125 / 134
4:3年と4か月前ではなく
2
しおりを挟む
「いや、む、無理だから……。」
片方の腕で顔を隠そうとしたけど、それも駿也に取られてしまった。
「あの時……こうやって望を抱きしめた。」
メガネと帽子を外されて頭を抱え込まれる。駿也の、大好きな駿也の香りが鼻腔いっぱいに広がっていった。
「本当はキスしたかったんだ。でもこうやって……頭にキスをした。望はやっぱりお日さまの香りだった。」
頭の上で駿也の唇が当たったのが分かる。あの時も……何となく感じていた仕草。俺も、俺ももっと駿也を感じたい。
「駿也……もういいよ。帰ろ? 思い出したし。あの時の駿也の気持ちも解ったし……。」
対面で背を向けて座る奏さんたちに気づかれないように、俺は少しだけ駿也にしがみついた。これ以上はできない。もっともっと俺の気持ちをわかってもらいたいのに。それが少しだけ歯痒い。
『問題なし。次行けるぞ。』
突然耳元に洸一さんの声が響いて俺は飛び上がった。駿也もびっくりした顔をしている。前を見ると、笑顔の奏さんがこちらを向いて席を立とうとしていた。
「ははっ! ごめんごめん。悪趣味だって思ったんだけどさ。何となく後ろを振り向きづらくて。洸一に通信してもらった。」
俺たちの会話……もしかして聞かれた? 顔が赤くなるのを感じながら、耳に入っているイヤホンを外す。それを見た奏さんが言葉を続けた。
「大丈夫だ。会話は聞いてない。それは必要だよ。さ、行こ。」
もう、過去に行きたいとは思わない。充分知った。駿也の気持ちを、そして俺の気持ちも……。
「奏さん、3年と4か月前はキャンセルできませんか?」
俺の言葉に奏さんも駿也も驚いた顔をした。
「望くん……いいのか? 駿也も?」
「ええ。望がそう言うなら。」
駿也は即座に同意してくれた。
「じゃあ、今日はこれで終わり? 洸一?」
奏さんが後ろを振り返って、洸一さんを見る。洸一さんが、
「ちょっと待ってろ。」
と言ってパソコンに向き直り、物凄い速さでキーボードを叩き出した。
「……これから……俺のマンションに行かないか?」
洸一さんの側に歩いて行った奏さんを見送りながら、駿也が小声で話しかけてきた。
「もっと話をしたい。」
「うん。」
俺も同意見だった。どこか、誰にも聞かれないところでちゃんと話をしたい。
「大丈夫だ。所長に承認を取った。これで終了、帰っていいぞ。」
洸一さんがこちらを振り返って立ち上がった。奏さんも一緒に歩いてくる。
「「お世話になりました。」」
駿也と俺も立ち上がり、借りていた帽子やメガネ、イヤホンを外した。
「すぐに帰るのか?」
「いえ、もう少しだけ話をしたいので、俺のマンションに。」
洸一さんの言葉に、駿也が答えた。奏さんがそれを聞いて、洸一さんの顔を見た。
「駿也のマンションって、幸也たちが住んでたところだろ? 洸一『D』の部屋使っちゃまずいかな? 位置情報のデータ残ってるだろ?」
奏さんの言葉に、洸一さんがスマホを取り出し、どこかに電話をし始めた。
「大丈夫だ。今日最後の『D』、経験して帰れ。」
多分、俺にとっては最後の経験になるであろう空間移動を使って、駿也のマンションに帰ることになった。
片方の腕で顔を隠そうとしたけど、それも駿也に取られてしまった。
「あの時……こうやって望を抱きしめた。」
メガネと帽子を外されて頭を抱え込まれる。駿也の、大好きな駿也の香りが鼻腔いっぱいに広がっていった。
「本当はキスしたかったんだ。でもこうやって……頭にキスをした。望はやっぱりお日さまの香りだった。」
頭の上で駿也の唇が当たったのが分かる。あの時も……何となく感じていた仕草。俺も、俺ももっと駿也を感じたい。
「駿也……もういいよ。帰ろ? 思い出したし。あの時の駿也の気持ちも解ったし……。」
対面で背を向けて座る奏さんたちに気づかれないように、俺は少しだけ駿也にしがみついた。これ以上はできない。もっともっと俺の気持ちをわかってもらいたいのに。それが少しだけ歯痒い。
『問題なし。次行けるぞ。』
突然耳元に洸一さんの声が響いて俺は飛び上がった。駿也もびっくりした顔をしている。前を見ると、笑顔の奏さんがこちらを向いて席を立とうとしていた。
「ははっ! ごめんごめん。悪趣味だって思ったんだけどさ。何となく後ろを振り向きづらくて。洸一に通信してもらった。」
俺たちの会話……もしかして聞かれた? 顔が赤くなるのを感じながら、耳に入っているイヤホンを外す。それを見た奏さんが言葉を続けた。
「大丈夫だ。会話は聞いてない。それは必要だよ。さ、行こ。」
もう、過去に行きたいとは思わない。充分知った。駿也の気持ちを、そして俺の気持ちも……。
「奏さん、3年と4か月前はキャンセルできませんか?」
俺の言葉に奏さんも駿也も驚いた顔をした。
「望くん……いいのか? 駿也も?」
「ええ。望がそう言うなら。」
駿也は即座に同意してくれた。
「じゃあ、今日はこれで終わり? 洸一?」
奏さんが後ろを振り返って、洸一さんを見る。洸一さんが、
「ちょっと待ってろ。」
と言ってパソコンに向き直り、物凄い速さでキーボードを叩き出した。
「……これから……俺のマンションに行かないか?」
洸一さんの側に歩いて行った奏さんを見送りながら、駿也が小声で話しかけてきた。
「もっと話をしたい。」
「うん。」
俺も同意見だった。どこか、誰にも聞かれないところでちゃんと話をしたい。
「大丈夫だ。所長に承認を取った。これで終了、帰っていいぞ。」
洸一さんがこちらを振り返って立ち上がった。奏さんも一緒に歩いてくる。
「「お世話になりました。」」
駿也と俺も立ち上がり、借りていた帽子やメガネ、イヤホンを外した。
「すぐに帰るのか?」
「いえ、もう少しだけ話をしたいので、俺のマンションに。」
洸一さんの言葉に、駿也が答えた。奏さんがそれを聞いて、洸一さんの顔を見た。
「駿也のマンションって、幸也たちが住んでたところだろ? 洸一『D』の部屋使っちゃまずいかな? 位置情報のデータ残ってるだろ?」
奏さんの言葉に、洸一さんがスマホを取り出し、どこかに電話をし始めた。
「大丈夫だ。今日最後の『D』、経験して帰れ。」
多分、俺にとっては最後の経験になるであろう空間移動を使って、駿也のマンションに帰ることになった。
0
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる