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2:誕生日
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俄には信じられないような田崎さんの言葉に狼狽えた。
「い、いや……。もう大丈夫です。すみません、田崎さん。迷惑かけて。」
「迷惑なんかじゃない。送る。行くぞ。どっちだ?」
腕を掴んで歩き出した田崎さんに、自然と合わせるように足が動いた。恥ずかしい……初めてのお酒で、醜態を晒すってこんな事を言うのか? 俺が指さした方に向かって、2人で黙って歩き出した。
「今日は誕生日で……。」
暫く無言のまま歩き続けたが、だんだん焦ってきた。何か喋らないと……。
「知ってる。」
気がつくと、家の近くの小さな商店の前にきていた。洗剤やお菓子、タバコなどなんでも売っている店。小さい頃は、ここにアイスを買いに来るのが楽しみだった。「少し休もう。」と田崎さんに言われて、店の前のベンチに腰掛けた。
田崎さんが自販機で買ったペットボトルの水を差し出す。俺は素直に受け取った。ちょっとした心遣いが嬉しい。喉が渇いてた。
「友だちが奢りだと祝ってくれて……。」
「ああ……。」
田崎さんが自分で買ったペットボトルを掴んで隣に腰を降ろす。こんなに近くに座るなんて初めてだ。さっき感じた爽やかな香りが、漂って来るような気がした。田崎さんの温もりも……何だかドキドキしてきた。
「気持ち悪くなって、トイレに行った後に逃げてきちゃいました。」
地面を見つめながら自分の気持ちを誤魔化すように、ちょっとだけ茶化して言ってみる。けど、田崎さんはまだ心配そうな声をしていた。
「友だちに連絡しなくて大丈夫なのか? 心配してるんじゃないか?」
そういえばそうだ。でも……。
「たぶん駅に着いた時にメールしたような……。」
ポケットからスマホを取り出す。履歴を見ると、ちゃんと伸一にメールしていた。「お疲れ!」伸一からも返信が来てた。そうだ、店を出てすぐにメールをしてたんだ。
「大丈夫です。メールしてました。」
「そうか……。」
顔を上げて田崎さんを見ると、安心したように呟いた。茶色の髪が風で靡く……。サラサラの髪。触ってみたい……。顔を逸らして田崎さんから貰った水を一口飲む。水分が体に染み渡っていく気がした。
「夢の中で、田崎さんと飲んでいたんです。」
もう少しだけこうやっていたい。田崎さんの隣にいるのは俺。田崎さんが見つめているのは……今は、今は俺だけだ。
「……そうか。」
「美味しかった。」
田崎さんがペットボトルの蓋を開ける。指が長い……夢で見たよりも細い……触ってみたい。いや、さっきのように触られたい、のか?
「何を飲んでた?」
田崎さんがペットボトルを口元に運んで一口飲んだ。俺よりも大きな口元。大きな喉仏が上下するのから目が離せなかった。
「俺はカルピス酎ハイ。田崎さんは……何だろう。ウイスキーかな? 俺が2杯目のカルピス酎ハイを頼んだ時、渋い顔してた……。」
「ま、するだろうな。」
ペットボトルから口を離した田崎さんが苦笑いをしていた。
「い、いや……。もう大丈夫です。すみません、田崎さん。迷惑かけて。」
「迷惑なんかじゃない。送る。行くぞ。どっちだ?」
腕を掴んで歩き出した田崎さんに、自然と合わせるように足が動いた。恥ずかしい……初めてのお酒で、醜態を晒すってこんな事を言うのか? 俺が指さした方に向かって、2人で黙って歩き出した。
「今日は誕生日で……。」
暫く無言のまま歩き続けたが、だんだん焦ってきた。何か喋らないと……。
「知ってる。」
気がつくと、家の近くの小さな商店の前にきていた。洗剤やお菓子、タバコなどなんでも売っている店。小さい頃は、ここにアイスを買いに来るのが楽しみだった。「少し休もう。」と田崎さんに言われて、店の前のベンチに腰掛けた。
田崎さんが自販機で買ったペットボトルの水を差し出す。俺は素直に受け取った。ちょっとした心遣いが嬉しい。喉が渇いてた。
「友だちが奢りだと祝ってくれて……。」
「ああ……。」
田崎さんが自分で買ったペットボトルを掴んで隣に腰を降ろす。こんなに近くに座るなんて初めてだ。さっき感じた爽やかな香りが、漂って来るような気がした。田崎さんの温もりも……何だかドキドキしてきた。
「気持ち悪くなって、トイレに行った後に逃げてきちゃいました。」
地面を見つめながら自分の気持ちを誤魔化すように、ちょっとだけ茶化して言ってみる。けど、田崎さんはまだ心配そうな声をしていた。
「友だちに連絡しなくて大丈夫なのか? 心配してるんじゃないか?」
そういえばそうだ。でも……。
「たぶん駅に着いた時にメールしたような……。」
ポケットからスマホを取り出す。履歴を見ると、ちゃんと伸一にメールしていた。「お疲れ!」伸一からも返信が来てた。そうだ、店を出てすぐにメールをしてたんだ。
「大丈夫です。メールしてました。」
「そうか……。」
顔を上げて田崎さんを見ると、安心したように呟いた。茶色の髪が風で靡く……。サラサラの髪。触ってみたい……。顔を逸らして田崎さんから貰った水を一口飲む。水分が体に染み渡っていく気がした。
「夢の中で、田崎さんと飲んでいたんです。」
もう少しだけこうやっていたい。田崎さんの隣にいるのは俺。田崎さんが見つめているのは……今は、今は俺だけだ。
「……そうか。」
「美味しかった。」
田崎さんがペットボトルの蓋を開ける。指が長い……夢で見たよりも細い……触ってみたい。いや、さっきのように触られたい、のか?
「何を飲んでた?」
田崎さんがペットボトルを口元に運んで一口飲んだ。俺よりも大きな口元。大きな喉仏が上下するのから目が離せなかった。
「俺はカルピス酎ハイ。田崎さんは……何だろう。ウイスキーかな? 俺が2杯目のカルピス酎ハイを頼んだ時、渋い顔してた……。」
「ま、するだろうな。」
ペットボトルから口を離した田崎さんが苦笑いをしていた。
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