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君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける
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「おはよう。」
「「おはようございます。」」
柿崎部長が入ってきた。僕と伊東さんが同時に挨拶を返す。少し遅れて鈴木さんが挨拶をする。席に座ろうとする柿崎部長を見て驚いた。
スーツを新調した? と思うぐらいアイロンのかかったスラックス、それに見たことのないネクタイ。ワイシャツも糊がしっかりと効いている感じ。
「部長、イケてますね。」
「ん? そうか?」
後ろを振り返るようにして部長の姿を追っていた伊東さんが軽口を叩く。書類を手にした部長が上目遣いにこちらを見てきた。
「彼女ができたんですか?」
髪の毛も違う? いつものボサボサの髪の毛ではなくて、髪型は変わらないのだけれど、艶がある。
「伊東は彼氏を変えたそうじゃないか。いいのか? 評判になってるぞ?」
部長の一言に伊東さんが急に口をつぐみ、パソコンに向き直った。そんな姿を見て、部長が勝ち誇ったように笑顔になるのが分かった。
『部長の彼女……。そして伊東さんの新しい彼氏。』
伊東さんがゲイだということは社内のみんなが知っていることだと言っていたけれど、本当だったんだ。ちらりと隣の鈴木さんを見ると、何事もないかのように仕事に集中していた。
「部長。」
「ん? 何だ渡良瀬。」
僕は、急にあることが聞きたくなって声をかけてしまった。答えてもらえるだろうか? それとも軽くあしらわれる?
「嶺さんのことなんですけど。聞いてもいいですか?」
僕の言葉で、鈴木さんがこちらを向くのが分かった。伊東さんのキーボードを叩く手も止まった。
「ああ、答えられることなら。」
少しだけ優しくなった口調に、僕は勇気が湧いてくるのを感じた。
「嶺さんのその後の情報とか。これからのこととかを……。」
少しだけ時が止まったように感じた。僕を始めとして鈴木さんも伊東さんも部長の答えを待って聞き耳を立てている、そんな気がした。
「嶺の、いや今回の事故の捜索は打ち切られた。発見された遺体の中に嶺のものはなかった。」
ふうっと息を吐き出してから、部長が話しだした。嶺さんの遺留品と思われるものは、少し発見されたらしい。遺体や遺留品が流れ着いた場所では、日本からの捜査関係者が行っているとか。
「嶺の親戚、叔母にあたる方はまだ諦めないそうだ。もう少し希望を持ちたいと。それで我が社もそれに従うことにした。給料は出せないが、もう少し待つという結論になった。よって退職金も、まだ支払わない。」
部長の言葉を聞いて、何か遠くで明るい希望の星のようなものが瞬くのを感じた。みんなが帰りを待っている。嶺さんの親戚も、会社も諦めてはいない。
そう分かっただけで、それが本当になるようなそんな気がした。
「良かった。ありがとうございます。」
「渡良瀬も伊東も、嶺とは仲が良かったんだよな。ちょっと今回のことは辛いな。」
部長の言葉に鼻の奥がツンとして、涙が浮かんでくるのが分かった。みっともない。深呼吸をするふりをして涙を引っ込め、ようやく言葉を出すことができた。
「ええ。でも僕も諦めていません。」
「俺も。」
伊東さんと目が合う。僕よりも嶺さんと仲が良かった伊東さん。辛いのは僕だけじゃない。
鈴木さんが隣で鼻を啜る。悲しいのも僕だけじゃないんだ。
「「おはようございます。」」
柿崎部長が入ってきた。僕と伊東さんが同時に挨拶を返す。少し遅れて鈴木さんが挨拶をする。席に座ろうとする柿崎部長を見て驚いた。
スーツを新調した? と思うぐらいアイロンのかかったスラックス、それに見たことのないネクタイ。ワイシャツも糊がしっかりと効いている感じ。
「部長、イケてますね。」
「ん? そうか?」
後ろを振り返るようにして部長の姿を追っていた伊東さんが軽口を叩く。書類を手にした部長が上目遣いにこちらを見てきた。
「彼女ができたんですか?」
髪の毛も違う? いつものボサボサの髪の毛ではなくて、髪型は変わらないのだけれど、艶がある。
「伊東は彼氏を変えたそうじゃないか。いいのか? 評判になってるぞ?」
部長の一言に伊東さんが急に口をつぐみ、パソコンに向き直った。そんな姿を見て、部長が勝ち誇ったように笑顔になるのが分かった。
『部長の彼女……。そして伊東さんの新しい彼氏。』
伊東さんがゲイだということは社内のみんなが知っていることだと言っていたけれど、本当だったんだ。ちらりと隣の鈴木さんを見ると、何事もないかのように仕事に集中していた。
「部長。」
「ん? 何だ渡良瀬。」
僕は、急にあることが聞きたくなって声をかけてしまった。答えてもらえるだろうか? それとも軽くあしらわれる?
「嶺さんのことなんですけど。聞いてもいいですか?」
僕の言葉で、鈴木さんがこちらを向くのが分かった。伊東さんのキーボードを叩く手も止まった。
「ああ、答えられることなら。」
少しだけ優しくなった口調に、僕は勇気が湧いてくるのを感じた。
「嶺さんのその後の情報とか。これからのこととかを……。」
少しだけ時が止まったように感じた。僕を始めとして鈴木さんも伊東さんも部長の答えを待って聞き耳を立てている、そんな気がした。
「嶺の、いや今回の事故の捜索は打ち切られた。発見された遺体の中に嶺のものはなかった。」
ふうっと息を吐き出してから、部長が話しだした。嶺さんの遺留品と思われるものは、少し発見されたらしい。遺体や遺留品が流れ着いた場所では、日本からの捜査関係者が行っているとか。
「嶺の親戚、叔母にあたる方はまだ諦めないそうだ。もう少し希望を持ちたいと。それで我が社もそれに従うことにした。給料は出せないが、もう少し待つという結論になった。よって退職金も、まだ支払わない。」
部長の言葉を聞いて、何か遠くで明るい希望の星のようなものが瞬くのを感じた。みんなが帰りを待っている。嶺さんの親戚も、会社も諦めてはいない。
そう分かっただけで、それが本当になるようなそんな気がした。
「良かった。ありがとうございます。」
「渡良瀬も伊東も、嶺とは仲が良かったんだよな。ちょっと今回のことは辛いな。」
部長の言葉に鼻の奥がツンとして、涙が浮かんでくるのが分かった。みっともない。深呼吸をするふりをして涙を引っ込め、ようやく言葉を出すことができた。
「ええ。でも僕も諦めていません。」
「俺も。」
伊東さんと目が合う。僕よりも嶺さんと仲が良かった伊東さん。辛いのは僕だけじゃない。
鈴木さんが隣で鼻を啜る。悲しいのも僕だけじゃないんだ。
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