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居酒屋
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店の裏口から米田さんと2人で外に出る。米田さんは駅前で彼女と待ち合わせらしい。今日はホテルに泊まると言ってた。とても雰囲気がいいラブホで2人のお気に入りなんだとか。
もっと詳しく聞いたような気がするけど、ほとんど頭に残っていない。ああ、名前は「みう」だったか「みゅう」だったか……。働いているとか何とか……。
「愼?」
イヤフォンを取り出してスイッチを入れ、耳に掛けながら話しかけた。
『はい、優樹様。今日もお疲れ様でした。』
「愼、何か元気になれる曲をかけて。」
細い路地を家の方へ向かいながら、愼に命令する。いつも変わらない愼の声を聞いて、どこかホッとしている自分がいた。
『何になさいますか? 夕飯も残しておいででした。具合がお悪いのでは?』
具合は悪くない。食べられなかった原因は他にある。でも今ここで、愼に伝える気にはならなかった。愼に相談しても、人の気持ちを操ることはできない。
「何でもいい。愼セレクト。」
『承知いたしました。』
すぐにかかってきた曲は、ハードロックかと思ったのに全然違うバラードの曲だった。「そのままの君でいいんだ、そのままの君に会いたいんだ、今……」英語で流れてきた歌詞に少しだけ鼻の奥がツンと痛むのが分かった。
「はぁ、疲れた。愼、開けて。」
イヤフォンに向かって呟くと、カチッと解錠の音がしてドアがこちら側に開いてきた。
『お帰りなさいませ。優樹様。』
頭上から声が聞こえて、マンションの玄関、廊下、リビングと次々に明かりが灯される。靴を脱いで廊下に上がると、隅の方から声が聞こえた。
『風呂の準備は整っています。』
「ああ、ありがと。さっきの曲の続きをかけといて。」
風呂になんか入りたくないけど、そうしないと愼が煩い。保温に電気代がかかるだの、水がもったいないだの。でも、少しだけ温かいものでも飲んでゆっくりしたい。
「愼、リビングのカーテン開けといて。そして照明落として。少し考えたい。」
『キッチンは?』
「俺が消すからそのまま。」
ソファに鞄とダウンを投げ捨て、瞬時に間接照明だけになった部屋からキッチンに回り込む。マグを取り出して、コーヒースティックを準備する。お湯を沸かしている間、コーヒーの粉が入ったカップを見つめながらも、脳裏に写る映像は別なものだった。
いつもと変わらない服だった米田さん。気楽に話している様子から、彼女とは長い付き合いだということが分かる。沸騰したお湯を無意識にマグに注ぐ。
キッチンの明かりを消してリビングへと戻り、窓のところまで歩いて行った。ここは見晴らしがいい。都会の沢山の明かりが街を彩っていた。あの中の1つに米田さんとその彼女が……。
『優樹様、どうかなされましたか?』
後ろの方から静かな愼の声が聞こえた。
もっと詳しく聞いたような気がするけど、ほとんど頭に残っていない。ああ、名前は「みう」だったか「みゅう」だったか……。働いているとか何とか……。
「愼?」
イヤフォンを取り出してスイッチを入れ、耳に掛けながら話しかけた。
『はい、優樹様。今日もお疲れ様でした。』
「愼、何か元気になれる曲をかけて。」
細い路地を家の方へ向かいながら、愼に命令する。いつも変わらない愼の声を聞いて、どこかホッとしている自分がいた。
『何になさいますか? 夕飯も残しておいででした。具合がお悪いのでは?』
具合は悪くない。食べられなかった原因は他にある。でも今ここで、愼に伝える気にはならなかった。愼に相談しても、人の気持ちを操ることはできない。
「何でもいい。愼セレクト。」
『承知いたしました。』
すぐにかかってきた曲は、ハードロックかと思ったのに全然違うバラードの曲だった。「そのままの君でいいんだ、そのままの君に会いたいんだ、今……」英語で流れてきた歌詞に少しだけ鼻の奥がツンと痛むのが分かった。
「はぁ、疲れた。愼、開けて。」
イヤフォンに向かって呟くと、カチッと解錠の音がしてドアがこちら側に開いてきた。
『お帰りなさいませ。優樹様。』
頭上から声が聞こえて、マンションの玄関、廊下、リビングと次々に明かりが灯される。靴を脱いで廊下に上がると、隅の方から声が聞こえた。
『風呂の準備は整っています。』
「ああ、ありがと。さっきの曲の続きをかけといて。」
風呂になんか入りたくないけど、そうしないと愼が煩い。保温に電気代がかかるだの、水がもったいないだの。でも、少しだけ温かいものでも飲んでゆっくりしたい。
「愼、リビングのカーテン開けといて。そして照明落として。少し考えたい。」
『キッチンは?』
「俺が消すからそのまま。」
ソファに鞄とダウンを投げ捨て、瞬時に間接照明だけになった部屋からキッチンに回り込む。マグを取り出して、コーヒースティックを準備する。お湯を沸かしている間、コーヒーの粉が入ったカップを見つめながらも、脳裏に写る映像は別なものだった。
いつもと変わらない服だった米田さん。気楽に話している様子から、彼女とは長い付き合いだということが分かる。沸騰したお湯を無意識にマグに注ぐ。
キッチンの明かりを消してリビングへと戻り、窓のところまで歩いて行った。ここは見晴らしがいい。都会の沢山の明かりが街を彩っていた。あの中の1つに米田さんとその彼女が……。
『優樹様、どうかなされましたか?』
後ろの方から静かな愼の声が聞こえた。
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