暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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僕は君が好き、君も僕が好き?

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「渡良瀬、最近明るくなったよな。」

「えっ? そうですか?」

 仕事の最中に突然話しかけられた言葉に咄嗟に顔を上げた。仕事に集中していたはずの伊東さんが、手を休めてこちらを見ていた。

「そうね、何だかキラキラしたオーラを感じるわ。」

 隣の鈴木さんも声を揃える。僕自身は何も変わったような気がしない。日常で変わったことといえば……。

 最近、セイちゃんと夕飯をとることが多くなった。セイちゃんが引っ越しをしてきて2週間。その間、仕事で遅くなるセイちゃんの都合で一度キャンセルした以外は毎日一緒に夕飯を食べてる。

「そうでしょうか。」

「彼女でもできた?」

「いえいえ、できませんよ。」

 鈴木さんの言葉に苦笑い。彼女なんてできるわけがない。僕は気づいてしまった。もうセッ・スは無理だ、誰とも。高校の時の経験がトラウマになっている。

 それが、そう気づいたことが僕の気持ちを前向きにしたのかもしれない。

「あら残念。伊東くんは? 彼氏と仲良くやってるの?」

「もちろん。ようやく俺も落ち着けると思います。」

 伊東さんも彼氏とうまくやってる。良かった。嶺さんの事故から1か月が過ぎ、沈んでいた空気は、徐々に薄れてきていた。

 忘れたわけじゃない、希望を捨てたわけでも。みんなは何も言わないけど、そう感じる。

 伊東さんもいつも通り多くの仕事をこなし、鈴木さんは温かな雰囲気を醸し出す。たまに日常会話をしながら。昨日見たテレビ番組とか、どこの店のコーヒーが美味いとか。

 とても和やかな雰囲気で、僕はこの部署に入って良かったのかもしれない、そう感じる。

「パートナーシップとか考えてる?」

「ええ。今住んでいるところでは……。」

「誰がパートナー?」

 突然ドアが開く音がして声が聞こえた。柿崎部長だ。糊の効いたワイシャツを着て、新しいネクタイを着けている。最近、髪もオールバックにして以前とは見違えるようだった。

「「おはようございます。」」

「部長、ネクタイ曲がってます。」

 僕と伊東さんが挨拶をしたのに、パソコンに向かった鈴木さんが冷たい声を出した。

「お? そうか? それで、誰がパートナーになるって?」

「あ、俺です。今住んでいるところから引っ越しを考えていて。」

 伊東さんの言葉で、机に鞄を置いた部長が笑顔になった。

「いいな。ようやく腰を落ち着ける気持ちになったか。俺も続こうかな?」

 少しだけ曲がっていたネクタイを直しながら言う部長の言葉に、伊東さんが素早く反応した。

「鈴木さんと再婚なさるんですか?」

「伊東くん! な、な、な、何て?」

 甲高い声に驚いて隣を見ると、首まで真っ赤になった鈴木さんが、目を大きく見開いて伊東さんを見ていた。

 



 
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