悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう

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やり直し

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「お兄様、良かったのですか?」

帰りの馬車の中でテオが口を開く。

「良かったって何が?」
「その…アダムス家は伯爵位ですが、勢いのある家です。いっそゾーイ嬢との婚約を確約させて、それを盾にお父様たちに後継にしてくれるよう交渉するという手もあったのでは…」

テオがおずおずと考えを口にする。僕は思いつきもしなかった提案だ。

あの両親が婚約程度で僕を後継にするとは思えないが、もしその主張が通ったらテオは自分の立場が危うくなるというのに。

「テオ、ありがとう。でも僕はウッドセン家のことはいいんだ。自分で道を探すよ。あの魔法至上主義の2人が僕を後継に選ぶことはないと思うしね。」
「そうですか…」
「ああ、テオには重荷を背負わせて悪いけど、反対に僕に悪いなんて考えなくて良いんだ。」

僕がそう言うと、テオは控えめに微笑んで頷いた。


「それより約束の内容の方が問題よ!あの女の意思次第でお兄様の婚約が決まってしまうじゃない!」

微妙な空気を振り払うようにティアが割り込む。

「あの女って…どちらかというと向こうにはメリットなんかないと思うけど…」
「そんなことありませんわ!お兄様の婚約者ですよ?あの女…ゾーイ嬢が平民になるくらいでお兄様を諦めるわけありませんもの。もう婚約が決まってしまったようなものではないですか…」

そうしてティアは俯いた。僕の婚約で彼女がこんなに落ち込むとは思わなかったが、惜しまれるのはなんだか嬉しい。

「そんなふうに言われると、貴族だろうと平民だろうとゾーイを幸せにできるよう頑張らないといけないな。」
「お兄様までもう婚約した気ですの?ついこの間結婚しないでほしいとお話ししたばかりですのに…」
「イエスとは言ってないだろう?」

僕がそう言って笑うと、「もうっ!」と怒ったティアがポカポカと叩いてくる。

「今からでも取り消させたいですわ…」
「でもアダムス家の支援を受けられるのは良かったですね。両親はあんなですし、いつか必要になるかも。」
「そうだな。そこは確かに心強いよ。まあなるべく頼らずに済むと良いんだけど…」

仮の婚約者の家に頼るなど格好悪いので、できれば頼りたくないものだ。

そう思っていたのだが、その後頼る機会がすぐに訪れることになるとは、この時は想像もしていなかった。
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