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2:誕生日

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「バイトはどうするんですか?」
歩きながら田崎さんに問いかける。1か月も休んだら、俺が働くコンビニではもう来なくていいと言われそうだ。
「実は、今日が最後だった。」
「そうなんですか……。」
……やっぱりか。残念、一度田崎さんの働いている姿見てみたかった。

「今は授業いくつ取ってるんですか?」
「んーー、7かな?」
「7つ!?」
あまりの少なさにびっくりする。俺は……いくつだっけ……。

「必要最小限しか取ってないからな。」
俺も3年生になったら少なくなるのかな? 今年も単位は全部取らないと。
「学校に来ない日もあるんですか?」
「ああ。水曜日は講義がないから、あまり足を運ばないな。」
そっか……水曜日は会えないのか……。そんな事を考えている間に家の前に着いた。

「じゃ、手伝いが終わって帰ったら連絡する。」
田崎さんの言葉に、ハッとする。連絡するっていったって、どうするんだ?

「田崎さん、携帯の番号教えてください。」
「ああ。そうだな。」
その場に立ち止まって電話番号を交換する。無料の通話アプリにも登録して……。

「おおっ!アイコンいいっ!」
田崎さんのアイコンは、外国の映画会社のグレーのTシャツを写したものだった。何これ? 色違いで黒を持っているぞ? 田崎さん、グレーのこのTシャツ、着てたことあったっけ?

「……犬を飼ってるのか?」
田崎さんの言葉に我に返る。コリー……通学の途中で出会ったワンコ。毛の色が田崎さんにそっくりだったから、思わず写真を撮らせてもらった……。
「いや……ちょっとこの犬……カッコいいなって……。」
自分でも分かる。今顔が赤くなってる。熱い。なかなか田崎さんの顔が直視できなかった。




田崎さんと別れて、自分の家に入った。しんと静まった中で、2階から音楽が聞こえた。
『沙耶はまだ起きてるのか……。』
俺はとりあえず、田崎さんが飲んでいたペットボトルと自分のをキッチンの調理台に乗せて、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出した。田崎さんが飲み干したのを見て、家で捨てる事を口実に貰ってきたもの。

『酒はもういいな……。』
スポーツドリンクをコップに注いで飲む。喉が渇いた。飲み会はあまり参加しなくてもいいや。毎回、酔っ払って吐きたくはない。2つ並んだペットボトルを見ながら考えた。でも、田崎さんとは飲みたいかもしれない。

『たぶん、強要はしないだろうし……。』
ズボンからスマホを取り出して、さっき交換したばかりの番号を住所録に登録する。
『名前は……田崎駿也っと。』

あっという間に登録が済み、無料通信アプリの友だち欄を開いた。さっき見たばかりのアイコンをもう一度眺める。
『お礼のメール打とうかな……。』
さっき別れ際にお礼を言ったばかりだけど……。連絡してみたい。でもくどいかな? 田崎さんはモールの辺りまで戻っただろうか? 

しばらくスポーツドリンクを飲みながら考えていたけれど、今はやめようと決めてスマホを閉じた。
『今度、何かメールしなくちゃならない時に、ついでにお礼を言おう。』

今日は疲れた。まだ息が酒臭いような気がする。歯磨きをして寝ることに決め、2つのペットボトルを掴んで2階に上がった。






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