君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第3章 勇気を持って一歩踏み出せば

独白 ライラックside

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俺の名前はライラック・ヴィル・ヴィ・フレイアス。
この国、フレイア王国の第二王子で王立学院ヴァーニルの生徒会長をしている。
そんな俺には同じ年で誕生日が五日しか変わらない、幼馴染がいる。
レティーシア・フォン・エレノアール侯爵令嬢。
フレイア王国宰相家のお姫様で、兄である王太子の婚約者候補。
母親同士でとても仲がいいから俺はよく、母の茶会に連れていかれ大体いつもレティとセットで扱われていたせいか、レティに対して恋愛感情なのか、家族愛なのか分からなかった。
兄の婚約者候補に決まった時も、二人でダンスをしたり、お茶をしているのを見ても特に感情の変化は無い。
しいていえば、レティがすっごいビビってるなとか、困ってるな。
って思うくらいだ。
大体そういう時、俺は関わらない様にする。
あの、兄の苛立ちはレティに気安く近寄る異性への牽制で決してレティが何かしたせいではない。
その点に関して、レティは”嫌われている”と思っているようだったから、”それはありえない”と言い聞かせるものの、レティが聞き入れてくれない。
なので、レティが不安になったときとか、急にポツリポツリ話出すときとかはちゃんと相手をしてやる。
お互いがお互い以上に分かっているだろうという安心感の様なものがあるのだ。
レティの事は兄以外で俺がよく知っているし、逆にレティは俺の事をよく知っている。

侯爵家には珍しく”魔力なし”のレティに嫌がらせをする連中はたくさんいた。
そいつらの前では気丈に振る舞い、後から泣くという事が幼い頃は多かったが、いつしかそれは無くなった。
一人で泣ける場所ができたらしく、大体その場所へ行く前のレティは雰囲気で分かる。
抱きしめて慰めたい。と思うものの、本人がそれを嫌う。
なので、そういう時は一人にさせて護衛もなるべく離して付けている。

そして、18才の誕生日を迎えた日兄とレティの婚約が正式に内定した。
幼い頃からレティを溺愛していた兄の婚約者に収まるのはこの国では当然で、他の姉の様に慕っている二人もそれぞれ想い人と結ばれた。 
素直に喜べる反面、自分自身の半身を取られたような感覚にも陥る。
寂しいというか、切ないというか。
もう、今までのように居られないのじゃないだろうか。
など、感じたことの無い様な胸の痛みに首を傾げながら、もしかしたら、兄との婚約が内定しなければ今頃彼女は俺の婚約者だったかもしれない。
と、もし・・という想定をしている自分に笑ってしまった。

この状況になるまで、彼女に感じていた愛情は、家族の愛情だと思っていた。
父や母、兄や妹が大切なようにレティも俺にとっては大切で守りたいと思う、片割れの様な存在だと思ってたし少なくともレティは俺のことをそう思ってくれている。
大切で守りたくて、笑っていて欲しくて。泣かないで欲しいと何ども思った。

この気持ちを人は”愛”と呼ぶのだと、昔父が話していたような気がする。

だけど、気づくには遅くそして、たとえ思いを伝えたとしてもレティが、兄に恋をしているのは知っていた。
だから、逆に気付かなかった方がよかったのに、そうすればこんな痛み感じなくても済んだのに。

君が届かなくなって初めて気づいた事。

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