みたいに長く勤めてくれる子が欲しいって。
「そっか……いや、そっちの方が家に近いとか何とかで、こちらを辞めてもいいかなんて言ってきた子がいてね。」
生田くん……? 店長からは一言もなかったけれど、勝手に想像して口が動いた。
「こっちはちょっと難しいかもしれないですね。上に聞いてみないと分からないですが……。では失礼します。」
言い捨てて、「OHTA」を後にする。後でそんな事なかっただろうと苦情がきても構わない。バックヤードから一階に降りて、もはや僕の愛車になりつつある会社の白のミニバンまで走って行った。
赤信号で止まり、横断歩道を渡る人たちを眺める。男の人も女の人も、みんな充実した顔をしている。僕は……何だか空虚だ。
「久しぶりに『J』にでも行ってみようかな。」
信号が青に変わる。僕は呟いて、静かにアクセルを踏み込んだ。
『準備するか。』
1日の勤務を終えて、自分のマンションに帰り浴室でシャワーを浴びる。「J」に行く前の儀式。誰かと夜を共にするとはいかない事が殆どだけど、いつ初恋のあの人と出会ってもいいように……。
「う……ン。」
『じゃ、生田くん好き、って言って。』
耳の中に何ヶ月か前の、あの時の声が蘇る。あんなに身体が満たされたのは初めてだ。でも……。
心が満たされない。好きなんかじゃない……。ただ、身体の相性が良かっただけ……。
『俺も好き。……アキラが好きだ!』
「あっ……ン。」
僕はアキラじゃないのに……あの声が忘れられない……。
「ああ小寺さん、ありがとう。」
ビニール袋に包まれた本を一冊、「OHTA」の店長の須賀さんに手渡す。この人は、しおりんの遠い親戚って聞いたことがある。40代のオジサン。最近、40代の人が結構な年寄りに見えてる。この人も……この目尻の皺がなければもっとイケてるだろうに。
「午後一番に取りにくると言ってたから、本当に助かったよ。」
「いえ、ちょうどこちらにあって良かったです。」
今は午前10時半。このショッピングモールも当然開店しているけど、平日の午前中は本屋にまで用事があるお客さんは少ないらしく、閑散としていた。
生田君と極力合わないように気を遣う。外回りになってすぐに、この須賀さんにそれとなく聞き出し、バイトの子は土日以外は夕方からしか入れてない事を聞き出していた。今日も生田くんは当然いない。
「それでは、またよろしくお願いします。」
納品書も手渡して、帰ろうとした時、須賀さんに声をかけられた。
「そちらではバイトの子は間に合ってますか?」
バイトの子という言葉にギクッと反応する。
「ええ、人手が足りないとは聞いたことがありませんが。」
嘘……こちらは店の規模が大きいこともあって、バイトを多く雇っている。入れ替わりも多いから大変だと山根さんが言ってた。僕の時みたいに長く勤めてくれる子が欲しいって。
「そっか……いや、そっちの方が家に近いとか何とかで、こちらを辞めてもいいかなんて言ってきた子がいてね。」
生田くん……? 店長からは一言もなかったけれど、勝手に想像して口が動いた。
「こっちはちょっと難しいかもしれないですね。上に聞いてみないと分からないですが……。では失礼します。」
言い捨てて、「OHTA」を後にする。後でそんな事なかっただろうと苦情がきても構わない。バックヤードから一階に降りて、もはや僕の愛車になりつつある会社の白のミニバンまで走って行った。
赤信号で止まり、横断歩道を渡る人たちを眺める。男の人も女の人も、みんな充実した顔をしている。僕は……何だか空虚だ。
「久しぶりに『J』にでも行ってみようかな。」
信号が青に変わる。僕は呟いて、静かにアクセルを踏み込んだ。
『準備するか。』
1日の勤務を終えて、自分のマンションに帰り浴室でシャワーを浴びる。「J」に行く前の儀式。誰かと夜を共にするとはいかない事が殆どだけど、いつ初恋のあの人と出会ってもいいように……。
「う……ン。」
『じゃ、生田くん好き、って言って。』
耳の中に何ヶ月か前の、あの時の声が蘇る。あんなに身体が満たされたのは初めてだ。でも……。
心が満たされない。好きなんかじゃない……。ただ、身体の相性が良かっただけ……。
『俺も好き。……アキラが好きだ!』
「あっ……ン。」
僕はアキラじゃないのに……あの声が忘れられない……。
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