もこ

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救出

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「王高寺さん、点滴を外しますね。」

 看護師の声で目を開けた。それと同時に左手の甲に痛みが走り、点滴の注射針が引き抜かれたことを知った。

「……今何時ですか?」

 間接照明一つだけの明かりの中、忙しなく動く看護師に話しかける。相変わらず酷い声だ。風邪でも引いたかのような、ガサガサとした耳障りな声が耳に入ってきた。白い服を着て髪を後ろでクルクルとまとめた看護師は、結構な年に見えた。こちらにはあまり無関心で機械的に動いている。

「8時過ぎましたね。夕食が取ってあるので食べてくださいね。そしてお薬を。電気を点けますよ?」

 いつの間にか消されていた天井の蛍光灯が明るく点灯し、その眩しさで目を瞬いた。看護師はそのまま出て行った。目が明かりに慣れた途端に、足元に立っている人物が目に入る。

「愼! ンゴホッ、ゴホッ!」

 足元にはさっきと変わらない赤のチェックのシャツを着た愼が立っていた。俺が咳き込むと同時に側にきて背中を摩ってくれた。薄い入院着の上からひんやりとした愼の手の感触を感じる。

「んはぁ……ありがと。愼。本当にお前?」
「はい私でございます。」

 咳が止まって、愼の方を仰ぎ見る。カジュアルな格好なのに、話し方は今まで通りだ。ものすごく違和感があって、現実のものとは思えなかった。

「ど、どうやったの?」
「正孝様の計画です。最先端の技術を持つ会社に依頼し、試作品という形で作っていただきました。」

「試作品?」
「はい。改良は必要とのこと。先ほどは急いでいたために、後ろ側の皮膚がついてなかったところがありました。この服も借り物で。」

「皮膚?」
 手を伸ばして愼の手を掴む。どう見ても人間の手だ。弾力もあるし、血管や皺も見える。ただ、ヒンヤリと冷たい感触が、もしかしたら機械なのかもしれないと思わせていた。

「今までの管理AIとしての機能はどうなんだよ。」
「もちろんございます。バッテリーが切れるまでは、どこででも今まで通り。今現在も部屋の中が見えております。」
「バッテリー?」

 充電が必要ということか? 急に動けなくなるなんていうことがあるのだろうか? 

「私は今まで以上に優樹様をお守りできるように作られています。まだ試してはいませんが、力も強く足も速いはずでございます。とりあえずはお食事を。」

 足元のテーブルにあったお盆を取り上げて、ベッドのテーブルへと運び込まれた夕食は、どこかのレストランにでも頼んだかのような豪華なものだった。

 壁際にあった椅子を持ってきて隣に座った愼に見つめられ、たまにこれからの事を話しながら、すっかり冷えた夕食を食べた。

「愼も食べることができるの?」
「少しは。けれども必要はございません。どうかお気になさらず。」

 冷えて不味いかと思ったハンバーグもコーンスープも、愼が見守る中では美味しく食べれるような、そんな気がした。

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