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しおりを挟む俺は今怒っている。
花坂は俺が無理矢理付き合わされていると思っていた事に。ちんこの無い平和な部屋を取り戻す事だけが目的なら、早々に部屋を引っ越せば済む話だった。家主には何か言われたかもしれないが、今後会う機会も無いだろう相手だ。一瞬の恥なら我慢できる。
それでもそうしなかったのは、この後輩が特別だったからだ。あの日俺が心に決めた覚悟は、何も付き合う事に対してだけじゃ無い。それはデートして、キスをして、そして最後までする覚悟だ。
どっちがどっちに突っ込むかなんて問題にならない。花坂が俺に入れたいならそれで良いし、入れられたいならそうするつもりだった。
それだけの覚悟を決めていた俺に、花坂はあろう事か"付き合ってもらっている"と宣った。それも俺本人に向かってではなく。
こいつは最初から俺との関係が終わる事を前提に付き合っていたのだろう。そんなの覚悟を決めていた俺が馬鹿みたいじゃ無いか。
ちんこが元に戻ったら、俺はこいつを捨てると思われていたわけだ。
これが怒らずして何になる?
「選べないんだな?」
「ちょ、ゆ、ゆ、柚木さん!?」
「じゃあ俺が選んでやる」
ネクタイを解きジャケットを脱ぎ捨てる。皺になろうと知った事か。そのまま勢いを緩めずシャツのボタンを全て開ける。花坂ほどでは無いが、引き締まった腹筋は地味に俺の自慢だったりする。
自分のベルトに手を伸ばせば、カチャリと音が鳴った。その音に我に返ったのか、花坂が俺の下でもぞもぞと抵抗し始める。しかしその抵抗には勢いが無い。本気で嫌がっていない証拠だ。
花坂と俺の体格差なら、例え跨がられていようと俺の身体を退けるなど容易いだろう。
俺はベルトも床に投げ捨てると、小さな抵抗を抑える為俺より肉厚な唇に食らいつく。
「ん、ふ、ん」
「ゆ、っ柚木さ、ッ」
名前を呼ぶ拍子に開いた唇の隙間を狙い舌を忍ばせる。奥に逃げ込んだ花坂の舌を絡め取ると、じゅるっと下品な水音が響く。
俺がここまですると思わなかったのだろう。花坂は頬を赤く染め目を見開いている。その姿に気分を良くしながら、花坂のシャツに手を伸ばす。手際良くシャツのボタンを外せば、その下には俺と比べ物にならないほど鍛えられた肉体が隠されている。至近距離にある花坂の目は、苦悩に細められながらも確かに欲望の光を宿していた。
そうだ、潔く認めれば良い。
「は、っん、ふふっ」
「ッくそ」
「ん、んん!?んっ」
俺の舌に大人しく弄ばれていた花坂の舌が、不意に意思を持って動き出す。
荒々しいその動きは技巧も何もあったものじゃ無いが、今度は俺の歯列を割り口内に侵入して来る。勢い任せのその動きが花坂らしくふっと鼻から息がこぼれるが、それさえ花坂の感に触ったらしい。上顎や舌の裏側をくすぐられ、鼻から抜けるような吐息が漏れる。背筋を走る快感に身体をふるわせながら、必死に花坂の動きへ食らいつく。
互いの舌を絡ませる事に必死で、花坂の手が下へ伸びている事に気が付かなかった。
花坂は中途半端に下げられたスラックスのジッパーを全て下げると、下着の上から股間を揉みしだいてくる。直接的な刺激に驚き腰を跳ねさせるが、もう片方の手で腰を固定され逃げ道を塞がれる。
均衡を保っていた舌技も、下半身の刺激に意識を持っていかれた拍子に優位性を奪われた。それを悔しく思い負けじと舌を絡ませようと試みるが、花坂の手が下着の下に潜り込んだ事でその勢いも拡散する。急所を握り込まれれば、キスで高められた勢いもあり呆気なく熱を持ち始める。
「んっ、く、ふぅうっ」
「ッはぁ」
「ふ、っく、あっあぁっ」
俺も花坂のちんこを責めれば公平なのに、こんな時でさえ奴の股間はほんの少しの隆起すら見せない。俺の部屋のバケツに隠されたままなのだろう。悔しい。これじゃ俺だけ興奮してるみたいじゃないか。
花坂だってこんだけ息を荒げて俺の口の中を好き勝手してるくせに!
「っ、い・・・っ!」
弱い先端をくすぐられ、高められた性感に抗う術なく熱を吐き出す。いつの間にかスラックスと下着は膝まで下げられており、吐き出した精液は花坂の腹を汚した。
涙でぼやける視界でその様子を見ながら、解放された口で俺は必死に息を整える。
「はっ、ふ、っ」
「柚木さん、落ち着きました?」
ーーーは?
どこか冷静さを含むその言葉に、ぼうっと熱を持っていた思考がすっと冴える。
「柚木さん酔ってるんですよ、シャワー浴びてもう寝ましょう?」
この期に及んでこいつはそう宣った。さっきまで人のちんこ扱いてた奴の台詞とはとてもじゃないが思えない。
「花坂お前正気か?」
「だってそうでしょう。俺のちんこが元に戻らない限り、俺はあなたの事を抱くことも出来ない!」
ベッドに背中を預けていた花坂は、腹筋だけで上半身を起き上がらせる。
跨っていた俺はその拍子に後ろへ倒れそうになるが、それより早く花坂の手が俺の肩を押さえた。
「それにあなたが俺の事を本当に好きになっていたら、俺の股間も元に戻っているはずでしょう!あんたはきっと本心から俺の事を好きになって無い」
勝手に俺の感情を断定する言葉にカッと頭に血が昇る。
「うるせえ!んな事知るか、俺はお前の事充分好きになってるっつーの!」
花坂の頬を両手でぐっと掴むと、俺は力の限りそう叫んだ。
そしてその時、下からーーー正確には花坂の股間から、目を開けていられない程の眩い光が溢れ出した。
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