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この状況を変えるために
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「駿也、入ってもいいか?」
部屋をノックする音とともに、幸也の声が聞こえた。
「ああ。」
机の前の椅子を最大限に後ろにしならせて本を読んでいた俺は体を起こした。椅子がギィーと嫌な音を立てた。
「何?どうかした?」
「いや、ちょっと元気かなと思って。」
そう言いながら入ってきた長兄はベッドに腰掛けた。俺も椅子を回して幸也に向かい合う。
俺と幸也は歳は離れているが、結構似ていると親戚中に言われる。髪も茶色で幸也もこめかみに一際明るいメッシュが入ってる。だが、俺よりも幸也は一回り小さい。身長も180に届かなかったはず。
「大学は楽しいか?」
徐に話しかけられて、何で言ったらいいか分からなかった。楽しいか楽しくないか……そんな話ではないような気がする。
「微妙。」
「そっか。……何か悩み抱えてる?」
「……。」
俺は答えられなかった。悩み……か?俺は何を悩んでる?幸也は何か感じとっているのだろうか?
「女関係か?母さんが最近バイトの帰りが遅いって言ってたぞ?前に無断で外泊してきたって。」
「違う。」
フッと笑いが込み上げた。もう既に成人してるんだ。あの人にアレコレ言われたくない。……実家にいるというのも……考えものだな。
「そう。俺も家を離れてから3年過ぎたろ?自由にやらせてもらって嬉しい反面、ちょっと罪悪感があるっていうか……。ま、何か言いたいことがあったらいつでも言え。聞くことぐらいはしてやるよ。」
幸也の言葉を聞いて、突然ある事を聞いてみたくなった。
「幸也はいつ自覚した?」
「ん?」
衝動的に聞いてしまったが、不躾な質問だったかもしれない。言った途端に後悔した。
「いや、いい。」
「何だ?好きな奴でもいるのか?……男?」
「……ああ。」
真面目な顔で聞いてきた幸也に、言うつもりがなかった望のことを話していた。去年の夏に出会い、会うたびに気になっていたこと。望には彼女がいること。諦めなければと思えば思うほど、頭から離れないこと……。
「諦められなくてどうにかしたいなら、告るしかないだろ。」
「へっ?」
「誰を好きになろうと同じだろ?相手が女だったらどうなんだ?強気で攻めないか?彼氏がいても奪うつもりで。」
「いや、それとこれとは……。」
「同じだろ?何遠慮してんだ。相手の幸せを願う気持ちがあるっていうんなら、とっくに諦めているはずだろ?そうは思えないっていうのは……自分が幸せになりたいからだ。ソイツと。違うか?」
「……。」
畳みかけられた言葉に何も反論できなかった。誰かを好きになるのに……性別は関係ない。中学2年の時に、幸也のカミングアウトを聞いて痛烈に感じたことを思い出した。
「年上の話はそんなもんだと聞いとけ。俺も初めはずっと戸惑ってた。けど、動かないと何も始まらない。」
幸也がベッドから立ち上がった。部屋を出て行く後ろ姿を見ながら、少しだけ頭がクリアになったような気がした。
部屋をノックする音とともに、幸也の声が聞こえた。
「ああ。」
机の前の椅子を最大限に後ろにしならせて本を読んでいた俺は体を起こした。椅子がギィーと嫌な音を立てた。
「何?どうかした?」
「いや、ちょっと元気かなと思って。」
そう言いながら入ってきた長兄はベッドに腰掛けた。俺も椅子を回して幸也に向かい合う。
俺と幸也は歳は離れているが、結構似ていると親戚中に言われる。髪も茶色で幸也もこめかみに一際明るいメッシュが入ってる。だが、俺よりも幸也は一回り小さい。身長も180に届かなかったはず。
「大学は楽しいか?」
徐に話しかけられて、何で言ったらいいか分からなかった。楽しいか楽しくないか……そんな話ではないような気がする。
「微妙。」
「そっか。……何か悩み抱えてる?」
「……。」
俺は答えられなかった。悩み……か?俺は何を悩んでる?幸也は何か感じとっているのだろうか?
「女関係か?母さんが最近バイトの帰りが遅いって言ってたぞ?前に無断で外泊してきたって。」
「違う。」
フッと笑いが込み上げた。もう既に成人してるんだ。あの人にアレコレ言われたくない。……実家にいるというのも……考えものだな。
「そう。俺も家を離れてから3年過ぎたろ?自由にやらせてもらって嬉しい反面、ちょっと罪悪感があるっていうか……。ま、何か言いたいことがあったらいつでも言え。聞くことぐらいはしてやるよ。」
幸也の言葉を聞いて、突然ある事を聞いてみたくなった。
「幸也はいつ自覚した?」
「ん?」
衝動的に聞いてしまったが、不躾な質問だったかもしれない。言った途端に後悔した。
「いや、いい。」
「何だ?好きな奴でもいるのか?……男?」
「……ああ。」
真面目な顔で聞いてきた幸也に、言うつもりがなかった望のことを話していた。去年の夏に出会い、会うたびに気になっていたこと。望には彼女がいること。諦めなければと思えば思うほど、頭から離れないこと……。
「諦められなくてどうにかしたいなら、告るしかないだろ。」
「へっ?」
「誰を好きになろうと同じだろ?相手が女だったらどうなんだ?強気で攻めないか?彼氏がいても奪うつもりで。」
「いや、それとこれとは……。」
「同じだろ?何遠慮してんだ。相手の幸せを願う気持ちがあるっていうんなら、とっくに諦めているはずだろ?そうは思えないっていうのは……自分が幸せになりたいからだ。ソイツと。違うか?」
「……。」
畳みかけられた言葉に何も反論できなかった。誰かを好きになるのに……性別は関係ない。中学2年の時に、幸也のカミングアウトを聞いて痛烈に感じたことを思い出した。
「年上の話はそんなもんだと聞いとけ。俺も初めはずっと戸惑ってた。けど、動かないと何も始まらない。」
幸也がベッドから立ち上がった。部屋を出て行く後ろ姿を見ながら、少しだけ頭がクリアになったような気がした。
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