無添加ラブ

もこ

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「おはようございます。太田書店です。」
「あ、いつもすみません。ありがとうございます。」
モールの『OHTA』に注文の品を届ける。週に2、3回はこうして来なくてはならない。来る時はこうして午前中に回るから、生田くんに会うはずはない。でも、もう生田くんと会おうが会うまいがどうでもよくなっている自分がいた。

もう……僕たちは終わった。
僕の正体がバレると同時に終わったんだ。
いや、始まってもいなかっただろ?

ホッとするのと同時に、心の中は暗い穴が空いたようだった。まだ客が少ない店内の様子を見回す。
「こちらでは、参考書の類はどのくらい出てます?」

「中、高でそれぞれ200はいきましたかねぇ。やはり専門のコーナーを特設で作って正解でした。でも、倉庫を持たない分ストックが切れるとキツくて……いつもすみません。」
店長の須賀さんが申し訳なさそうに言ってきた。週に何度かこうして不足分を持ってきてもらうのに気が引けてるのだろう。

「いえ……。」
4月になり、学校は新学期を迎えて参考書や、教科書に沿った問題集など多く売れるようになった。うちは教科書も扱っているから、もちろん参考書類は豊富に揃えているけど、「OHTA」でも入り口に近い所にコーナーを設けたらどうかと提案したのは僕だ。おかげで売り上げが伸びているらしい。

ま、どうでもいい。

「毎日、これらのコーナーを整理してくれるのはバイトの生田くんなんですけど、」
須賀さんの言葉に肩が揺れた。

「最近、突然休まれちゃうことが多くて困っているんですよ。」
大学生になって遊びたい盛りなんでしょうね。須賀さんの言葉が頭の中を駆け抜けた。

生田くんは手慣れていた。男女に関わらず、経験があるのは身に沁みて分かった。……けど、僕にはもう関係ない。

「そうなんですか。」
「来れば、しっかりと仕事をこなしてくれるいい奴なんですが。」

「そうですか……。」
いくら生田くんの事を聞いても、心に響かない。僕は完全に忘れる事ができた。あの、2回の生田くんとの夜を……僕は忘れる事ができたんだ。

「では。」
これで今日の外回りは終了。本社に戻って……今日はどこのコーナーの整理を仰せつかるかな。戻って仕事に集中して、終わったら……久しぶりに「J」にでも行くかな。

モールのバックヤードから出て駐車場に向かう。出入り業者が自由に駐車してもよいスペース。ここから、裏の公園の桜の木がよく見える。もう散り始めている桜の木には若い葉も出始めていた。

「今年も花見しなかったなあ。」
会社で花見をしようと計画されても、いつも夜の勤務と重なって行ったことがなかった。今年は初めて勤務がなかったけど、自分から辞退した。

「誰かと一緒にお花見したいなぁ。」
もう忘れかけてるオジサンを思い浮かべる。微笑んだ顔……けれども、何故かその顔は生田くんに重なって見えた。




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