自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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遭遇2 〜侑〜

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「侑ちゃん、待っただろ? ごめんな?」
「『ちゃん』はやめてって……。」

 和樹がテーブルの近くまできて頭を下げた。色褪せて白っぽくなったジーンズに白いポロシャツ。上にカーキ色のミニタリージャケット。ここは、新たな待ち合わせ場所にした駅前のコーヒーショップ。

 この人が自分の彼氏。大学の同級生。学部が違うから、滅多に学校では会わないし、会ってもそれぞれ友だちと話しているから、付き合ってると知ってるのは数人ほど。学校で2人で昼食をとるなんてしたこともない。

 でも、出会いは唐突。興味のある本が同じだったらしく、図書館でいきなり声をかけられた。



『君、名前なんて言うの?』

 あの時のカチンコチンに固まった和樹の様子を思い出すと、今でも笑える。

『侑ですけど。』

 和樹のことは頭の隅では覚えていた。図書館によくいる人。一階のテーブルで雑誌を読んでいたり、階段でよくすれ違ったり。でも、自分はもう誰とも付き合わなくていいやと思っていたし、気にも留めていなかった。

『源氏物語、僕も読んだことあるよ。』

 自分の手の中にある本に目を向けて、和樹がこう言ったことから仲良くなっていった。図書館で会えば挨拶をするし、少しだけ本の話をする。そして1か月。

『ぼ、僕たち、つき合わない?』

 2度目のカチンコチン。何だか笑えてきて、すぐにオーケーしたのを覚えてる。あれが4月の終わり。たまにこうしてデートする。本屋を巡ったり、古本屋へ行ったり。そして、おしゃべりしながら公園を散歩したり。
 
 一度だけ夏に帽子を被らずスカートを履いていったら、びっくりしてた。とても似合う! と褒めてくれたけど、自分は落ち着かなかった。誰かのために、女の子のような服を着て、化粧をするというのが無理だった。いや、女の子なんだけど。

 スカートを履くときは、知り合いには会わない時がいい。その時の気分で、誰かのためではなく、自分が楽しむため。またスカート姿を見たいという和樹にその事を言ったら、理解してくれた。

『じゃあ、いつかまたスカート姿を僕に見せたくなった時でいいよ。』

 あの時の言葉で、和樹との距離がグンと近くなったと思う。和樹と初めてキスをしたのもあの時。それからは気負わないでやっていけてる。



 今日は、新しく買ったスキニージーンズに長袖のロングパーカー。髪はハーフアップにして、下を少しだけウェーブかけてきた。

「結構時間かかったね? 電車混んでた?」

 30分前の待ち合わせが、和樹の乗ろうとしていた路線で事故があったとかで、途中でメールが届いていた。今日はファミレスで夕食を一緒に取る約束。2人ともお酒はあまり飲めないから、飲み屋さんには行ったことがなかった。

「うん、めっちゃ混んでた。もう行く?」
「うん。ちょっと待ってて。」

 もう少しでなくなりそうだったアイスカフェラテをそのままにして、和樹と店を出るために荷物をまとめた。


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