俺は時を超える。この状況を変えるために…いや、3年前の君に会うために……。~追憶〜

もこ

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線が触れる

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10月になってさすがに半袖でいるのには肌寒くなり、長袖のシャツを着ることが多くなった。俺は、あれから何故か、校内で望の姿を見かけることが多くなった。時には男連中と、時には女も交えて大勢で、時には彼女……あの美久と呼ばれていた女と2人で。

遠くにいても何故か分かってしまう。そして分かってしまうと、どうしても望から目を離すことができない。
『俺はどうしたんだ。何だか調子が狂ってる。』
今も、望は男に肩を組まれて遠くを歩いている。あれは……多分前に学食で一緒にいた男だ。望の目の前に座っていた……。

「ね、飲まないの?」
目の前に座る奈々美の声で、はっと我に返り視線を前に向けた。校内にあるコーヒーのチェーン店から、ブレンドを買って2人で外のテーブルに座っていた。

「いや、飲む。」
コーヒーに口をつけ、目の前の女を見る。夏休み前から声をかけられることが多くなった1つ年上の3年生。女にしては背が高く、今日は紺のロングスカートに白のブラウス、そしてロングカーディガンを合わせている。2週間に1度は遭遇して、こうしてお茶に誘われることが多くなった。

「駿の髪の毛って綺麗よねー。染めてるの?」
「いや、染めてない。」
俺は母親の髪の色と髪質をそっくり引き継ぎ、栗色の髪をしていた。こめかみの所が特に茶色でメッシュを入れてるように見えるのも遺伝だった。猫っ毛で短髪にするととんでもなく似合わない。高校からは、少しだけ長めの髪型にすることが多くなった。

「いいなあその髪の毛、サラサラ。そういえば、駿って彼女とどうなったの?」
「だいぶ前から音信不通。」
夏休みが明けても、一切校内で見かけない。学部が違うからか、アイツが避けてるからか……。

『後者だろうな。』
別に自然消滅したからと言って、校内で会っても気まずいなんて事はない。会えば挨拶ぐらいするだろう。ま、会いたいと思っているわけではないが。

「ふーん。じゃあさ、私と付き合わない?」
厚く塗った唇にピンクに塗った人差し指の爪をつけながら、奈々美がニッコリ笑ってきた。
「お前……彼氏は?」

「別れたー!だいぶ前よ?だから駿のこと誘ってたんだし。」
春ごろには、いつも腕を組んで歩いていた彼氏がいたはず。でも校内で遭遇すると、いつも視線をよこして、そのうちに話をするようになっていた。

「ま、考えとく。」
今は誰とも付き合うという気分ではない。が、コイツのサバサバした性格は悪くない。

「考えて考えて。また連絡するから。」
カールさせた長い髪を揺らして、奈々美が笑顔を見せた。




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