暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける

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 まだ夜が明けていないようだった。ベッドヘッドのスマホを手に取る。午前6時55分。

『あ、そうだ。カーテンを閉めたんだった。』

 夕べ寝る前に窓の外を見た。何もない普通の窓で、いつもの風景が見えるだけだった。この窓の向こうに佇んでいたセイちゃん。

『もう、見る必要はない。』

 引っ越しをしてきてからほとんど使わなかった遮光カーテンを閉めて、僕は眠りについていた。

『よく寝た。』

 ベッドの中でグンと伸びをする。拳がベッドヘッドに当たってゴンと鈍い音が響いた。今日と明日は休み。やることは決めてある。

『よし、起きるぞ。』

 朝ご飯にできるようなものが何かあっただろうか? 夕べは冷蔵庫に残っていた野菜を刻んで、味噌雑炊を作って食べた。今日は食糧も調達してこないと。

 ベッドから降りてカーテンを開ける。もう既に朝日が上り、左側から部屋の中を照らし出した。まずはコンビニ。朝ご飯をたべて、それから嶺さんのマンションへ行くんだ。

 僕は、お気に入りのTシャツを脱いで洗濯機を回そうと部屋を後にした。




『出ないな。』

 3度目のインターホンを鳴らす。508の部屋番号を押して、呼び出しのボタン。これで部屋の中に繋がるはずなんだ。

 僕は嶺さんのマンションのエントランスの入り口に立っていた。2回呼び出しても反応がない。セイちゃんは拠点にはしないと言っていたけれど、今日はまだいると思っていた。

 コンビニでおにぎりをアイスコーヒーで流し込み、半ば走るようにしてこのマンションまでやってきた。まだ8時を過ぎたところ。セイちゃんはまだ寝ている? それとも居留守を使っているわけ?

 モニターで顔は確認できるはず。僕だと分かったならば、絶対に応答してくれるという謎の自信が、早くも崩れていくのを感じていた。

『僕に会いたくなくなった?』
 
 ちょっとだけ不安な気持ちになる。そして頭を振ってそんな考えを振り払う。夕べ会ったばかりじゃないか。そして会いにいくって言ってくれたばかり。

 でもいくら待っても応答はなかった。

『よし、次。』

 僕とセイちゃんが繋がる場所はもう1つある。ここからだとターミナル駅まで行ったほうがいいだろう。僕は、次の場所に移動するために駅まで走って行った。



 埼玉県と東京都の境の街に、僕の祖母の家がある。僕の実家は祖母の家の最寄りの駅より2つ分手前だったけれど、寄るつもりはなかった。

『何年振りかな?』

 この駅を使うのは小学校以来かもしれない。祖母が僕の家まで送ってくれた……。あの時は5年生ぐらいの頃だっただろうか。

 祖母の家に行くのは両親の車が多かった。でも、この辺りは慣れた道。大通りを行けば絶対に迷わない。バスを使ってもいいけれど、それよりも歩いて行こう。

 中学校になってから、テニスをやることが楽しくて祖母の家にあまり行かなくなった。母さんは頻繁に行っていて、おしゃべりをするのが楽しいようだったけれど。

『いきなり行って、まあちゃんがいなかったらどうするかな?』

 最後に会ったのは3月。今のマンションに引っ越す直前に呼ばれて、家族全員で行ってきた。就職祝いだとスーツを買うようにお金をもらって。

『あのスーツ着てくれば良かったな。』

 ジーンズにTシャツの自分の姿を少しだけ後悔する。まあちゃんに貰ったお金で買ったといえば、喜ぶだろうに。何か買っていくか? 1時間近くある道のりを頭に思い浮かべながら、少しだけ速足になった。
 

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