もこ

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 温かい紅茶をポット一杯に作って、カップとともにリビングのテーブルに置く。あらかじめ運んできていたパソコンを開き、電源を入れた。

「愼、音楽かけて。静かなもの。」
『パソコンから流れるように、ですか?』

 天井から声が聞こえる。いつもは部屋全体に流れるようにかけてもらっているけど、たまには気分を変えるのもいい。

「うん。動画も見たい。」
『承知いたしました。』

 画面が暗くなり、星を散りばめた藍色の待ち受け画面が表れた。立体的にデザインされた「愼」の大文字が、中央で回りを囲む円とともにクルクルと反転している。愼セレクトで時間がかかるときにはいつもこの画面。

 やがて静かなクラシック音楽がパソコンから流れ始めた。動画サイトの画面はどこかの風景のようだ。

「クラシックかあ。いつもの曲で歌が入ってないのがいいな。演奏だけのやつ。」
『少々お待ちください。』

 また画面が切り替わり、「愼」の文字が回る。今度は色もコロコロと変わっていた。愼も器用だよな。そう思いながら見ているうちに、ふとあることを思いついた。

「なぁ愼。愼の顔ってどんな感じ?」
『顔、ですか?』

 クルクル回っていた文字が、銀色になって静止した。

「そう顔。愼に顔があるとしたらどんなだろ?」
『どのような顔にでも。』

 またクルクル回り始める。銀色から金、そして虹色になって赤、オレンジ、黄色……とゆっくりと変わり始めた。

「愼、顔作ろうぜ? 一緒に。」

 我ながらいい思いつきだ。愼に顔をつければ、より身近に感じられる。どうせ今日は時間がたっぷりとある。愼と一緒に遊ぶのも悪くない。

『承知いたしました。』

 愼がそう言ったかと思うと、画面が白く切り替わった。曲も聞き覚えのある90年代ロック。このアーティストは結構前に謎の失踪をしたと聞いたことがあるけど、本当かな?

「輪郭描いてみて。」
『誰のものを参考にいたしましょうか? 米田さんですか?』

 愼の言葉に心臓が一つ鼓動を強くした。米田さんは丸顔。ストレートの髪が割と長くて優しそうな顔立ちをしている。

「いや、米田さんは好みじゃない。もっとゴツゴツした彫りの深い顔がいい。」

 そう。米田さんは諦めなくちゃならないんだ。俺とは違う。女の子が好みで彼女がいて、昨日は彼女と待ち合わせをして……。

 愼が映画やテレビで見たことのある俳優の顔を映し出してきた。うん、いいんじゃないか? 目がいい。太い眉も。髪の毛はもう少しだけ長くして……。

「愼、もう少し髪を長くできる?」
『はい。』

 そこから2時間紅茶を飲み、おやつのクッキーを食べながら、愼の顔作りを2人で楽しんでいった。


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