俺は時を超える。この状況を変えるために…いや、3年前の君に会うために……。~追憶〜

もこ

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その線はもう見たくない

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3月になってバイトのシフトを増やした。5時の開店準備から10時まで、週6日。奈々美とはあの後、結構頻繁に連絡を取るようになり、学校の外で会うことも増えていった。ま、こちらから連絡はしないのだが……。学校で望と会うことがなくなった分、少しだけ俺の気持ちも望から離れていっているような……そんな気がした。

「……何月から?」
バイトへ行く準備を整えてリビングへ向かうと、母親の言葉がきこえた。今日は日曜日で両親は仕事が休みだ。雄也は勤務。親父たちが勤めている会社は年中無休らしい。

「たぶん夏だな。幸也も行く事になってる。雄也は……どうだろう、もしかしたら駆り出されるかもしれない。」
親父の呟きが聞こえる。まだ俺には気づいていない。
「大丈夫なの?」
母親の声はどこか心配そうだ。

「どうしたの?」
俺の声に両親が肩を揺らしてこちらを見た。
「ああ、駿也か。仕事の話だ。大丈夫。何の心配もいらない。」
最後の言葉は母親の方を向いて言い聞かせているように感じた。

「そう、じゃ行ってくる。」
「おう。」
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
深刻そうな今の会話が気にはなったが、知ったところで俺にできる事はないはず。いつもの革ジャンを引っ掛けて外に出るべく玄関へ向かった。

駅の方へ住宅街を歩いていると、スマホが震えた。
『奈々美か?』
最近メールをよこすのは奈々美以外にない。3日に1度は何でもないことを乗せてメールをよこす。

『ミニスカ買ったー!!』
開いて見ればいつも通り。なんて事はないメール。
『良かったな』
一言打ってスマホを閉じる。途端にまた震えた。
『そこは、《今度見てみたい》でしょっ!?』
『今度見てみたい』
おざなりにメールを打って笑いが込み上げる。やはりコイツは面白い奴だ。

奈々美の住んでいるアパートは駅の近くにあるらしい。最近はこの辺りで会うことが多かった。駅前の居酒屋でバイトをしていると言ったら、今度夕飯を食べに行くと言っていた。大衆居酒屋。テーブル席だけでカウンターはないが、1人で来るのかどうか……。



10時になってその日の勤務を終え、バスに乗るために駅前のロータリーに足を運んだ。歩いて帰れない距離ではないが、バイトで疲れた後は、いつもバスを使っていた。バスなら20分もあれば家に帰れる。

『?』
駅前の横断歩道を渡ろうと、信号待ちをしていたが、ふと人の気配を感じて後ろを振り向いた。

『!』
あれは……望?細く薄暗い路地裏で、若い男女が抱き合い口づけを交わしていた。女の顔は見えないが、あの黒いジャンバーの後ろ姿は……望だ。間違いない。女は分からないいが……たぶん彼女。俺は身を翻すと、今来た道を引き返すように早足でその場を離れた。





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