暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける

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 嶺さんが生きていてくれさえしたら! 嶺さんが怪我をしていたとしても、いつか治る日がくる。心の傷もたぶん時間が癒してくれる。

 嶺さんが誰と恋愛しようがどうでもいい。あの笑顔でまた話ができるのならば、それでいい。

 セイちゃんは……どうするのだろう? 嶺さんが生きて帰ってきたら。隠れて生きる? やっぱり戻ることになる?

『俺はいくら帰れと言われても、帰るしかないとしても、この世界に留まる。』

 不意にセイちゃんの言葉が脳内に蘇る。セイちゃんはこの世界に留まると言った。でも帰るしかないとしたら?

 ツキン、と鳩尾の部分が痛んだような気がした。あんなにキッパリと言い切ったセイちゃんが帰らなくてはならないとしたら、セイちゃんはどうなってしまうのだろう?

『僕は……?』

 心臓がドクドクと早鐘を打ちはじめた。セイちゃんにこのまま、会えないまま、いつの間にか帰ってしまったら? 僕が帰ったことすら分からないままだとしたら? 一昨日のように探し歩いてもずっと会えないままだとしたら……。

『!』

 急に恐慌状態に陥った。どうしたらいいか分からない。仕事なんか放り出して、今、セイちゃんを探しに行きたい。

 僕が分からないうちにいなくなるなんて、そんなことはダメだ。やはり会いに行かなくちゃ。僕が探し出さないと。

『今日も、帰りに嶺さんのマンションへ行ってみよう。』

 それしか当てがない。もしかしたらビジネスホテルなんかに泊まっているのかもしれないけど、お金がなくて嶺さんのマンションに戻るということもあり得る。

 それから僕は、たまにくる心臓のドキドキ音と戦いながら、定時で帰るために仕事に集中した。




 ピンポーーン

 嶺さんのマンションに着いたときには、まだ陽が落ちて時間が経ってなかった。オレンジ色いっぱいの雲が空を覆っていた。

 508号室の番号と呼び出しボタンを押す。部屋はまだ電気は点いていなかったけれど、いるということもあり得る。

 ピンポーーン

 僕のマンションにはインターホンにモニターが付いているけれど、ここのインターホンはどうだろう?

 ピンポーーン

 3度目のインターホンを鳴らしてしばらく待っていたけれど、反応がなく諦めた。3回鳴らしても応答がないというのは、セイちゃんがいないということに違いない。

 もう既に帰ってしまったとは絶対に考えないようにした。もしかしたら……と考えてしまう頭を横に振る。

『明日も来よう。』

 家に向かって歩き出す。嶺さんの部屋が見える所で立ち止まって部屋を見上げる。オレンジ色の空気を纏ったマンションが綺麗だった。

 絶対にセイちゃんと会うんだ。そして文句を言ってやるんだ。

 



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