暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける

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「そ、そう……。」

 絶対に齋藤さんを見ないぞ。そう思っていても、つい気になって横目でちらりと見てしまう。齋藤さんがこちらをじっと見つめていた。

「…………。」

 この間の悪い空気を誰か何とかしてくれ! 「いるの?」と尋ねればいいのか? それとも「金井はいい奴だよ。」と言うべき?

「いない、って言ったの。」

「そうか。」

 微かなため息が聞こえたような気がするのは気のせいだろうか? え? 僕って酷いことしている?

「ごめん。」

 1人でに言葉が出ていた。齋藤さんに気をもたせるようなことをしたのは事実だ。今でも好きかどうかと尋ねられたら、やはり「好きだとは言えない。」としか言いようがない。

 もちろん嫌いじゃない。同僚として、そして同期としてみんなと一緒に話をしている分には楽しいし。でも、恋愛を持ち出されると「違う」という思いが強くなる。

「ううん、いいの。何となく分かってた。渡良瀬くんもでしょ?」

「うん。でもごめん。本当に。」

 言葉にしなかったお互いの思い。齋藤さんが話し出して、それでもなお、はっきりと言葉にしないけど、すうっと肩の荷が降りていくような、そんな気がした。

「今日のお昼はどうするの? 良かったらコンビニで買って行かない? 新商品のサンドイッチが売ってるの。ちょっぴり辛くて、とても美味しいの。」

「あ、うん。行こう。」

 今日初めてまともに齋藤さんを見ることができた。齋藤さんは今までに見たことがないような晴れやかな笑顔をしていた。僕もつられて笑顔になる。

 知らなかった。齋藤さんがこんなに可愛かったなんて。でもやはり今の会話を惜しむ気持ちにはならなかった。ただ、齋藤さんに良い彼氏ができることを願うだけ。

『金井にちょっと話をしておこう。』

 ちょっとだけ、金井には傲慢な態度があるのを感じていた。齋藤さんを幸せにしてやってほしい。何だか、齋藤さんが妹のような気がしてきた。僕には兄弟はいないけど。

 それから僕たちは今までのことが嘘だったかのように、気軽に話し続けた。コンビニに寄って、齋藤さんのお勧めのサンドイッチを買って、今度感想を言うという約束までした。

「何だか渡良瀬くんと、今までより仲良くなったような気がする。」

「うん、僕もだ。これからもよろしく。」

「友だちとして、ね?」

「友だちとして。」

 会社のエレベーターで2人きりになったときに、そんな話をした。男女の友情は成立しないとか、よく話に聞く。けれど、齋藤さんとなら、友だちになれるような気がした。



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