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「アキラさん。」
体がビクンと反応する。「J」に行こうと、マンションの外の自動ドアを通り抜けた途端に声をかけられた。
「い、い、生田くん。」
外は真っ暗になっていたが、声で分かった。目の前を見ると、電柱の灯りの下で、裕一郎が佇んでいた。
「ど、どうして……ここ。」
「ん? 前にね、後つけちゃった。ごめん、ストーカーっぽくて。アキラさんは何号室なの?」
体が震えてくるのが分かった。恐怖……。裕一郎がストーカーかもしれないことよりも、僕の気持ちがどうにかなっちゃうんじゃないか……そんな恐怖が僕を襲った。
「あ、待ってっ!」
僕は踵を返すと入り口のマンションのロックを解除して、中に逃げ込んだ。
郵便受けが並ぶスペースの隣にある階段を駆け上る。僕の部屋は2階だ。すぐに部屋に入れる。
「待ってってば!」
部屋の鍵を鍵穴に入れた途端に、裕一郎に腕を掴まれた。
「離せっ!」
思わず大声が出た。何でこんな事になってる? どうして?
「ね、小寺さんだろ?」
『! バレた……!』
裕一郎の言葉に、絶望で目の前が真っ暗になっていった。
「違うよ、僕は小寺なんかじゃない。ひ、人違いだ。」
何とかこの状況から脱したい……。その一心で口にしていた。
「嘘だ。205号室の郵便受けは『KODERA』になってた。前回ここに来た時に、絶対に小寺さんだと思ったんだ。」
「違うっ!」
何が違うというのか考えずに、辻褄が合わないことなど気がつきもせずに、すぐに否定した。
カチャ
小さな音に首を回す。203号室の女の人が、ドアを少しだけ開いてこちらを覗いていた。
「か、帰って。二度とここには来ないで。」
裕一郎の手を振り払い、出来るだけ平常心になろうとして、小さな声で話しかけながら、鍵穴に突き刺したままの鍵を回した。
ドアを開けて中に入る。もう、裕一郎には何も言うことはない。
ドアを閉めようとして……閉まらない。下を見ると、裕一郎の足が挟まっていた。
「生田くん、帰って。」
「ヤダ。」
「僕はもう何も話すことはない。」
「俺はある。」
「ないったらっ!」
ドアを力一杯引く。何としてでも帰ってもらう。
「イテ、イテテテっ!」
裕一郎の大声に、咄嗟に力を緩めた。
「ほら、捕まえた。」
瞬時にドアを開けて入り込んだ裕一郎が、僕の背中に腕を回して抱きしめてきた。
「俺、初めて小寺さんに会った時から気になってたんだよね。その大きな目に見つめられてさ。髪型なんて変えても顔を変えなきゃ無理だよ。」
「……。」
ぼ、僕が好きなのは、あのオジサンだ。裕一郎じゃない。
「ね、しよ?」
「……。」
できるはずがない。一時的に満たされても虚しいだけ。僕はあのオジサンに会えるのを待っているんだ。
「ね、小寺さん。」
あの人と同じようなアザをもつ裕一郎……。目の下のホクロ……本当にそっくりだ。いや、僕がそう思いたいだけ……。
「…………。」
俺は、何かを諦めて目を瞑った。裕一郎のキスを受け止める。優しいキスを受け止めながら、自分は何を諦めたんだろう……と考えていた。
体がビクンと反応する。「J」に行こうと、マンションの外の自動ドアを通り抜けた途端に声をかけられた。
「い、い、生田くん。」
外は真っ暗になっていたが、声で分かった。目の前を見ると、電柱の灯りの下で、裕一郎が佇んでいた。
「ど、どうして……ここ。」
「ん? 前にね、後つけちゃった。ごめん、ストーカーっぽくて。アキラさんは何号室なの?」
体が震えてくるのが分かった。恐怖……。裕一郎がストーカーかもしれないことよりも、僕の気持ちがどうにかなっちゃうんじゃないか……そんな恐怖が僕を襲った。
「あ、待ってっ!」
僕は踵を返すと入り口のマンションのロックを解除して、中に逃げ込んだ。
郵便受けが並ぶスペースの隣にある階段を駆け上る。僕の部屋は2階だ。すぐに部屋に入れる。
「待ってってば!」
部屋の鍵を鍵穴に入れた途端に、裕一郎に腕を掴まれた。
「離せっ!」
思わず大声が出た。何でこんな事になってる? どうして?
「ね、小寺さんだろ?」
『! バレた……!』
裕一郎の言葉に、絶望で目の前が真っ暗になっていった。
「違うよ、僕は小寺なんかじゃない。ひ、人違いだ。」
何とかこの状況から脱したい……。その一心で口にしていた。
「嘘だ。205号室の郵便受けは『KODERA』になってた。前回ここに来た時に、絶対に小寺さんだと思ったんだ。」
「違うっ!」
何が違うというのか考えずに、辻褄が合わないことなど気がつきもせずに、すぐに否定した。
カチャ
小さな音に首を回す。203号室の女の人が、ドアを少しだけ開いてこちらを覗いていた。
「か、帰って。二度とここには来ないで。」
裕一郎の手を振り払い、出来るだけ平常心になろうとして、小さな声で話しかけながら、鍵穴に突き刺したままの鍵を回した。
ドアを開けて中に入る。もう、裕一郎には何も言うことはない。
ドアを閉めようとして……閉まらない。下を見ると、裕一郎の足が挟まっていた。
「生田くん、帰って。」
「ヤダ。」
「僕はもう何も話すことはない。」
「俺はある。」
「ないったらっ!」
ドアを力一杯引く。何としてでも帰ってもらう。
「イテ、イテテテっ!」
裕一郎の大声に、咄嗟に力を緩めた。
「ほら、捕まえた。」
瞬時にドアを開けて入り込んだ裕一郎が、僕の背中に腕を回して抱きしめてきた。
「俺、初めて小寺さんに会った時から気になってたんだよね。その大きな目に見つめられてさ。髪型なんて変えても顔を変えなきゃ無理だよ。」
「……。」
ぼ、僕が好きなのは、あのオジサンだ。裕一郎じゃない。
「ね、しよ?」
「……。」
できるはずがない。一時的に満たされても虚しいだけ。僕はあのオジサンに会えるのを待っているんだ。
「ね、小寺さん。」
あの人と同じようなアザをもつ裕一郎……。目の下のホクロ……本当にそっくりだ。いや、僕がそう思いたいだけ……。
「…………。」
俺は、何かを諦めて目を瞑った。裕一郎のキスを受け止める。優しいキスを受け止めながら、自分は何を諦めたんだろう……と考えていた。
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