69 / 100
君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける
5
しおりを挟む
「そ、そう……。」
絶対に齋藤さんを見ないぞ。そう思っていても、つい気になって横目でちらりと見てしまう。齋藤さんがこちらをじっと見つめていた。
「…………。」
この間の悪い空気を誰か何とかしてくれ! 「いるの?」と尋ねればいいのか? それとも「金井はいい奴だよ。」と言うべき?
「いない、って言ったの。」
「そうか。」
微かなため息が聞こえたような気がするのは気のせいだろうか? え? 僕って酷いことしている?
「ごめん。」
1人でに言葉が出ていた。齋藤さんに気をもたせるようなことをしたのは事実だ。今でも好きかどうかと尋ねられたら、やはり「好きだとは言えない。」としか言いようがない。
もちろん嫌いじゃない。同僚として、そして同期としてみんなと一緒に話をしている分には楽しいし。でも、恋愛を持ち出されると「違う」という思いが強くなる。
「ううん、いいの。何となく分かってた。渡良瀬くんもでしょ?」
「うん。でもごめん。本当に。」
言葉にしなかったお互いの思い。齋藤さんが話し出して、それでもなお、はっきりと言葉にしないけど、すうっと肩の荷が降りていくような、そんな気がした。
「今日のお昼はどうするの? 良かったらコンビニで買って行かない? 新商品のサンドイッチが売ってるの。ちょっぴり辛くて、とても美味しいの。」
「あ、うん。行こう。」
今日初めてまともに齋藤さんを見ることができた。齋藤さんは今までに見たことがないような晴れやかな笑顔をしていた。僕もつられて笑顔になる。
知らなかった。齋藤さんがこんなに可愛かったなんて。でもやはり今の会話を惜しむ気持ちにはならなかった。ただ、齋藤さんに良い彼氏ができることを願うだけ。
『金井にちょっと話をしておこう。』
ちょっとだけ、金井には傲慢な態度があるのを感じていた。齋藤さんを幸せにしてやってほしい。何だか、齋藤さんが妹のような気がしてきた。僕には兄弟はいないけど。
それから僕たちは今までのことが嘘だったかのように、気軽に話し続けた。コンビニに寄って、齋藤さんのお勧めのサンドイッチを買って、今度感想を言うという約束までした。
「何だか渡良瀬くんと、今までより仲良くなったような気がする。」
「うん、僕もだ。これからもよろしく。」
「友だちとして、ね?」
「友だちとして。」
会社のエレベーターで2人きりになったときに、そんな話をした。男女の友情は成立しないとか、よく話に聞く。けれど、齋藤さんとなら、友だちになれるような気がした。
絶対に齋藤さんを見ないぞ。そう思っていても、つい気になって横目でちらりと見てしまう。齋藤さんがこちらをじっと見つめていた。
「…………。」
この間の悪い空気を誰か何とかしてくれ! 「いるの?」と尋ねればいいのか? それとも「金井はいい奴だよ。」と言うべき?
「いない、って言ったの。」
「そうか。」
微かなため息が聞こえたような気がするのは気のせいだろうか? え? 僕って酷いことしている?
「ごめん。」
1人でに言葉が出ていた。齋藤さんに気をもたせるようなことをしたのは事実だ。今でも好きかどうかと尋ねられたら、やはり「好きだとは言えない。」としか言いようがない。
もちろん嫌いじゃない。同僚として、そして同期としてみんなと一緒に話をしている分には楽しいし。でも、恋愛を持ち出されると「違う」という思いが強くなる。
「ううん、いいの。何となく分かってた。渡良瀬くんもでしょ?」
「うん。でもごめん。本当に。」
言葉にしなかったお互いの思い。齋藤さんが話し出して、それでもなお、はっきりと言葉にしないけど、すうっと肩の荷が降りていくような、そんな気がした。
「今日のお昼はどうするの? 良かったらコンビニで買って行かない? 新商品のサンドイッチが売ってるの。ちょっぴり辛くて、とても美味しいの。」
「あ、うん。行こう。」
今日初めてまともに齋藤さんを見ることができた。齋藤さんは今までに見たことがないような晴れやかな笑顔をしていた。僕もつられて笑顔になる。
知らなかった。齋藤さんがこんなに可愛かったなんて。でもやはり今の会話を惜しむ気持ちにはならなかった。ただ、齋藤さんに良い彼氏ができることを願うだけ。
『金井にちょっと話をしておこう。』
ちょっとだけ、金井には傲慢な態度があるのを感じていた。齋藤さんを幸せにしてやってほしい。何だか、齋藤さんが妹のような気がしてきた。僕には兄弟はいないけど。
それから僕たちは今までのことが嘘だったかのように、気軽に話し続けた。コンビニに寄って、齋藤さんのお勧めのサンドイッチを買って、今度感想を言うという約束までした。
「何だか渡良瀬くんと、今までより仲良くなったような気がする。」
「うん、僕もだ。これからもよろしく。」
「友だちとして、ね?」
「友だちとして。」
会社のエレベーターで2人きりになったときに、そんな話をした。男女の友情は成立しないとか、よく話に聞く。けれど、齋藤さんとなら、友だちになれるような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる