暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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君は僕を好き、僕は君をどう思っているのだろう?

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 昨日1日休んでしまって、少しだけ罪悪感を抱えたまま出社した。熱もあったし、風邪で1日ぐらい休んでも構わないと言い聞かせても、何か学校をずる休みした後のような、そんな気持ちが強かった。

「おはようございます。」

 出社時間ギリギリに経理部のドアを開ける。もうそこには3人が揃っていて、こちらを一斉に見上げた。

「昨日はすみませんでした。」

 戸口に立ったまま、小声で呟く。1番手前にいる鈴木さんが立ち上がるのが見えた。

「渡良瀬くん、熱が出たんだって? 今日は出社して大丈夫なの?」

「あ、はい。大丈夫です。お世話になりました。」

 目の前に立った鈴木さんに、額や腕を触られる。距離が近い。僕より若干目線が高いのは、鈴木さんの履くパンプスのせいだと思いたい。

「少し顔が浮腫んでいるかしら。今朝は何か食べた? 水分は?」

「食べてきました。」

 とにかく、昨日はずっと寝ていた。夜起きた時にはさすがにお腹が空いて、カップラーメンを作って食べた。

 今朝も部屋にあったお菓子を摘み、コーヒーで流し込んできた。それが食べたと言えるかどうかは知らないけど。

 セイちゃんの所から帰ってからやったことといえば、そのぐらい。現実から逃避するように、うつらうつらとずっと夢の世界を漂っていた。

「ちょっと待ってて。いいものがあるの。」

 そう言った鈴木さんが部屋を出ていく。ただ突っ立っていてもしょうがない。僕は自分のデスクに行き、鞄を置いてパソコンを立ち上げた。

「おい、本当に大丈夫なのか。」

「はい、ご迷惑をおかけしました。」

 奥の柿崎部長に声をかけられた。柿崎部長に、今日の仕事の確認をしてさっそく取り掛かろうと、1つ目のファイルを開けた。




「渡良瀬、ニュース見てる?」

「え? 何でしょう?」

 鈴木さんから貰った冷えたゼリー飲料を飲みながら、仕事を進めていると、それまで黙々と手を動かしていた伊東さんが声をかけてきた。

「事故の、ニュース。」

「捜査が打ち切りになったのよ。」

「えっ、そうなのですか?」

 伊東さんに続く鈴木さんの言葉に驚く。一昨日の晩にセイちゃんが現れてから、そのことで頭がいっぱいになり、ニュースを何もチェックしていないことに気づいた。

「生存者1名。」

「それって……?」

 奥から柿崎部長の声が聞こえた。僕の言葉に3人が一斉に首を横に振る。嶺さんじゃなかった。

 3人の話によると、生存者は外国籍の人。どこかの海岸に、漂流物が流れ着いたらしい。そして数名の遺体も。

「嶺さん……は?」

 僕の言葉に3人が暗い表情でまた首を横に振った。

 



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