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僕の趣味は女の子、君の趣味も女の子
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「ええっ! っていうか田部さんそんなに美人なのに彼氏じゃなくて彼女?」
渡辺の言葉で、田部さんが微かに眉をひそめた。
「あのね、そこが渡辺君のいけないところだよ? 好きになるのに性別って関係あるの? 可愛くて、いつも一緒にいたくて守ってあげたい。それ以上お付き合いに考えることがある?」
「いや、それは……。」
色々あるだろ、という言葉を発したようだったけれど、それは口の中に消えて聞こえてこなかった。隣に座る田部さんの剣幕に押されたってところだ。
『女の子どうしか。』
僕の全く知らない世界。想像もできない。女の子どうしでお付き合いって……性的なことは? 田部さんには、性欲がないのだろうか?
そこまで考えて首を横に振る。僕も性欲はないとは言わないけど、極端に薄い方だと感じている。人それぞれ。ついこの前、伊東さんがゲイだと知ったばかりだし。
「渡良瀬君は……ああ、やっぱり残してる。」
近くで聞こえた声に驚いて顔を上げる。そこに笑顔でこちらのテーブルを覗き込む嶺さんと、その半歩後ろに隠れるようにして立っている日山さんがいた。
「嶺さん! いいなあ、ランチデートですか?」
営業部の後輩である渡辺の遠慮のない言葉に、嶺さんが「ははははっ!」と笑い声を響かせた。
「日山さん素敵ですね、その髪形。」
「そうお? じゃあ仕事の時も下ろしておこうかしら? 邪魔でしょうがないけどね。」
斎藤さんが嶺さんの後ろの日山さんに声をかけると、ウィンクをしながら日山さんが答えた。こうやって近くで見ると、背が高いことが改めて分かる。田部さんと同じぐらい。僕よりほんの少し低いか、高いか……。長くて真っ直ぐな黒髪と、タイトなスカートからのぞく脚が細くて綺麗だった。
「で? 渡良瀬君、サラダは残さず食べなくちゃダメだぞ?」
「た、食べます!」
嶺さんに話を振られて、慌ててサラダの皿と箸を取った。ハムだけ摘んで食べていたサラダ。お腹がいっぱいになった振りをしてシレッと残そうと思っていたのに……。
大急ぎで口に詰め込み、息を止めて飲み込んだそれは、ドレッシングの酸っぱさとシャリシャリとした食感以外何も分からなかった。
「ははっ、偉いな。じゃあ俺たちはお先に。」
「先に行っているわね。」
アイスコーヒーで口の中をリセットしている僕の頭を、嶺さんがくしゃっと撫でていった。颯爽と歩き去る後ろ姿を見ながら、慌てて髪の毛を整える。ペシャンコになるのは嫌なんだって……。僕もパーマをかけて嶺さんみたいにしようかな?
「嶺さんって優しいわよね。」
同じく2人を見送っていた田部さんが、独り言のように話しだした。
「歓迎会だって言って奢ってくれたしな。で? 渡良瀬も知り合いだったわけ?」
渡辺が田部さんの言葉を受けて、僕の方を見て訊ねてきた。
「僕も奢ってもらった。伊東さんと一緒に。」
「おっ、やっぱり。あの人さすが営業マンって感じでさ。物怖じしないというか、人懐っこいというか……とにかく面倒見がいいよな。」
「うん。」
知り合ったばかりだし、渡辺が言うような人だということは間違い無いんだけど。でも僕は心の片隅でちょっぴりモヤモヤが渦巻いているのを認めずにはいられなかった。
でもその気持ちが何なのかを探る気持ちにはなれなかった。
渡辺の言葉で、田部さんが微かに眉をひそめた。
「あのね、そこが渡辺君のいけないところだよ? 好きになるのに性別って関係あるの? 可愛くて、いつも一緒にいたくて守ってあげたい。それ以上お付き合いに考えることがある?」
「いや、それは……。」
色々あるだろ、という言葉を発したようだったけれど、それは口の中に消えて聞こえてこなかった。隣に座る田部さんの剣幕に押されたってところだ。
『女の子どうしか。』
僕の全く知らない世界。想像もできない。女の子どうしでお付き合いって……性的なことは? 田部さんには、性欲がないのだろうか?
そこまで考えて首を横に振る。僕も性欲はないとは言わないけど、極端に薄い方だと感じている。人それぞれ。ついこの前、伊東さんがゲイだと知ったばかりだし。
「渡良瀬君は……ああ、やっぱり残してる。」
近くで聞こえた声に驚いて顔を上げる。そこに笑顔でこちらのテーブルを覗き込む嶺さんと、その半歩後ろに隠れるようにして立っている日山さんがいた。
「嶺さん! いいなあ、ランチデートですか?」
営業部の後輩である渡辺の遠慮のない言葉に、嶺さんが「ははははっ!」と笑い声を響かせた。
「日山さん素敵ですね、その髪形。」
「そうお? じゃあ仕事の時も下ろしておこうかしら? 邪魔でしょうがないけどね。」
斎藤さんが嶺さんの後ろの日山さんに声をかけると、ウィンクをしながら日山さんが答えた。こうやって近くで見ると、背が高いことが改めて分かる。田部さんと同じぐらい。僕よりほんの少し低いか、高いか……。長くて真っ直ぐな黒髪と、タイトなスカートからのぞく脚が細くて綺麗だった。
「で? 渡良瀬君、サラダは残さず食べなくちゃダメだぞ?」
「た、食べます!」
嶺さんに話を振られて、慌ててサラダの皿と箸を取った。ハムだけ摘んで食べていたサラダ。お腹がいっぱいになった振りをしてシレッと残そうと思っていたのに……。
大急ぎで口に詰め込み、息を止めて飲み込んだそれは、ドレッシングの酸っぱさとシャリシャリとした食感以外何も分からなかった。
「ははっ、偉いな。じゃあ俺たちはお先に。」
「先に行っているわね。」
アイスコーヒーで口の中をリセットしている僕の頭を、嶺さんがくしゃっと撫でていった。颯爽と歩き去る後ろ姿を見ながら、慌てて髪の毛を整える。ペシャンコになるのは嫌なんだって……。僕もパーマをかけて嶺さんみたいにしようかな?
「嶺さんって優しいわよね。」
同じく2人を見送っていた田部さんが、独り言のように話しだした。
「歓迎会だって言って奢ってくれたしな。で? 渡良瀬も知り合いだったわけ?」
渡辺が田部さんの言葉を受けて、僕の方を見て訊ねてきた。
「僕も奢ってもらった。伊東さんと一緒に。」
「おっ、やっぱり。あの人さすが営業マンって感じでさ。物怖じしないというか、人懐っこいというか……とにかく面倒見がいいよな。」
「うん。」
知り合ったばかりだし、渡辺が言うような人だということは間違い無いんだけど。でも僕は心の片隅でちょっぴりモヤモヤが渦巻いているのを認めずにはいられなかった。
でもその気持ちが何なのかを探る気持ちにはなれなかった。
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