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僕は君が好き、君も僕が好き?

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 急に明るい光が瞼を差し目を開けた。足音が聞こえる。白に小さな穴が無数にあいている天井。長細い蛍光灯の照明。ここは病室だ。とても広い。

 隣を見ると、セイちゃんが僕と同じベッドに横たわっていた。たぶんまだ麻酔が効いているのだろう。規則正しく胸が上下している。

「渡良瀬さん、こちらに着替えてくださいね。起き上がれますか?」

 足音の主が入院着を持って目の前に現れた。僕はどうしたのだろう? 体を起こしながら看護師に声をかけた。

「あの。」

「渡良瀬さんも念のために今日一日入院してもらいますね。嶺さんの親戚の方から要望がありました。」

 セイちゃんの親戚……。たぶん社長のことだろう。この部屋も一般の大部屋とは違う気がする。高校生の頃、従兄弟が入院した時に行った病院の病室は、無機質で冷たい雰囲気だった。けれどもここは、どこか高級なホテルっぽい。

 着替えが終わって看護師が病室を出ていくとすぐに、僕は自分のベッドを降りてセイちゃんの元へと行った。右手がギブスで固定され、あちこちがガーゼで覆われている。僕と同じく体に傷を受けたのに違いない。そっと左の手を触る。

『温かい。』

 温かい手。セイちゃんは生きている。そう思った瞬間に、涙が溢れてきた。

『僕はセイちゃんが好きなんだ。』

 頭のどこかで分かっていた。でも嶺さんと同じ容姿ということが、嶺さんの代わりにしてしまっているのでは? と思い込んでいたんだ。今なら分かる。

 セイちゃんが僕の元を去ったと思った時の焦り。再会した時の安堵感。セイちゃんと嶺さんは、同じ人だけど同じじゃない。同じだとは思っちゃいけない。

「セイちゃん……。どうして僕のことを助けたの? こんな怪我をして。僕が喜ぶとでも思った? 早く目を覚まして。」

 セイちゃんの手を持ち上げて額につける。僕の手よりも一回り大きい手。節々が太くて、カッコいい。指先にそっとキスをする。その途端に、指がピクっと動いた。

「セイちゃん。」

 僕の声に反応するように両瞼がピクピク動き、左手もピクっと動いた。麻酔が切れてきた? ここで話しかけても良いのだろうか? どのくらいの時間が経ったのか全く分からない。躊躇しながら見守っているうちに、セイちゃんはまた眠りについたようだった。

「……セイちゃんありがとう。僕を助けてくれて。」

 小さな声で語りかける。今胸の中にある思いを言葉にしようとしただけなのに、話し出すと止まらなくなっていた。

「でも僕、つらいよ。僕の代わりにセイちゃんが大変な怪我をした。僕が骨折したなら良かったのに。脳震盪だって大変なことじゃないか。僕がどんなに心配してるか分からないでしょ? 嶺さんに似ているからじゃないんだ。僕は……僕はいつの間にかセイちゃんのことを……。」

 残りの言葉を言おうと息を吸い込む。緊張していて、セイちゃんの左手が僕の手をぎゅっと握りしめたのには気がつかなかった。

「好きになっていたんだ。」

 僕が最後の言葉を発した途端に、ゆっくりとセイちゃんの目が開いた。





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