【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった

ゆう

文字の大きさ
24 / 28
巻き戻し

14

しおりを挟む
温かい布にウェスを包んで城を去る。
今度は喧騒から離れて、静かな場所で暮らそう。

魔王でなくなった私にウェスはどんな風に接するのだろう。

そんなことを考えながら、人のいない道をひたすら歩いた。

そうして、ようやく腰を落ち着けたのは長閑な田舎町だ。私は念のため姿を少し変え、町に馴染んだ。

そこでウェスを我が子のように育てた。彼はすくすくと育ち、今度は町の人たちとも多くの関わりを持って活発に過ごしていた。



「ねぇねぇディー、今度ケイシー達と森に遊びにいっても良い?」

今の私はディーと名乗っている。ウェスは私を兄のように慕い、平民らしく名前も呼び捨てで呼んでくる。

以前より近く感じる距離感に、私は嬉しさを感じていた。まあ、反対に私以外にも味方の多いこの町では彼を独り占めすることはできなくなってしまったのだが…

「森にかい?行ってもいいけど…魔獣がいるかもしれないから気をつけるんだよ。飲み物も忘れずに、後はハンカチと…」
「わかった、わかったから!十分気をつけるよ」

私がウェスを心配してあれこれいえば彼は面倒そうな、それでいて嬉しそうに遮った。

「まったく、面倒くさがって。本当にわかってるんだね?」
「もう、ディーこそ心配性なんだから。俺だってもうそんな小さくないのに」
「私にとってはいつまでも小さいウェスのままだからね」

そう返すと「いつまでも子供扱いして」とむくれるウェスに笑みが溢れた。

この何気ない日常に幸せを感じる。

こんな人生もあったのなら、さっさと城を出てしまえばよかった。

1度目ではあの子に城での居場所を与えようとして失敗した。いっそ自分が城から出れば良かったのだ。



そうして3度目の彼の人生では、私たちは仲睦まじい兄弟のように過ごした。

「どうしてディーは歳を取らないんだ?俺は弟なのに先に逝くなんて…」

ウェスの寿命が近づいて、またベッドの上で過ごすようになったある日、彼がそんなことを言う。

「何度も話しただろう?私たちは種族が違うんだ。出来ることなら同じ時を生きたかったが…」

そう言って慰めるようにウェスの頭を撫でてやる。その手が少し震えた。

幸せそうなウェスをたくさん見てきた。きっと3度目のこの生も人並みには幸せだったはずだ。だが、やはり思い出すのは1度目のこと…

こうして力なく横たわっている彼を見ると、嫌でも不幸なまま死なせてしまったあの子を思い出す。

「また子供扱いして…もういい歳なのに」
「私にとってはウェスはずっと子供さ」
「まったく、年寄り臭いんだから…それに、俺は自分のことよりディーのことの方が心配だよ。1人で生活できる?寂しくならない?」

もう起き上がるのもやっとの体でウェスは残される私を心配してくれた。

「…寂しいさ。当然だろう。でも生活くらいはできる」
「ふふ、そっか…それならまあ、大丈夫だね。俺がいなくてもちゃんとご飯を食べるんだよ」
「今度はウェスがお節介を焼き始めたか」
「お節介だって自覚はあったんだ」
「これは揚げ足を取られたな」

そう言って2人で笑った。

そうして和やかな最後を過ごし…

私は3度目のウェスを看取った。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

【8話完結】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

処理中です...